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59. 愛の力でラブラブハッピー大作戦!

 


「どうするっすか?」


 今の闇の王は完全に理性を失って暴走している。メモリーは闇の王を暴れさせて俺達と戦わざるおえなくさせようとしていた。あいつの狙いが闇の王の消滅と推し(おれ)とムスリクのハッピーエンドなら俺が死ぬこともムスリクが死ぬことも良しとしない筈だ。なのに俺は何度も死にかけている。多分あいつは闇の王の力を上手く制御出来てない。

 そもそも世界に上手く干渉することも出来ずにややこしいことにしているしな。不器用な奴なのだろう。


「闇の王の体の主導権を美世子に渡せればな」

「メモリーが思考を停止するようなことをするってのはどうっすか?」

「驚かせて怯ませるのか?」

「そうっす!」

「まあ、やってみっか」


 未だ黒い空に居座る闇の王の元に飛んだ。セイヴに羽を裂かれたことで多少飛びにくそうではあるが勢いを衰えさせずに赤黒い球体を放ち続けている。影の巨大な鬼達はエペとムスリクによって殲滅させられているが倒しても倒しても鬼は次から次へと黒い水溜りから這い出てくる。


「化物みたいな強さを持っていたっていずれ体力の限界が来ちまう」


 空中ではカーマインとセイヴが闇の王と戦闘を続けていた。


「大丈夫か!?」

「何とかネ!」

「空中戦は武が悪い。羽を落としたい。ジンノ! 挟み撃ちだ」

「お、おう。わかった」


 一旦距離を取り、闇の王の背後に回り込んだ。触手が襲い掛かってくるが、これくらいなら受け流せる。カーマインの炎を避けた瞬間を狙ってその羽に飛び掛かった。渾身の女神パワーを込めると羽が焼け落ちる。


「やった! 効いてる!」


 闇の王はもがき、背中に張り付く俺に手を伸ばす。彼の手が俺の片翼の羽を掴み。もぎ取った。


「ぐっ!」

「コーイチ!」

「まだだ!」


 残りの闇の王の羽に手を伸ばし、焼いた。その間に俺の羽を両方とももぎ取られてしまった。闇の王の羽も焼け落ち、俺達は一緒に地面に落ちて行った。

 衝撃は無かった。落ちて行く中、闇の王が俺の体をその胸に抱き、自身が下敷きとなったのだ。


「……美世子」


 彼の目が優しく俺を見つめているような気がした。その頰に触れようとそっと手を伸ばした。

 しかし次の瞬間には彼の目は再びぎらぎらとした理性の無いものに変わり、手首を掴まれて投げ飛ばされてしまった。


「美世子!」


 叫んだ。一瞬だがあの目は彼のものだった。彼の意識は確かにある。


「美世子!」


 闇の王が赤黒い球体を吐き出す。何とかその閃光は防いだが腕が一本焼け爛れた。防ぎきれはしなかった。凄まじい力だ。


「畜生……」


 俺は彼に向かって駆け出した。まだ足が動くうちに、腕が一本残ってるうちに、彼に触れられるうちに、彼の元へ。


 再び赤黒い閃光が吐き出され、俺の体が焼かれる。

 痛い。だけど止まるわけにはいかない。


「俺、お前に伝えなくちゃいけないことがあるんだ……美世子」


 彼の首に腕を回した。 


「好きだ。愛してる……お前のいない人生なんて考えられない。……一緒に、いてくれ」


 彼の血の気のない唇にそっと触れた。


「こう……ちゃん……」

「美世子」

「私、こうちゃんが別の誰かと幸せになって欲しいなんて……嘘。本当は私がこうちゃんを幸せにしたい……」


 彼の腕が俺を抱き締める。


『こんなの許せません』

「え?」


 闇の王の口が動く。


「っこうちゃん、逃げて!」

『私の思い通りにならない推しなんて、要らない!』


 二人の声が被って聞こえた。


 振り向くと俺の背後に先端が黒い刃となった触手が迫っていた。体の支配権はまだメモリーが持っていたのだ。


「邪魔させないっす!」


 黒い刃はシカバの体を貫いた。ぬいぐるみの体は糸もたやすく破れ、中から綿が飛び出す。しかし、刃は俺まで届くことはなかった。


「俺、これでも元の体は筋肉もりもりなんすよ!」


 クマのぬいぐるみの腕が刃を掴んでそれ以上進ませない。


「コーイチ! 俺は、大丈夫っすから……美世子さんを!」

「シカバ……」


 俺は闇の王に向き直った。


「美世子、結婚しよう」


 彼の目が大きく見開かれた。


「……返事は?」

「は、はい……!!」


 体から無数の触手を生やし、背中には焼け爛れたぼろぼろの羽、青黒く血の気のない顔をしているが、俺の目には世界中のどんな人よりも可愛く、魅力的に見えた。


 そして俺は衝動のままにその唇に被りつき、舌を絡めた。


『な、え、ちょ、何してるんですか!?』


 慌てふためくメモリーの声が聞こえる。だが構うものか。俺はたった今プロポーズに成功して有頂天なんだ。悪いが俺たち二人の間に入れるものは何もない。例えこの世界の神であろうと干渉出来やしない。


「ね、熱烈っす……」


 背後から死にかけのシカバの声が聞こえる。

 すまん! クマのぬいぐるみの体とはいえ、痛みは感じるんだもんな。後で治療してやるからな!


「あらあら」

「やるな」

「見てらんないヨ」

「俺には……まだ早い」


 次いで仲間達の声。


 皆、もう少し待っててくれ!







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