第22話 お化粧を見せたかった相手は……
本話は以前投降した【リリィとユリウス〜両片思いの異世界お化粧恋愛譚〜】のユリウスサイドに当たります。あの時、彼は何を考えていたのか、という感じです。
この感情は嫉妬だ。
僕は存在すら不確かでしかないリリィ君の想い人相手に嫉妬していた。
みっともないとは思う。
だけど、彼女がほかの男に抱かれている姿などが頭の中にチラつくと気がおかしくなりそうになってしまう。
自分勝手な感情だとも理解している。
本当に彼女を大切に思うならその幸せを願い背中を押すべきというのは理解できる。
だけど、嫌なのだ。
どれほど時間がかかってもいい。
最悪、彼女と結ばれなかったとしてもいい。
ただ、彼女の隣りにいるのは自分であり続けたい。
そこに他の異性が入るのは嫌だ。
この位置は自分だけの場所であって欲しい。
本当に汚い男だな……
身勝手にも程がある。
彼女の人生は彼女のものなのだ。
だから彼女が自分以外の男に想いを寄せているなら……
諦めかけていた人生を取り戻そうとしているなら……
そう。僕は負けたのだ。
いい加減認めなければ…………
□
「……や、やぁ、リリィ君。お昼ご飯かい?」
昼休み、僕は屋上で弁当を食べているリリィ君の所にやって来た。
「見て分からない?ていうか『お昼ご飯食べてくる』って出たじゃない」
彼女は相変わらず不機嫌だった。
学生時代はよく一緒にお昼をとっていた。
彼女の姉妹らも一緒の事が多かったが時には二人きりの事も。
「君に……その……聞きたいことがね……その、あってだね」
最低な出会いだったが彼女に出会い、恋をして僕は変わることが出来た。
アリス君に君の事を託されたがどうやら結局僕は君の心を射止めることは出来なかった。
『人生を諦めている』彼女を救ったのは僕では無かったのだ。
「いいわ。何の事かはわからないけどとりあえず言ってみて」
「いや、えっとその……君、誰か好きな人でも出来たのかな?ってちょっと……思ってだね」
心が、痛む。
自分以外の男の存在を問う等、これほどの拷問があるだろうか。
「好きな人?何を言っているかよくわからないわ」
そうだよね。そう簡単には認めはしないか。
「いや、だってその……何というかその急にきれいになったから……」
その言葉に彼女は目を丸くしてこちらを見ていた。
「もしかして……お化粧の事を言っているの?」
「あ、ああ……そう、かな?そう、それだ。その、普段はお化粧なんかしない君が急にして来たからその……どういう心境の変化だろうかと」
わかっている。
君は誰かに恋をしてるんだよ。
「ケイトに教えてもらったのよ」
「あ、ああ。ケイト君に。ああ、そうか……」
「何?もしかして変な所でもあった?」
「いや、そんなまさか。うん……問題はない。うん」
むしろ無茶苦茶きれいです。
このままお姫様抱っこして連れて帰りたいほどに。
まあ、そんな事を実際にしたらドラゴンスープレックスだろうけどね。
「それで、仮定の話として私に好きな人が出来たら何か問題があるの?」
「いやっ、その、そんなわけは……いや、あるさ。あるとも!もしそうなら君に相応しいかこの僕が見極めなくては!!」
しまった。
本来ならここですっと身を引こうと考えていたのに普段の自分が出てしまった。
「だから何で私に好きな人が出来たらあんたの許可が必要だって言うのよ。私だって女なんだからお化粧くらいしてみようと……その、そう思っただけ……だから」
「……本当に?」
「ま、まあよく気付いたわ。よく出来ましたと褒めておく」
ふと、気づく。
彼女の顔がわずかだが紅潮している。
これは……やはり誰か想い人の事を考えているのか。
いや、もうひとつの可能性がある。
「それじゃあ、私は中に戻るからあんたはゆっくりとお昼休憩をとりなさい」
これはある意味賭けになるかもしれない。
だが……
弁当を片付け僕の脇を通り抜ける瞬間、僕はある言葉をつぶやく。
「その……とてもきれいだよ。似合っている」
「――ッ!!」
彼女が息を呑むのがわかった。
「な、何よ!その、あ、ありがとうっ!!」
そう言うと足早に建物の中へ戻って行った。
これは………この反応は……
「もしかして……あれって」
思えば今までどれだけ褒めても『はいはい』と流されてばかりいた。
だが今のは明らかに動揺していた。
これはつまり……『お化粧した自分を僕に見せたかった』?
そう考えると朝方急に怒り出した事も、先日ジル君のリップを褒めた直後の不機嫌さも……説明がつく。
「………………遂に、新たなステージに進むことが出来た?」
急に力が抜けてその場に座り込んでしまった。
「ははっ、良かったぁ~~」
無論、違う可能性だってある。
だけど恐らくは…………そう、今は良い方向に考えるとしよう。




