表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/174

第30話 ユージャ商店


 フロラのジョブである精霊使い。普通の人には見えない精霊の力を貸してもらい、精霊が対象者の心臓付近に近付くとその者がついた嘘がわかるらしい。


 俺が元の世界のことを事情説明したあと、エルミー達から彼女達のジョブについていろいろと教えてもらった。彼女達にもある程度は信頼されてきているのかな。


 この世界でジョブやその能力の詳細については、必要がある時以外は他人には話さない。フロラの精霊使いも嘘がわかるという能力は、ギルドマスターや街の憲兵の一部しか知らないそうだ。嘘がわかるとなるといろいろと警戒されてしまうもんな。


 先日冒険者ギルドでの襲撃があった時に、俺のためにその能力が、冒険者ギルドにいた人に少しバレてしまったが、幸か不幸か俺の噂のほうが広まってしまったからな……


 まあ噂のことはさておいて、どうやらランコットさんもフロラのことは知らなかったようだ。俺が人を治療して治すのは嬉しいということや、俺といい関係を築きたいということは嘘のようだった……




「これはマジで人間不信になるな……」


 ランコットさんの商店を出た後、そのまま他のポーションを販売している商店にも挨拶に行ったのだが、ランコットさんと同じように、俺が治療士として人々を治療することを嘘偽りなく喜んでいる店主さんは、今まで回ってきた5軒のうち1軒しかなかった。


 それも嘘をついていた4軒の店主は、全員その嘘をおくびにも出さず、笑顔で俺と握手してくれていたからなあ。あとでフロラに嘘だと教えてもらわなかったら、俺ではまったく気付けなかった。


「商人なんてみんなそんなもんだぜ。ひとりでもまともな店があってよかったじゃねえか」


「はあ……フェリスの言う通りかもね。自分の店の売り上げが落ちても、他人の怪我が治るのを喜んでくれる店主がひとりいただけでも凄いことなのかもしれない。もちろん店主の人がそうだからって、そのお店の人全員がそう思っているわけじゃないからね」


 実際に店の売り上げが落ちているんだから、よく思われていないことはわかりきっていたことだ。フロラのおかげで、店主の内心がわかっただけマシだと思おう。




「ここが例のポーションのお店か……」


「例の?」


「あ、いや、なんでもないよ」


 例の発光するポーションのことについて、まだエルミー達には伝えていない。もしかしたら元から夜に発光しているのを見逃していたり、元から回復量が特別だった可能性もある。今日試してみて、昨日と同じ現象を確認できてから話そうと思っている。


「にしても小さい店だ。最初の店とは大違いだな」


「こらフェリス! そういうことを店の前で言うな!」


 エルミーがフェリスを嗜めるが、確かに先程挨拶に回っていた有名なポーションの店と比べると、だいぶ小さな店かもしれない。お店の名前はユージャ商店となっている。


「いらっしゃいませ」


 店の中にはひとりのおじいさんの店員さんがいた。耳が長いからフロラと同じエルフなのかな。他に店員さんもいないところを見ると、この人が店主さんなのかな?


「初めまして、ソーマと申します。このお店の店主さんでしょうか?」


「ええ、私が店主のユージャと申します。……もしかして治療士のソーマ様でいらっしゃいますか?」


「あ、はい。初めまして、ソーマと申します。先日はポーションをお送りいただきまして、誠にありがとうございました」


「おお、あなた様がソーマ様ですね。お噂はかねがね聞いておりますよ。たった金貨10枚で治療してくれるとあちこちで評判ですよ。うちのポーションでは治らない患者さん達も、ソーマ様に治療してもらえました。本当にありがとうございます」


「とんでもない、頭をあげてください。今日はポーションをいただきましたお礼を伝えに来たのと、私が治療士として治療をすることで、ご迷惑をかけてしまうことになるかと思い、ご挨拶に来ました」


「……なるほど、そういうことでしたか。少なくとも私の店のほうは大丈夫ですよ。見ての通り私個人が趣味でやっているようなお店ですので、何も気にしないでください。それよりもこの街の人々を治療していただいて本当にありがとうございます」


「そう言っていただけますと幸いです」


「私がお渡ししましたポーションも、ソーマ様には必要ないかと思いますが、この街ではこのようなポーションを使っていると知っていただきたかったのですよ」


「ご配慮ありがとうございます。俺はかなり遠くの国から来たので、この街で作られているポーションがどのような物か知れて、とても勉強になりました。やっぱりお店ごとに特別な調合法があったりするんですかね?」


「ええ、秘伝とまではいかないですが、それぞれの商店でポーションの調合方法は変わりますよ。とはいえ傷の治りが少し変わるくらいで、それほど劇的な効果があるというわけではありませんがね」


「なるほど……」


 やはり他の店のポーションと回復量に違いはないのか。しかし回復魔法に反応があったということは、ポーションの調合方法の違いや素材になにか特別なものがあったということなのかな?


最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます!

執筆の励みとなりますのでブックマークの登録や広告下にある☆☆☆☆☆での評価をいただけますと幸いです。

誤字脱字、日本語のおかしいところがありましたら教えて頂けますと非常に嬉しいです( ^ω^ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【書籍第1巻発売中!】
(画像クリックで作品ページへ飛びます)

聖男


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ