42. 答え
「目が覚めました?」
「ああ……」
目からは涙が溢れていた。
ムスリクの自宅、ベッドの上で俺は眠っていた。夢のようだったが、これがリプレイ。メモリーに握られていた手をやんわりと外した。
「どうでしたか?」
「最悪の気分だ。この後はどうなったんだ?」
「トライバルはその後、王の亡骸を操って侍女たちの前で自害した様に見せました」
「闇の王が殺したことにしない為に?」
「恐らく。しかし王女と王が相次いで亡くなったことは闇の王の呪いとされ、結局闇の王は封印されます」
闇の王は無抵抗だったらしい。ただ項垂れ、なすがままに封印された。
「トライバルは、闇の王を助けたかったのか?」
「私が出来るのは観測することだけです。人の気持ちは当人にしかわかりません」
「前にも、こんな風に人の記憶を見たことがある。あのときは、映像を見ているというより、その人になってるって感じだった。あれも、リプレイなのか?」
「いいえ。それは、魂に刻まれた貴方の記憶です」
あれは、女神モークシャの記憶だった。
「モークシャは俺か……」
モークシャは王に捕まり、その苦しみから生まれ直した。そしてモークシャが生まれ直した存在が、恐らくルミアだ。
彼女の母親は女神だと言っていた。王様が女神の妻を何人も取っているのでないのなら、これが答えだ。
「俺が、ルミアか」
メモリーはゆっくりと頷いた。
「まじかよ」
頭が混乱して来た。美世子そっくりのルミアが俺の前世、いや、前前世ってことになるのか。
「なら、美世子は何処に行ったんだよ……」
「それは、コーイチが一番わかってるんじゃないっすか?」
俺が寝ている間も側に居てくれたらしいクマのぬいぐるみが俺の手に触れる。
「俺?」
「そうっす。コーイチが好きになった人が美世子さんっす」
「そんなの……」
前前前世も前前世も前世もずっと一人しか居ねえじゃねえかよ。って、何かこんな歌あったな。
「闇の王が、美世子か……!」
シカバはにっこり笑って手を叩いて喜んだ。
「大正解っす!」
「つか、お前知ってたのかよ!?」
「言えない呪いを掛けられていたっす! 仕方なかったっす!」
「まじかー……あー……」
何回も会っていたのに美世子に気がつかないなんて、悔しくて仕方がない。
「美世子、この世界で一人で寂しかっただろうな。あいつ、寂しがり屋だから。何で俺、側に居てやれてねえんだよ」
「コーイチ、美世子さんはあの姿で会うのを躊躇していたみたいっすよ」
「どんな姿だって関係ねえのに。つか、正直今の美世子も好みだ! モークシャもルミアも俺も全員惚れてんのに何で躊躇してんだよ」
「それは本人に言うっす!」
舌打ちしたい気持ちを抑えて震える拳を握り締めた。
「……そうだな。よし、美世子に会いに行く」
「盛り上がっているところ悪いけど、もうそんなことしている時間は無いみたいですよ」
「へ?」
ベランダから外を見ると、城の上に暗雲が渦巻、城の周りを無数の巨大な黒い触手の様な影が蔓延っている。
「はあ!? な、なんじゃこりゃあ!!?」
「彼が動き出したみたいです。彼を止められるのは貴方だけです」
「トライバルか。あいつの気持ちもわかっちまったからなあ。行くしかねえな。 シカバの体もムスリクも取り戻して、トライバルも説得しなくちゃいけねえ。そんでもって美世子に会いに行く。大仕事だぞ」
「俺も手伝うっす!」
シカバが軽く俺の肩に飛び乗り、俺達は勢いよく玄関から外に飛び出した。
「私達のことも忘れないでよ」
「エペ、セイヴ、カーマイン!」
外には見慣れた三人が待っていた。
「貴女のことは、俺が守る」
「じゃあセイヴのことは私が守ってあげるヨ」
「お前ら……俺のこと置いて行っちまったのかと思ったのに」
「今更置いて行かないわよ」
「そうか……よし、行こう!」
無くしちまったもんを取り戻しす。
全て終わらせて、俺は美世子に、闇の王に思いを伝えてやる。




