7.真偽
「ある出会いが養分になり、ある恋を咲かせる。
種を上げる人と出会わないことには、誰か好きにならないかもしれないが、養分が種ではあるまいし、花になるわけがない。努力しても、種を上げる人は花火であるにすぎない。」
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「彼のことを考えるあまり、何を怠った...」夏目が夢から覚めて、不安になる。
「志貴!」紅葉も不安を感じて、夏目の部屋に来た。
「月!」
夏目と紅葉が夜月の部屋へ走って行く。
部屋の扉が開き、夜月が寝ている。二人がちょっと安心した。それでも、夏目がもう一度確認すべく近寄った。
「月!」
「お...お兄さん?」
夜月が怪我しないことを確認した。
「ごめん、何もない。寝ろ。」
二人が夜月の部屋から出た。
「ここにいるのに、感じられない。」
「違和感か...」
「郁?!」夏目が急に郁を探す。
郁が居室で寝ている。
「郁に聞いてみろ。頼む。」
郁がいつも夜月と一緒だから何かあったか知ってるかもしれない。夏目が動物と交流できる紅葉に頼んだ。
「ずっと部屋に寝ているって...」紅葉が郁の話を知らせた。
「嘘だろう...夜ともなれば、二人が出かけることを知っている!」夏目が怒鳴った。
「志貴、落ち着け。」
「焦るな。どうやら郁が教えてくれないし、幸い夜月が大丈夫そうだ。明日なら、夜月に聞いてみよう。」紅葉がテレパシーで夏目に言った。
夏目が不安な顔で部屋に戻った。
この夜に皆も寝られなかった。朝を待っていたり逃げる方法を考えたりしていた。
七色の海から太陽が昇った。
夜月が夏目を避けるべく、こっそり窓から出た。さっぱり知らない夏目が夜月の部屋の外で正午まで待ってた。
「やられた...」夏目が終に誰もいない部屋の扉を開いた。
紅葉も夜月がここまでやり出すのを思うだにしなかった。二人も呆気にとられた。
「ネ、志貴。俺たちが避けられる理由を考えてみよう。」紅葉は、庭園で夜月が言ったことを忘れたいものを。夜月にとって、隠す方がいいことだし、夏目にとっても、知らない方がいいことだ。
しかし、この状況の上で、思い出せないではいられない。そして、思い出したうえに、夏目も知るわけだ。
「月がそんなことを言ったか...」夏目が紅葉の記憶を読んだ。
「...」紅葉も夏目の痛みを感じた。
「月の気持ちをずいぶん前から知っているかもしれない。ただ直面したくない。真面目に考えたこともない。
それでも、月が知らせないかぎりは、俺も知らないかのようにするつもりだ。ばれてしまったら、相手を失うというものだ...」
「夜月に証明すればいい。大事なものが全部守れる。」
「俺ができるか?大切な人たち一人ずつ失っている...婆さんも彼も無くなった。月まで失ったら、俺が...耐えないよ。」夏目が泣きそうな顔で言った。
「しっかりする!俺がお前と一緒に守っている。
夜月がまだ感じられないか?」紅葉が夏目の顔を優しく撫でた。
「昨日からずっと...たぶん月の気持ちと関係がある。」
「郁!」
「郁。」二人が同時に言った。
しかし、何所でも郁が見えない。
この晩に夜月も郁も戻らなかった。
明朝戻る夜月と郁の前は、家の外で待っている夏目と紅葉だ。神と神器の連動のせいか、夏目がやつれそうだ。
誰か自分を待っていることも誰と一緒に帰れることも、この景色が今の夜月を感動させた。帰りたい家ができた。
「もう聞かないから消えないで。」夏目が夜月を抱き締めた。
抱かれている夜月が心の中で思っている。
「初めて抱かれた。とても優しい...とても温かい...とても羨ましい。」
後の数日は、夏目が夜月にとても優しくした。夏目が不安にならないで、夜月もずっと傍にいてくれた。しかし、この平和は本物ではない。二人も感情を抑えているし、何か隠された。
「夜月...ごめん、俺がたぶん限界に至った。
ぼっちゃんと執事の話を覚えているか?あの質問を考えぬく出した答えは、もし君があの寂しい太陽の月なら今の君が本物と認める。
『夏兄さんのような太陽と夏が好きになった。』そういうとこが大好きだから。あいつがこの気持ちで俺の神器になったものだ。」
今の夜月はその絆を持てる二人を羨むにほかならない。
「夜月、発動!」夏目が神器を発動したのに、何も起こらなかった。
その間に紅葉が夏目の記憶を読んだ。
「また泣いてしまったか?そんなに悲しいか?」
「ぼっちゃんをそんなにいとおしむ執事が死んだ後で、魔獣が執事の様子になって、執事にかわり、生きていく話だ。ぼっちゃんが執事にそんなに愛されたことも知らなかった。とても悲しいと思わないか?」
「悲しみより、酷いと思う。ある日ぼっちゃんが知ったら、悲しみが何倍に増えるか?最後まで執事のために何もできなかった...相手のためにすることはいつも相手が望むことではない。
そして、ぼっちゃんにとって、執事が代わられない人だろう。その二人だけの絆と思い出であればこそ、もっと大切にすべきだろう。」
「じゃ...もし魔獣が執事の来世なら、同じ人に見えるか?決定的なものは何ですか?」
「同じ魂を持っているといっても、人格や性格や考えや前世と違うかもしれない。たとえ前世の記憶があっても、前世のことを知っているきりだ。
やはり俺が知ってた人と認め難い。」
「そうか...でも、私ができれば、執事のようにしようかな...最後まで騙せたら事実になるわけだ。」
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「夜月はどこですか?」夏目が真剣な顔で聞いた。
「我は夜月の友達だ。夜月が君に知らせたがらない...」キツネ
「生...生きているでしょう?...」
「大丈夫、死ねない。戻れば必ず戻る。だから、待てばいい。」
「誰のために待つか...?夜月にとってそれが本当にいいか?!」
キツネが本来の姿に戻った。
「結界が解けた。行け...」
結界を解ける瞬間に、夏目は月が感じられる。
夜月の願いにもまして、夏目の願いは二人にとっても幸せになれる道と信じるから、紅葉とキツネも夏目の方を選んだ。