第12話 復学お昼事変・上
異世界へのエクストリームな家出を終え、彼女は僕達と共に無事元の世界に戻って来てくれた。
あちらで出会った年上の男性に惹かれているような素振りも見せ一瞬焦ったが何とかなった。
しかもあちらで少し語らった時の反応から、どうやら底値を記録していた僕の好感度は少し上向きになった様子が見て取れた。
つまり、ようやくここでスタート地点に立てたわけだ。
何も言わず異世界まで行ってしまったのでその事で母上に怒られると思ったが意外と上機嫌で迎えてくれた。
ただ、『リリアーナが戻って来なかったらマジで追い出すとこだった』と言われ背筋に冷たいものが流れたものだ。
もう何というかね、目が笑ってなかった。
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「さぁ、ケイト君。それじゃあ行こうじゃないか!」
「はい?」
昼休み。僕はいつも通り席を立ちリリィ君の所へとしたケイト君に声をかけた。
周囲の視線が集中する。
「今まで通りお昼はリリィ君の所に行って食べるのだろう?」
「いや、そうだけど……」
「それは良かった。僕も同席させてもらおうじゃないか」
「えー……」
露骨に嫌な表情を作る彼女を見て僕は苦笑する。
「何故そんな顔をするんだい?僕は未来の義弟。家族のようなものじゃないか」
クラス中ががやがやとざわつきだした。
おや、随分と賑やかだね。
「ちょっ、あんた何てことを!色々とみんなから誤解を生むじゃない!!」
ケイト君は慌てている様子だがわからないな。
僕がリリィ君と結婚したら義理の弟になるのは聡明な彼女ならすぐ理解できるだろうに。
「おい、ユリウス。今の君の発言はどういう事だ?」
かつてつるんでいた血統重視派の友人たちが集まってくる。
「聞いての通りさ。僕は彼女の妹であるリリィ君に惚れている。将来は彼女の婿になるつもりさ」
「なっ!?」
友人たちが絶句する。
「ああもう……ただでさえ色々あって目立ってるのに……」
ケイト君が頭を抱えていた。
「大丈夫かい?何だか顔色が悪い様だが……」
「誰のせいだと思ってるのよ……」
ああ、どうやら友人達が彼女の気分を害したらしい。
ここは未来の義弟としてしっかりと言わなくてはいけないね。
「ふむ。君達、ケイト君をあまり困らせないで上げてくれたまえ」
女子たちから一斉に『お前だよ!』とツッコミが入った。
おや、中々連帯感のあるクラスだね。
「おい、ユリウス。まさか君は平民の家に婿へ行くというのかい」
やれやれ、いまだに平民だの貴族だの。遅れているね。
貴族や平民などあくまで血統の話だ。
制度上、僕らは皆平民じゃないか。
「そう言っているよ。無論、以前ケイト君との間に出来た確執については解決済みだ。DOGEZAの上往復ビンタをしてもらうことで……」
「わーっ、待って!わかった!わかったから!連れていくからこれ以上目立たないで!!」
ケイト君は僕を羽交い絞めにすると教室から連れ出した。
なぜうちのクラスはあれ程にざわついているのだろうね。
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「やぁ、リリィ君ごきげんよう」
「ケイト…………あんた何を持ってきてるの?元あった場所に返して来なさいよ……」
ポカンと口を開けてリリィ君が僕の方を見ていた。
ふふ、僕は捨て猫じゃないんだけどね。
「元あった場所に返したら何を言い出すかわからないから連れて来たのよ。もうかなり悪目立ちしてるんだから……」
「あのさ、私も今無茶苦茶目立ってるのよ?停学になって行方不明になって復学して……そこへそれらの原因となった男が姉に引っ張られてやってくるとか……何の罰ゲーム?」
「なるほど、運命を感じたという事だね?」
「ケイト、こいつの脳みそに漂白剤をかけてかき回したいんだけど……」
おやおや、随分と物騒な事を言うね。
しかし他の女子がおおよそしないであろうそういった言い回し。
そこがまた君らしい魅力だ。
まさかこんな素晴らしい女性に出会うことが出来るとは僕も幸せ物だね。
「ケイト姉、リリィ姉おまたせ……げっ、ユリウスだ!」
遅れて合流して来たアリス君が僕を見て声を上げた。
「やぁ、アリス君。未来の義兄として同席させてもらうよ」
リリィ君のクラスが一斉にざわつく。
おや、さっきも似たような事が起きたね。
「ちょっ、あんたここに来て更に目立たせる気!?」
リリィ君、慌てている君の顔も素敵だよ。
「お願いアリス、言いたいことはわかる。だけど今はこいつを刺激しないで。何を言い出すかわからないから……とりあえずこいつを持って行って場所を移しましょう」
こうしてケイト君の提案により僕たちは場所を移動するのだった。
こぼれ話
リリィはこの段階で無自覚ながらユリウスに対し少なからず好意を持っています。
毒舌を吐いているのがその証拠です。相手の事が嫌いなら沈黙で拒絶する子なので毒舌が出るという事はわずかながらも心を許しているという事です。面倒くさい子です。




