表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】「最低」から始まる二人の異世界恋愛譚  作者: HOT-T
第1章 学生時代・最低の出会い編
8/34

第6話 行方不明

 翌日、昼過ぎに僕はレム家を訪ねた。

 ちなみに現在、僕は『停学』という事になっている。

 怪我をさせられたのは僕だが原因を作った張本人だ。

 母上のごり押しによってリリィ君共々『停学』となったのだ。

 

 玄関から出て来たのはケイト君だった。

 目の下に明らかに大きなクマが出来ている。

 恐らく今回の騒動の原因を聞いた結果だろう。

 胸が痛む。


「……何の用、『モンティエロ』君?」


 拒否が表情と言葉からにじみ出ていた。

 居心地が悪かったが僕はそれだけの事をしたのだ。

 僕は自分の行いをひたすら謝る事しか出来なかった。

 彼女は黙ってじっとこちらを見ていた。

 そして……

 

「もういい。あんたがそういう男だって事を見抜けなかったあたしが馬鹿だった。だから、もう帰って……今ウチはあんたなんかの相手をしている暇はないの。さっさと帰ってくれない?」


 無理も無いだろう。

 だがもうひとり、僕には謝らないといけない相手がいる。


「あの……妹さんにも、リリィ君にも謝らせて欲しい。その、彼女が男性恐怖症なのはわかっている。僕の顔なんか見たくも無いだろう。だけど……」


「そう……あんたは気づいたのね。リリィが男の人の事怖いって……でもあの子には会えないわ」


 彼女は僕を睨みつけ、こう告げた。


「リリィはね……昨日の夜から行方不明になってるの」


 その言葉に世界ががらっと傾いたような感覚を覚えた。

 行方不明……?


「昨日、あんたの事であの子と喧嘩しちゃったの。ひどく罵ったわ。それであの子は出ていったの。最低な姉ね」


「違う。悪いのは僕だ。君は悪くない。僕のせいで……」


「……お父さん達が必死に探してるけど……それでもまだ見つからないの」


 事実を飲み込むと同時に後悔が胸に押し寄せて来た。


「あの子の魔力を感じない。『あの時』からずっと気にかけていたのに。何処にいるかわかるように気を付けていたのに……今はいくら意識を研ぎ澄ませても何も感じないの……」


「えっと……『あの時』?」


 疑問を口にした瞬間だった。


「お前、こんな所で何をしてるの?」


 背後からの声に振り向くと同時に僕は胸倉を掴まれ家の壁に押し付けられた。

 相手はリリィ君の妹、アリス君だった。


「リリィを何処にやった!」


「アリス、止めて!そんな奴に聞くだけ無駄よ」


 姉にとがめられても彼女は手を離さ怒りをにじませながらこちらを睨みつけていた。

 学校で見かけた彼女のイメージは何処かおとぼけた感じの明るい妹といった感じだ。

 だが今目の前にいる彼女は憎悪を隠そうともしない獣の様であった。


「ユリウス。もしリリィの身に何かあったら……その時は絶対にお前を許さないから、覚えておいて!それとケイトにも近づくな!!」


 その言葉と共に僕はレム家の敷地から叩き出された。

 僕のせいで……リリィ君が行方不明に……

  

 家を放逐される可能性などもうどうでもよかった。

 ケイト君は『意識を研ぎ澄ませても何も感じない』と言っていた。

 よくわからないが姉妹だからこそ感じるものがあるのかもしれない。


 だとすると……最悪の結末が頭をよぎった。

 僕の浅慮な行いが一人の人間の人生を狂わせてしまったかもしれない。

 僕は膝をつきひたすらに涙した。 

こぼれ話

他の作品でも触れていますがケイト、リリィ、アリスは同じ日にわずかな時間差で生まれています。

その時間順で便宜上、長女、次女、三女となっていますが感覚的には三つ子に近いです。

ただその中でアリスは自分で妹という役割を与えて二人を「~姉」と呼びます。

ただ、感情が高ぶると「ケイト」「リリィ」と呼んでいます。こういう時は大抵キレてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ