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第37話 1日目の終わり


「それじゃあパンを4つ頼むよ」


「はい! パンを4つですね、ありがとうございます!」


 そんなわけで孤児院のパン屋がオープンしたわけだが、初めてのお客さんはデルガルトさん達だった。デルガルトさんだけでなく、若い女性のドワーフさん達と一緒だ。たぶん工房のお弟子さんを連れてきてくれたのだろう。


 ……それにしてもドワーフの女性は筋肉質な女性が多いんだな。短めのTシャツを着ているので、その健康的な腹筋が見え隠れする。筋肉質な女性というのもよいものである。


「はい、パン4つお待たせしました」


「おう、ありがとうね」


 お客さんを相手にするのは年長のリーチェやケイシュくんがメインとなる。2人とも街でお花を売っていたから接客はできるのだが、やはり初めての自分達のお店ということで、少し緊張していたみたいだ。だが、デルガルトさんは昨日も孤児院に来てくれていたし、2人も初めてのお客さんが知っている人で、少し緊張もとけたようだ。


 デルガルトさんの後ろにはエルミー達が冒険者ギルドで宣伝をしてくれた甲斐もあって、大勢のお客さんがいる。それに最近では俺も治療所で宣伝していたからな。……初めて無駄に広まりすぎた俺の人気も役に立てたわけだ。


「デルガルトさん、来てくれてありがとうございます。みんなも見知った人が初めてのお客様で、少し緊張もとけたみたいです」


「いえいえ、ワシも協力できて嬉しいですよ。それにこのパンは本当に美味しいですからな。せっかくなら元弟子達にも食べさせてあげようと思って連れてきたのですよ」


「大親方の言っていた通り、柔らかくてうめえっす!」


「いつも食っているパンとは全然ちげえっす!」


 確かにパンの値段多少値段は上がってしまうが、間違いなくこの世界で売られているパンよりも美味しい。今日は宣伝による効果かもしれないが、ここに来てくれてパンを買ってくれた人々はリピートしてくれると信じている。


「それではソーマ様、私は残り2つの孤児院に赴いてパン窯と屋台を作りに行きますので」


「はい、引き続きよろしくお願いします」


 デルガルトさんには残りの2つの孤児院でもパン窯と屋台の製作をお願いしてある。さすがに同時に3つの孤児院でお店を開くのは無理だったので、順番にオープンしていく予定だ。ドルディアさんのお店の職員さんも、明日からそちらのお店の人達にパンを作るための指導に行ってもらう予定だ。


 初日のこの様子を見るに、残りの2つの孤児院でも大丈夫そうかな。早速買ったパンを食べた人達の様子を見ると、さっきのお弟子さん達の反応と同じで、新しいパンを楽しんでもらえている。


「お嬢ちゃん、パンを2つ頼む」


「うん、ありがとうございます!」


「お兄ちゃん、こっちは4つ頼むよ」


「はい、4つですね、ありがとうございます!」


 リーチェもケイシュくんも街で花を売っていたし、接客については問題なさそうだ。


「おつりの銅貨4枚になります。はい、今日からオープンしました。どうぞ、よろしくお願いします」


「ええ、ソーマ様のおかげでこんなに立派なお店を出すことができました」


 院長やミーナさんも問題なさそうだ。……でも俺のことは宣伝しないでいいですからね。


 売っているパンはこの世界でよく売られている丸いパン一種類だ。本当ならアンパンやカレーパンみたいないろいろなパンを売りたいところだが、さすがに孤児院のみんなで複数の種類を作るのは難しい。


 それにあんこやカレーをこちらの世界の材料で作るのは難しそうだ。でも個人的には食べてみたいから、孤児院のパン屋が軌道に乗った時にでも、似たようなものを作れないかドルディアさんに相談してみるとしよう。


「ありがとうございました」


「おいソーマ、俺達も手伝ったほうがいいんじゃねえか?」


「そうだね、結構なお客さんがいるから、パンを焼く手伝いでもしようか」


 さすがにオープン初日ということで、かなり多くのお客さんが来てくれている。屋台の接客のほうは大丈夫そうだが、院長もミーナさんも接客でいっぱいいっぱいなので、このままでは売り物にするパンがすぐになくなってしまいそうだ。


 昨日は今日のために俺達やドルディアさんのお店の職人さん達とかなりの量のパン生地をこねて、朝からガンガン焼いているのだが、このベースだと怪しいな。


 デルガルトさんが作ってくれたパン窯はかなり大きく、一度で大量のパンを焼くことができるが、パンを焼くのは結構な重労働なのだ。


「よっしゃ、任せておけ!」


「うむ!」


「任せて!」






「今日はこれで完売になります。ありがとうございました」


「数日後には他の孤児院やこちらのパン屋で同じパンを販売致しますので、どうぞ、そちらもよろしくお願いします」


 お昼前に今日売る予定だった分のパンが無事に完売した。もっと時間がかかると思っていたが、思ったよりも早かったみたいだ。屋台の横には他の孤児院や手伝ってくれたドルディアさんの店の地図があり、別の店の宣伝もしておく。


 さすがに孤児院にいるのは子供達なので、それほど長く働かせるつもりはない。日々の生活を送れて困らないくらいのお金があればいいのだ。


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

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誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

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聖男


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