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【完結】「最低」から始まる二人の異世界恋愛譚  作者: HOT-T
最終章 社会人時代・そして結婚へ……
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第24話 看病

 ああ、体がだるい。

 結局無断欠勤になってしまった。

 実家に居たら使いの者を出せたのだが……

 これはリリィ君に怒られるだろうな。


 取り合えずいつまでもリビングで倒れているわけにはいかない。

 這ってでも寝室へ戻らなくては……


 動き出そうとした瞬間、呼び鈴が鳴る。

 誰だろうか?


「はい……ど、どなたですか?」


「私よ。風邪ひいているんでしょう?開けなさい」


 予想もしていなかった声に胸が高鳴る。


「――ッ!リリィ君!?ちょ、ちょっと待ってくれたまえ。と、とりあえずまず脱ぐから」


 まさか彼女が我が家に来てくれるとは。

 これは『正装』で出迎えなくてはなるまい!!


「この馬鹿、何で人を迎えるのに脱ごうとするの!?ていうか風邪をひいてるのに脱ぐな!」


 いや、そうは言ってもモンティエロ家の嫡子たるもの。やはり……


「とりあえず開けなさい。ごちゃごちゃ言うなら10秒後にビームで扉をぶち抜くから!!」

 

 扉の向こうからカウントダウンの声が聞こえる。

 マズイ。彼女はやると言ったらやる女性だ。

 絶対にドアをオーバーキルしてしまう。

 力を振り絞って立ち上がり玄関を開ける。


「や、やぁ……リリィ君」


「風邪よね?」


「あ、ああ……その様だ。連絡もなく休んでしまい済まない」


 あれ?これってもしかして心配して見に来てくれたのかな?


「一人暮らしなら仕方が無いわ。それより、入るわよ?」


 え?今何て言った?

 確か『入る』って単語が……


「入る?いや、ちょっと散らかっていて、その……」


 流石に家の中を彼女に見せるのは気が引けるというか。

 どうしたものかと考えているが彼女は強引に中に入って来た。

 ああ、流石は僕の想い人。そういう強引さも素敵だよ。


「うわぁ……」


 彼女は家の中の惨状を見てため息を漏らす。

 

「い、いやこれはね。普段はもう少し片付いているだがその……うん、そうだね、片付けないとね。あはは……」


 ふらふらしながら床に落ちている本などを拾おうとすると……


「そんな事はいいからさっさと横になって休みなさいっ!!」


 彼女は僕の首ねっこを掴むと引きずりながら寝室へと連行。

 おや、中々刺激的な絵面だね。

 それにしても本当に彼女は力が強い。これでも結構体重がある方なんだけどね。

 そんなボクを彼女は片手でベッドの上に放り投げる。

 ちょっと刺激的過ぎるよ。ドキドキしてしまうじゃないか。

 

 それから彼女はしばらく家の中を見渡していた。

 ああ、片づけが苦手という秘密がばれてしまって正直恥ずかしいんだがね……


「それで、あんた普段からご飯はちゃんと食べてるんでしょうね?」


「あ、ああ。お気に入りの店があるのでそこを順番に回っているけど」


「……自炊は?」

 

 これでもモンティエロ元伯爵家の嫡子。

 料理のひとつやふた……あーいや。


「パンセロ・オーンくらいなら……」


 まあ、ひとつくらいなら出来るかな。


「えーと……それで朝ごはんは」


「外へ行けていないから……」


 彼女が目を見開き睨んで来た。

 あっ、怒ってる。凄く怒ってるよ。


「ああもうっ、厨房、借りるわよ」


「あ、でもあまり備蓄もないし調理器具も……」


「ん。把握した。あんたは大人しく寝てなさい」

 

 そう告げると彼女は厨房へと。

 まさか彼女が料理を!?

 え?手料理を食べさせてくれるというのかい!?

 

 何という事だろう。

 熱でうなされて見ている夢とかではないのか?


 取り合えず拳で自分を殴ってみる。

 うん。痛い。夢じゃないねこれは。


 ということはまさか本当に料理を……

 しばらくして彼女はコメを使った料理、『オウカユ』なるものを作って持ってきてくれた。

 ほう、コメ料理か。確かに彼女の家は我が国では珍しくコメの消費量が多かったね。

 お父上が米を主食とする異世界人だという事が影響しているらしいが……

 

 さて……肝心のオウカユなのだが……

 塩味がほんのり聞いている上にあまり噛む必要も無く非常に食べやすい。


「火傷に注意してよね」


「む、無論だ。しかしこれは……こんな美味しいものがあったとは!!」


 こんな美味しいものは初めてだよ。

 彼女によると消化に良いので病気の時などいいらしい。

 オウカユを平らげると眠気が襲って来た。


「栄養も取った事だし、後はゆっくりと寝て体を休めなさい」


「ああ……済まない。その、まさか来てくれるなんて思わなくて」


「…………別に。普段頑張って私をサポートしてくれているわけだし、その、困っている時はこうやって手を伸ばさないといけないかなって思っただけで……」


 おや、何やら顔が赤いね。

 まさか彼女に移したりしてないよね?

 だとしたら一生の不覚になるのだが……

 ああ、だけどもうそろそろ眠気に抗えなくなってきて…………


 夢を見た。

 夢の中では彼女が泣いていて……

 何故だ。

 何を泣いているんだい?

 僕に何かできる事は…………


 すると、声が聞こえてきた。


「ユリウス、ごめんね……私、まだ勇気が出せない。でもいつかは……出来る事なら、それまで待ってて……」


 勇気が出せない?

 それは一体……


 だが身体は思う様に動かせず……

 

□□


 目を覚ますと彼女は居なかった。

 ただ、ベッド横の台の上には書き置きがあった。

 そこには戸締りが出来ないから鍵を借りてかけて出る事、そして明日も来るのでしっかりと休息をとることが書かれていた。

 テーブルの上には果物、そして水が注がれた水差しなどが置いてあった。


「リリィ君…………はっ!?」


 え?鍵を持って出た?

 それってつまり……いやいやちょっと待ってくれ。

 何だか恋人同士みたいじゃないか。

 それは刺激的が強すぎるよ。

 

 もしかして本当に彼女との関係が進展しつつある?

 だとするなら僕は……


「ヤバい、ちょっと鼻血か……」


 焦ってはいけない。

 僕は僕らしく。彼女を支え思い続けるスタンスを崩さずに行かなくては!!

 だが取り合えず今は……


「正直、明日が楽しみだ……」

こぼれ話

今回、ユリウスが『お粥』を『オウカユ』と聞き間違えていますが、この世界では度々そういう事が起こります。

わたし達が目にしている文章では普通にしゃべっているのですが本来は異世界言語。なのでちょっとした発音の違いなどで聞き間違いが起きて定着してしまう事があります。

他の例で言うと『こたつ』は『コー・ターツ』として認識されています。

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