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第59話 状態異常回復魔法


「こちらでございます。両手両足を拘束して、猿轡を噛ませてはおりますが、お気をつけください」


「はい」


「ソーマ、俺達がついているぞ!」


「次こそは命をかけてソーマ様をお護りします!」


「うん、頼りにしているよ」


 ドアを開けるとそこには両手両足を完全に拘束されて、猿轡を噛まされた子供達がいた。両手両足を激しく動かしてなんとか拘束を解こうしたためか、手や足の皮が破けて血が出ている。


「……こちらの子供は何も話さず、食事も取ろうとしないので、無理やり食べ物を喉に流し込んでおります」


 先程俺を襲ってきた子供達はまだマシだ。先日拘束したという、まだ小学校高学年くらいの女の子、彼女の両手両足はもっと悲惨な状態になっており、ガリガリに痩せている。


「……治せるか試してみます」


 この子供達は暗殺者なんかじゃない。ただの可哀想な被害者だ。改めてこんなことをしたやつらに怒りが湧いてくる。


 しかしこれほど血が流れても、お腹が空いても解除されないということは、よっぽど強力な薬物や魔法を使っているということだ。先程キュアを子供達にかけても洗脳は解除されなかったということは毒ではないらしい。


 ということは洗脳という状態異常に陥っている可能性が高い。初めて使う魔法になるが、絶対に助けてみせる。頼むぞ、神様仏様聖男(せいだん)様! どうかこの子を助けてください!


「ハイディスパトラ!」


 眩い光が女の子を包み込んだ。先程までは何もない宙を見上げていた瞳に、少しずつだが光が戻り始めていく。そして先程まで女の子から感じられなかった意思が感じられるようになった。


「……ふぇ!? ふぉふぉは!?」


「おおっ! 正気に戻ったみたいだぞ!」


「す、すごい! どんなに手を尽くしても正気に戻らなかったのに!?」


 どうやら状態異常を回復させる魔法はうまくいってくれたらしい。そういえば猿轡を噛ませているから喋れなかったんだ。操られていたとはいえ、今がどんな状態かわからない。ローレイさんがゆっくりと女の子の猿轡を外していく。


「喋れるかい?」


「お姉ちゃん達だれ、ここはどこ!? 痛いっ、離してよ!」


 思ったよりもだいぶ混乱しているようだ。洗脳は解けたようだが、なぜ自分がここに拘束されているのかわからないようだ。


「まずは落ち着いてくれ。今すぐに拘束を外すよ。ここにいるお兄さんが君を助けてくれたんだ」


「お兄ちゃんが……痛っ!?」


 ローレイさんが女の子の拘束を外していくが、女の子の両手両足の皮膚はめくれてものすごく痛そうだ。


「ヒール!」


「えっ!? 傷が……」


 女の子の怪我は回復魔法で治せたが、痩せ細った身体は治せていない。栄養失調は回復魔法では治らないようだ。


「すごい、傷があっという間に! 君は悪い人達に捕まっていたんだ。その時のことを覚えていないかい?」


「えっ!? そ、そうだ。いきなり変な女の人達に攫われたんだ……少しだけど覚えているよ」


「本当かい! ソーマ様、お願いします。他の子供達も治療していただけないでしょうか!」


「はい、もちろんです」


 順番に子供達の洗脳と怪我を魔法で治療していく。


「ハイディスパトラ、ヒール!」


「……ふぁへ、ふぉふぉは!?」


「暴れるなよ、今拘束を解いてやるからな」


「落ち着いてくれ、君達は助かったんだ」


 みんなが子供達の拘束を外していく。よかった、全員回復魔法で元気になってくれたようだ。


「すごいぞ! ソーマのおかげでみんな助かったんだぞ!」


「もうみんな大丈夫みたい。全部ソーマのおかげ!」


「みんなが子供達を殺さないで拘束してくれたおかげだよ。それにフェリスが俺をかばって助けてくれたおかげだね」


「あ、ああ! 俺もちったあ、ソーマの役に立てて何よりだぜ!」


「あ、あの……」


「あ、大丈夫? もう痛いところはない?」


 俺を襲ってきた女の子達の中のひとりが話しかけてきた。ローレイさんが簡単に今の状況を子供達に説明してくれていたのだが、まだどこか痛いところがあるのだろうか?


「た、助けてくれてありがとうございました! 怖い人達

に捕まって、女の人に変な薬を飲まされてからの記憶がなくて……」


 どうやら洗脳をされてからの記憶は戻らなかったらしい。いや、この子達からしたら、その時の記憶なんてないほうがいいのかもしれない。


「あの! 私より小さい男の子は一緒にいませんでしたか? 私の弟なんです!!」


「「「………………」」」


 そうだ、この子達を回復できて安心してしまったが、まだ何も解決したわけじゃないんだ!


 この子供達の他にもまだ洗脳されている子供達もまだいるかもしれない。それに考えたくはないが、この女の子の弟も洗脳されて、操り人形となり暗殺に使われている可能性もある……


「すまない、保護できたのは君達だけなんだ。君達を攫ったやつらのことや、君達がいた場所について覚えていることはないかい?」


「僕に薬を飲ませたのは黒い服を着た女の人だった!」


「私もそうだった! 上から下まで全部黒かったよ!」


 どうやらこの子達を洗脳したのは全身黒ずくめの女だったらしい。アニックの街や王都に来てから全身同じ色で統一している人はほとんど見なかったから、もしかしたらかなり有効な情報になるかもな。


「……すぐにその女を探そう! しかし、ソーマ様の暗殺が失敗した以上、すぐに拠点を放棄する可能性が高い。今はまだ洗脳したこの子達から情報が漏れていないと思っているかもしれないが、時間の問題だ。間に合ってくれれば良いが……」


 ローレイさんの言う通り、俺を襲撃してきた闇ギルドのやつらの逃げ足はとても速かった。この子達が正気を取り戻したと分かれば、すぐに逃げ出すかもしれない。


「……あの、もしかしたらだけど、私が捕まっていた場所がわかるかもしれません!」


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。

誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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聖男


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