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58. 激突、闇の王戦!

 



「う、うわあああ……美世子さんがとんでもないことに……」

「メモリーの奴、闇の王の体を乗っ取ったのか!?」


 空からカーマインが急降下して闇の王の体を吹き飛ばした。だが、闇の王から伸びる触手がカーマインの脚を掴んで地面に叩きつける。セイヴがカーマインに駆け寄る。


「やべえ!」


 俺も駆け出そうとしたそのとき、


『記憶のバックアップを復元しますか?』


「はい!?」


 突然頭の中で声がした。何処かで聞いたことのある男の声だ。どうやらムスリク達も同じ声が聞こえたらしい。


『バックアップを復元します』

「え、今のハイは了承のハイではなくて……」


 耳元で世界が弾けた音がした。一瞬視界が眩んだ。

 だが、頭の中の靄が晴れる。記憶が一気に戻って来る。あの声は、


「……世界の番人?」

「コーイチ! 大丈夫っすか!?」

「あ、ああ…」

「ジンノ! 危ない!」


 俺に襲い掛かって来た触手をエペが切り落とした。


「エペ、助かった」

「ちょっとまだ混乱してるけど、アレがあんたの恋人の美世子さんなのよね?」

「あ、ああ」

「なら、助けるしかないわね!」

「美世子は、闇の王だぞ」

「でも、あんたが会いたがっていた相手でしょ! 助けたらちゃんと紹介しなさいよ!」


 闇の王が天に吠えた。空が黒い雲に覆われて黒い雨が降り出す。水溜りの中から何体もの巨大な黒い影の鬼が這い出して来た。

 闇の王が空に舞い上がり、手から赤黒く光る球体を放つ。それが地面を抉り取る。


「止めねえと! まじで世界を滅ぼしちまう! エペ、あの鬼達を頼む!」

「任せて!」


 羽を広げて闇の王の元へと飛んだ。


「俺も行くっす!」


 俺の背中にシカバがくっ付いていた。


「危ねえぞ!」

「俺が側にいないとコーイチはダメっすから!」


 思わず笑みが漏れた。こいつ、いつも良いところで助けてくれんだよな。


「じゃあ今回も頼むぜ!」

「はいっす!」


 闇の王に近づこうとすると触手が伸びて来る。避けながら突っ込むがすんでのところで羽を掴まれた。


「うげえ!」


 闇の王の目が赤く光り、俺に向かって口から地面を抉った赤黒く光る球体を出した。


「死ぬ!」


 俺を掴んだ触手をカーマインの炎が焼く。突然のことに落ちていく俺の体をカーマインに乗っていたセイヴが受け止めた。


「危ないなア」

「ご、ごめん。助かった」

「貴女の恋人は、とんでもないな」

「あー……でも本当はシャイな奴なんだぜ? セイヴと気が合うかもな」

「そうであることを祈る。カーマイン、あの翼を焼き落とせるか?」

「やってみるけど、上手くいかなくても怒らないでヨ!」


 カーマインは闇の王の翼目掛けて炎を吐きながら接近した。だが、その炎は避けられてしまう。


「ダメか……って、セイヴ!?」


 気がついたときにはセイヴがカーマインから飛び降りて闇の王の背中に張り付いていた。そして、その背に付いている翼を剣で切り裂く。凄まじい雄叫び。セイヴが闇の王の背中から振り落とされた。


「セイヴ!」


 カーマインがセイヴを抱き留め、俺は再び空に舞い上がった。


「コーイチ! 何手加減してるっすか! 女神バリアーならあの触手に捕まることもないっす!」

「あ、そうか!」

「忘れてたっすか!?」

「いやいや覚えてるって! バックアップは正常に出来てたみたいだからな! あと、正式名称女神バリアー改だからな」

「細かいこと気にしないっす! 来るっすよ!」


 触手が俺を捕らえようと襲い掛かる。俺は頭の先から羽の先まで全身の神経を研ぎ澄まし、触手を受け流す。そうして闇の王の腕に抱きついた。


「美世子、しっかりしろ! メモリー! 美世子の体から出ていけ!」


 闇の王はぎろりと俺を睨みつけ、腕から俺を引き剥がすと地面に向かって投げ捨てた。強く地面に叩きつけられた俺の頭上で影の巨鬼が腕を振り上げていた。


 すぐに逃げなくてはいけない。だが体が動かない。回復魔法を使えば動けるだろうがそんな時間はない。


「こ、コーイチ! バリアーっす!」

「……わ、わかってる」


 振り下ろした鬼の腕が消しとんだ。一撃は耐えられた。だが、体の傷を治さなければ女神の力が安定しない。兎に角先ずは傷を治さなくては。


 鬼がもう片方の腕を振り上げる。


「ちったあ待ってくれよ……」


 覚悟を決めて迎え撃とうとした。


 しかし、腕が振り下ろされることはなかった。振り下ろされる前にその腕はムスリクによって切り落とされていたからだ。


「ムスリク!」

「無事か!?」

「ああ、ありがとな」

「俺が敵の攻撃を防いでいる内に回復できるな?」

「ああ」


 ムスリクの援護もあり何とか体の傷を癒すことが出来た。

 だが考えてみれば闇の王の力は俺よりもずっと強いのだ。俺が以前無意識に放っていた女神の力など物ともしていなかった。闇の王が本気を出せば俺の力など遠く及ばないのか……。


「落ち込んでいる暇はないぞ」

「ムスリク……」

「彼を愛しているんだろう?」

「……ああ」

「なら、愛の力を見せてみろ」

「ははっ……お前、恥ずかしいこと真顔で言うなよな」

「出来ないのか?」

「馬鹿野郎。出来るに決まってんだろ!」

「その意気だ」


 ムスリクは俺の手を握ってた立ち上がらせた。


「ジンノ、俺は君が好きだよ」

「はあ!? こんなときに何言って……」

「仲間としてな!」


 俺の背中を力強く叩いてからムスリクは別の巨鬼に向かって駆け出して行った。


「いってえ! この馬鹿力……」

「俺もコーイチのこと好きっすよ。仲間として」

「……ああ、わかってるよ」








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