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【完結】「最低」から始まる二人の異世界恋愛譚  作者: HOT-T
最終章 社会人時代・そして結婚へ……
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第25話 後輩が彼女を陥れに来た

同話は同シリーズ「両思いだけど進めない私を恋敵が陥れに来た結果は……」をユリウス視点から見たエピソードです。

『桃虎の節』という異名を持つ3月。

 僕とリリィ君との関係は少しずつ進んでいった。


 以前は断られてばかりいた歌劇鑑賞への誘いやらに乗ってくれるようになったし、時々ひとり暮らしを始めた僕の家に来て料理を作ってくれたりしている。

 これはその、もしかしてあれじゃないだろうか。

 そう、彼女自身も僕の事を少なからず想ってくれているとか?


 だが急ぐことは禁物だ。こちらから急いで接近して行けば彼女は怯えて身を引いてしまう。

 だからこそ、距離感は適度に取りつつ僕の想いはしっかりと伝え続けよう。

 そんな僕たちの様子に安心したのか彼女の妹であるアリス君も仕事で街を離れる機会が多くなった。


 そんなある日、僕達は学生時代の後輩、ベリンダに再会した。

 ブロダイウェズ・ノア・ベリンダ。元ブロダイウェズ子爵家の令嬢だ。

 かつての僕と同じく血統主義で、生徒会時代には副会長だった……のだが恥ずかしい事にあまり記憶になかった。

 生徒会の活動自体にあまり興味が無かった。会長になったのも前会長からの推薦だ。

 そして僕はと言うと『任命権』があるのを良いことにリリィ君を『会計』として採用して一緒に居る時間を増やそうとしたり……うん、今思えば職権乱用だよねそれ。


 さて、このベリンダという後輩だがどうもリリィ君とは反りが合わないっぽい。

 というかリリィ君に敵意を抱いている感がある。

 ついでに彼女の思想はやはり血統にこだわっていて何というか、古臭くて気に入らない。


 というかね、もし血統や家柄で人を判断するならリリィ君が継いだミアガラッハ家は『元辺境伯家』だからね?

 

 そんな彼女だが再会してしばらく、突然食事に誘ってきた。

 僕としてはリリィ君との食事の方が余程楽しいのだが彼女が秘書をしているアルスター卿が会いたいと言っているらしいので一応承諾した。

 一応、国政に関わる有力者だし父上と親交のある方なので断るのも悪いと思ったからだ。


 冒険者ギルドでの用事を済ませ事務所に戻ると慌ただしかった。


「一体どうしたんだい?」


 見渡すとリリィ君の姿が見えない。

 事務員のジル君が駆け寄ってくる。


「副団長、大変なんですよ。団長が!!」


 リリィ君に何かあった!?

 話を聞くとベリンダ君が訪ねて来て二人は何やら話をしたらしい。

 彼女が帰った後、リリィ君が中々会議室から出て来ないので不審に思ったジル君が見に行くと、彼女は膝を抱えて泣いていたそうだ。

 現在はお母様達に迎えに来られそのまま帰っていたらしい。


「どういうことだ!?ベリンダ君との間に一体何が……いや、今はそれどころじゃない。済まないが今日の仕事はこれで終わりにして後片付けは頼む。僕は彼女の所へ行くよ!!」


「あの、副団長……そのだ、団長についてなんですが……あの人があんな状態になるなんてただ事ではありません。その、もしかしたらお二人にとって『一番大切な時』かもしれません。だから、その……団長をお願いします。頑張ってください」


「ああ。そうだな。ありがとう」


 ジル君に礼を言うと僕は事務所を飛び出す。

 そして走り出そうとした瞬間だった。背後から声をかけられた。


「どこへ行くんですか、先輩?」


 振り向くとそこに立っていたのはベリンダ君だった。


「ベリンダ君……リリィ君と何かあったようだが?」


「さぁ、何の事でしょう。それより今夜の食事ですが」


「済まないが一緒には行けない。リリィ君が一大事でね。アルスター卿にも謝っていてくれ。後で正式に謝罪をするよ」


 すると彼女は目に見えて失望の表情を見せた。


「何で、何でそうやってあんな女の傍に居ようとするんですか?」


「何?」


「あの女のせいであなたはこんな小さな街事務所で働かされることになって」


「この道は僕が選んだ道だよ。確かに、かつての僕は父上の様な政治家になるという道もあった。だが、この道を選んだ事に後悔はない」


「あんな女、あなたに全然相応しくないのに……」


 その言い草に怒りを覚える。


「ならば貴女は僕の隣に相応しくない狭量な貴族だね」


 未だに貴族の特権だのなんだのに固執する人間など僕の隣に居て欲しくない。


「…………それなら、これはどうですか?私、知ってるんです。あの女のとんでもない秘密。それを聞いたらきっとあなただって彼女を見る目が変わりますよ?」


 随分と挑戦的な言い方だね。

 とんでもない秘密、か……それも彼女を見る目が変わるような……

 ああ、そうか。わかった。彼女とベリンダ君の接点を考えれば自ずと答えは見えてくる。


 リリィ君は会計時代、自分の机にお菓子を隠して業務の合間にこっそり食べていた。

 校則違反なのだがまあ、その辺はご愛敬というものだ。

 

「それくらい知ってるさ」


「なっ!?」


「君は本当に狭量だね。その程度で彼女を見る目が変わるとでも?とんだ思い違いだね。何があろうが彼女に対する僕の気持ちは変わらない。そして、そんな風に卑劣な手で相手を貶めようとする君を僕は軽蔑するよ。二度と僕達の前に現れないでくれ」


 愕然とした表情で立ち尽くすベリンダ君を放置し、僕はレム家へと走って行った。

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