第23話 実家を追放された
今回のエピソードは『両想いなのに踏み出せないけど看病には行ってみた異世界恋愛譚』のユリウスSideです。
「ユリウス。突然だけど、手前今日限りでこの家から追放な」
突然母上から『追放』を告げられた僕は思わず紅茶を噴出した。
「ああクソ、バカ野郎。何やってやがる!!」
「いやいや、そりゃ噴きますよ!何でですか!?」
「何でだって?えーと、それはな………あれだ、手前、あたしが昔言った事を忘れたのか?リリアーナを射止めることが出来ないなら放り出すって」
確かに言われた。
そして実際の所、僕は未だに彼女に振られ続けている。
「というか今ちょっと考えてから言いましたよね?」
「いや、気のせいだ。とりあえずそういう事で追放な」
「ま、待ってください。今だってこうやって同じ職場で働いていますし、少しずつ彼女の態度も軟化していってですね」
振られ続けてはいるが手ごたえ自体は感じている。
少しずつだが良い方向に進んでいる気がするのだ。
「なるほどな。それで、その成果はいつ実を結ぶ?もう10年近く経ってるぞ?」
「いや、それは……」
良い方向には進んでいるがそれがいつ実を結ぶかなんか正直わからない。
「というわけで、だ。お前は今日でこの家から出て行ってもらう。はい、解散!!」
「母上ぇぇぇ!!?」
□
というわけで家から突然放り出された僕だが、一応母上の恩情で住む家は紹介してもらえた。
生まれて初めてのひとり暮らしだが何というか自分の生活力のなさを実感した。
モンティエロ家は元伯爵家。王国から共和国に変わった事で貴族の身分も廃止されたもののやはり人脈などもあり裕福であった。
ついでに言えば父上の出身であるアンブリス家も伯爵家だった。
そういう事もあってか幼い頃からお金に困った事は無かったし、身の回りの事は使用人がしてくれていた。
それらを全て今は自分でしなければいけないというのは……こんな事なら家事の練習をしておくべきだった。
食事は作り方もわからないので幾つかの店をローテーションで回る事で済ませていた。
洗濯も正直仕方がわからなかったのでお金はかかるがある程度溜まってから知り合いの業者に頼んでいた。
そんな日々がしばらく過ぎたある日の事だ。
「ぶへぇわっくしょん!!」
「ちょ、副団長。風邪ですか!?」
事務員のジル君が持っていた帳簿で飛沫をガードする。
「ああ、どうやらその様だ。最近家から追い出されてひとり暮らしを始めたけど色々と大変でね。つい風邪をひいてしまったよ」
「追い出されたって……それでそのおうちに団長はもう招待したんですか?」
「え?いや、まだだが……というかそれは流石に」
「何でですか?団長の事好きなのに変な所でヘタレますね。そこは団長を招待していい雰囲気を作らなくちゃ。何かこう、そのまま勢いでロマンスがあるかもしれないですよ。チャンスじゃないですか!!」
待ってくれ。
そんなの想像したら鼻血が出てしまうじゃないか。
だが……
「いや、リリィ君はそういうことは嫌いだろう?僕は彼女が嫌がる事をしたくない」
「……本当に変な所で真面目ですね。いやまあ、こういう人だから団長も信頼して傍に置いてるのかなぁ。でもその割には団長に触れて投げられているし……でもあれは愛情の裏返し?うーん、奥が深いわぁこの人達」
何か変な考察をされているね。
とかなんとかやり取りをしているとリリィ君が近づいてくる。
「…………ユリウス、あんた少ししんどそうね。調子が悪いなら半日休みを取っても大丈夫よ」
「ふふふ、お気遣いありがとう。だが!この僕がこの程度で倒れるものでは無いさ」
「ふーん。それじゃあ、頑張ってね。私は冒険者ギルドに行ってくるから。留守はお願いね」
事務所を出て行くリリィ君を見送る。
「ふふふ、見たかい。僕の不調に気づきさり気なく声をかけてくれるあの優しさ」
「素直に調子が悪いって伝えて心配してもらえばいいのに……あの人変な所で鈍いからなぁ」
「はーはっは!ここは留守を任された以上奮戦せねばならない!さぁ、仕事だよ!!」
「大丈夫かなぁ……」
□□
そして翌朝の事だった。
「ううっ、ま、マズイ…………」
身体が恐ろしくだるい。
明らかに熱っぽいし何か意識がもうろうとする。
どうやら風邪が悪くなったようだ。
今、何時だろうか?
職場に休む旨の連絡を入れねば……ああ、だけど……動けない。
こぼれ話
ユリウスがいきなり家から出された理由ですが、これはユリウスの母親シャーリィとリリィの母親メイシー他2名があまりにもくっつかない二人に業を煮やしたからです。生活力のないユリウスのひとり暮らしをさせればそれに気づいたリリィが世話を焼きに来ることを想定しています。




