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【完結】「最低」から始まる二人の異世界恋愛譚  作者: HOT-T
第3章 学生時代・復学編
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第15話 平行世界に一瞬迷い込んだ話

 目が覚めると僕は知らない場所に立っていた。

 雰囲気からすると学校の様だ。

 だがベリアーノ校では無さそうだ。

 窓から外を見ると広大な平原が見えた。

 どうやらこの学校は結構高い場所、つまりは山の上に建っている様だ。


 困ったな。

 どういうわけか訳の分からないどこかの学校に迷いこんだらしい。

 だが、何処に?


 途方に暮れながらもう少し状況を確認しようと歩いていると見知った顔を見つけた。


「リリィ君、それにケイト君!!」


 遠目から見てもわかる二人に安心し、僕は駆け寄った。

 だが、彼女たちの反応は……


「ちょっとケイト、こいつあんたの知り合い?」


「いや、知らないけど……」


「な、何を言っているんだい。僕だよ。ユリウス。モンティエロ・ユリウスだ!」


 そこで、気づく。

 二人の来ている制服が、ベリアーノ校のものと違う。

 どういう事だ?


「ねぇ、リリィ。これって新手のナンパじゃないの?」


「顔は良いんだけど何か怖いわね……」


 何だろう、ケイト君はあまり変わっていないがリリィ君の様子がいつもと違う。

 いつもなら毒舌を吐いてくれるのだが今日は素直に『顔は良い』とか嬉しい事を言ってくれる。


「あの、ここは何処なのか教えて欲しいのだが」


「アリアンロッド・アカデミーだけど……いや、ここに居て何で知らないのよ!?」


 ケイト君が首を傾げながら言った。

 アリアンロッド・アカデミー……確か外国にある全寮制の学校だ。

 ますますわからない。

 何故彼女たちがここに?

 

 何よりもやはりリリィ君の様子がおかしい。


 決して根暗ではないがどちらかと言えば他者と距離を取ろうとしているのが僕の知るリリィ君だ。

 アリス君が言っていた『人生を諦めている』というのも確かにどこかうなづける雰囲気を彼女は醸し出していた。


 だが今、目の前にいる彼女は違った。

 何というかそう、陰が無いのだ。


「おや、迷い人が居るようだな」


 廊下の先から土気色の肌をした魔導士風の男がやってきた。


「アラン先生!何かこの人、私達の知り合いみたいなんですけど……」


「どうやらその男性は平行世界からの客人の様だ。先日、リリアーナ君が行った実験の副作用だろう。恐らく平行世界のリリアーナ君と関りが深い人物の魂を一時的に引き寄せてしまったのだろう」


「あっ…………」


 リリィ君が目を反らす。


「平行世界を覗く実験は何が起こるかわからないから私の居ない所でしない様あれ程言ったはずだがね」


「す、すいません」


「リリィ、あんたって娘は……」


 ケイト君がため息をついた。

 どうやらここは平行世界というもので僕が生きている世界とは違う歴史を辿った世界らしい。

 つまり目の前にいる二人は僕の知っている二人とは歩んできた歴史が違う別人ということだ。

 

 やれやれ、驚くべき出来事に遭遇したものだね。

 アラン先生という方によるとこの現象は一時的なものなのでしばらくすれば僕は元の世界に戻れるらしい。

 

「あのさ、もしかしてさあなたって平行世界の私の彼氏だったりするの?」


「え?」


「だって、あなたは平行世界の私と関係が深い人なんでしょう?としたら……彼氏とか?」


「えーと、彼氏というか。僕は君の婿になる予定ではあるのだが……」


 その言葉を聞き、平行世界のリリィ君がはしゃぎだす。


「ちょと聞いたケイト!平行世界の私もこんなイケメンを婚約者にするだなんてやるじゃないの」


「くっ。そ、それじゃああ平行世界にあたしはどうなの?彼氏とかいる?」


「……えっと、済まない。僕の知る限り居ないけど」


 ていうか最近僕に失恋しました。


「嘘でしょ。なんであんただけ……」


「日頃の行いがいいのね」


「ていうか平行世界のあんたに相手がいるだけであって今のあんたはフリーなわけじゃん。てことはあんたは日頃の行いが悪いのよ」


「何ですって!あんた、いくら妹に負けたからって」


「負けてるのは平行世界のあたしよ!ていうか誰があんたなんかに負けるもんですか」


「何よ、喧嘩売ってるの?」


「そっちこそ!」


 やがて掴み合いの喧嘩を始める二人。


 ああ、これは……そうか。

 昔はよく掴み合いの姉妹喧嘩をしていたと言っていた。

 きっとリリィ君は『本来』こういう子だったんだろう。



 だけど僕が知らない何かがあって彼女は『人生を諦め』てしまった。

 僕の知るリリィ君は……


「残酷だな……」


「は?どうしたのよ?」


「平行世界のリリィ君もこの世界みたいな笑顔でいられたらどれほど幸せだっただろうって思う。だけどそうしたら僕が出会う事は無かったんだろう。そう思うと複雑だよ」


 二人は喧嘩を止め、顔を見合わせる。


「平行世界の私は……笑ってないのね」


 ああ、と僕は頷く。


「理由はわからないが少なくとも今の君達みたいに笑ってはいない。君とケイト君、そしてアリス君は何かに大きく傷ついている様子だ」


「えっと……ユリウス……だっけ?あなたはその、平行世界のリリィの事を大切に思っているのよね?」


「勿論だ」


「そう……」


 平行世界のリリィ君は少し顔を赤らめる。

 そこで気づく。

 段々と自分の身体が薄くなっていることに。


「どうやらそろそろお別れの様だね」


「あのさ、ユリウス……だっけ?私思うけど、平行世界の私はまだ心が闇の中に居るのかもしれない。だけどあんたみたいに大切に想ってくれる人が居るならきっと大丈夫。だから、平行世界の私を、頼んだわよ」


「うむ。どんな困難があろうとも彼女を射止めて見せるさ。何せ僕は、平行世界でケイト君にほぼ全裸で土下座して踏みつけてもらうことを懇願したほどの男だ。リリィ君の為にならどんな困難だって乗り越えて見せる!!」


「ええっ!?へ、平行世界のあたしぃぃっ!?」


 平行世界のケイト君が悲鳴を上げる。

 平行世界のリリィ君も震えており……


「ちょ、待って。こいつ変態じゃない!?前言撤回!変態が狙ってるわ!平行世界の私逃げてぇぇぇぇ!!」


「任せたまえ。僕が彼女をそんな変態から守って見せる!!」


「お前だぁぁぁ!!!」



 再び目が覚めるとそこは自宅のベッドだった。

 

「夢か……だが……」


 平行世界の彼女から託された想い、これは夢であるはずがない。

 彼女が心の底から幸せな笑顔を見せてくれるその日の為にも、僕は明日からも頑張っていこう!!

 そう、決意したのだ。


~おまけ~


 その頃の平行世界では……


「先生、平行世界に介入できる研究をしましょう!平行世界の私が変態に狙われてるんです!!!」


 平行世界のリリィが教師に色々と懇願していた。

 その様子を姉が不憫そうに見つめていたがよく考えれば彼女も平行世界の自分が全裸の変態を土下座させて踏みつけたと思い込んでいるのだ。

 心中は穏やかでは無いのだった。


こぼれ話

今回ユリウスがやってきた平行世界というのはレムシスターズが以前在籍していたボアディケア校に通わずユリウスとも出会わなかった世界線です。

この世界だと家出騒動も無いのですがリリィが割とうかつなので色々と問題を起こします。

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