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村の強化

 翌日、サテラが自宅で目を覚ますとクレア以外のアンデッドがテーブルを囲んで会議をしていた。


「ですから、私が村の西の畑を改良します。南の墓と東の牧場と北の入り口はそちらで警備をしてください。西はいりません」


 サテラが寝起きで近づくと、ちょうどシェリーがやばそうな10人に意見していた。

 そのまっすぐな姿勢は長くサテラに仕えてるだけの雰囲気によって作られていた。

 そのシェリーは強気であるが、10人の元村の強者に心配されていた。


「我々は村のことをよく知ってるから心配してるんです。先輩だけで魔物に襲われても平気なのか」


 シェリーを先輩と呼ぶ村一番の怪力女アイリスは細い体でロリっ娘を本気で心配そうに見ている。

 シェリーは主人がいる前で力での証明をあまりしたくなかったが、仕方なくアイリスめがけて拳をぶつけた。

 テーブルを挟んで対面していたので、シェリーは片手で支えてテーブルを飛び越えるようにして顔面に飛びかかって一撃を入れていた。


「これでもダメだと言うならかかってこい」


 ジャンプして殴ったのでゆっくり着地してから怖い真顔でそう言った。

 さすがに魔物に戦いを挑んで死んでいくような連中でもこれは相手に出来ないらしい。

 全員が一歩引いた。シェリーから離れるように。


「はい。これで決まり。さっさと身支度してね。特に念入りに汚れを落とすように」


 これ以上は無駄だと考えてサテラが前に出て終わらせた。

 それから殴られて倒れたアイリスを起こした。


「あんたも村人の前に出すから身支度してね」


「かしこまりました」


 アイリスはやっぱり怪我もないが、シェリーへの嫉妬や悔しさも無いようだ。

 出来たお人形でサテラは大変助かった。



 サテラの命令で大急ぎでアンデッド達は井戸の水で体を洗い、サテラ宅のクローゼットに残された前の持ち主の服を借りた。

 それで見た目は傷のある人間に見えるようになった。

 それでも心臓も止まってるわけだから死んでることに変わりはない。


「さて、村の皆さんに紹介させてもらいます。私が昨晩にアンデッドにした11人です。出来れば前のように接しないであげてください。一言でもミスれば死にますから」


 一応忠告をして身綺麗にした11人を村人の集会で見せた。

 当然だが、元々は村の人間なので村人達に勇敢な戦士のアンデッドを見せれば動揺が広がる。

 もしかしたら村のために戦って死んだことを本望に思ってなくて恨んでる可能性もあるからだ。


「ついでにこっちも紹介しますが、シェリーは私が長く契約してる霊でした。体を与えるためにバラバラの遺体を縫い合わせて作りました。気持ち悪ければ吐けばいい。それでも私に村を任せたのならこの子達に仕事をさせるけどね」


 サテラは世界が悪いので意地悪を言った。

 吐いてもいいなんて言われてもこんな強い連中を前に吐けるわけがない。

 それどころか逆に引っ込んでしまった。


「さて、村長には人間の村人の管理を任せるわ。私がアンデッドに指示を出すから。それに文句がある奴は殺される覚悟で向かってこい」


 喧嘩腰でサテラがそう言うと、手下のアンデッド達も戦闘の構えをした。

 すぐにでも戦える12人のアンデッドと1人の死霊術師、そんなのに文句を言える奴は居なかった。


「誰も文句がないなら警備はこの10人に任せる。昨日治してやった男達はこいつらに劣るからシェリーの指示に従って農地の拡大と改善をして筋力をつけて。畜産業は今まで通りに進めて。クレアは私について近隣の村との交渉に行くわよ」


「あの、交渉と言うのは?」


 ここまでサテラが一方的に話していたが、途中で村長が口を挟んできた。

 それだけでアンデッド達は殺しに行こうとしたのでサテラが手を下に向けて「待て」の指示を出した。

 それで全員動くのをやめた。


「この村は魔物に襲われて人口がかなり減って100人になってしまった。だから、近隣の村と合併をすることで人口と技術と何かを手に入れるってことよ」


 その説明を聞いて村長は納得してくれたらしい。

 他に意見がある人がいないことを確認してサテラはこの集会を解散させた。


「それじゃあ、早速始めるわよ。解散!」


 その一言でそれぞれが自分のすべきことに向かった。



 サテラは出かける前に村長に近隣の村の場所を聞いていた。

 その間にアンデッド警備隊は自分達で決めたローテーションで外と中を守ろうとしている。

 それらを無視してシェリーは自分の仕事に向き合っていた。


「あの方々は気にせずに畑を広げましょう。その前に改良ですかね」


 考えるポーズをしながら彼女は男達の前で人外的発想で改良案を出していた。

 そのシェリー農業教官に村の戦士の1人が意見を言った。


「あの、野菜の育ちがよくないのには理由があるのではありませんか?」


 そう言われてシェリーは確かに育ちが悪いことに気づいた。

 それには土の栄養や水に問題があると考えて男どもに指示を出すことにした。


「私は畑のそばにも井戸を掘ります。その間に三手に分かれてください。牧場から肥料を持ってくる班と畑を拡大する班と私が掘り出した土を運び出す班、どの班になっても訓練と思って本気でやってください」


 そんな指示を出すとシェリーは早速素手で水が出そうな所を掘り始めた。

 その何もかもがつぎはぎだらけの教官に従って男達は作業を始めた。

 のちにこの教官は本当に戦士を鍛えることをサテラに任される。

 しかも、ぶっ飛んだ方法を評価される。



 シェリーが訓練兼農作業をしてる間、警備隊は暇で畜産や鍛冶屋の手伝いもしていた。

 彼らがそうしてる隙にサテラはクレアを連れて近隣の三つの村に行こうとしていた。


「サテラ様、移動手段はどうなさるのですか?」


「スケルトンホースを使う。その方が死霊術師っぽいでしょ?」


 村長だけが見送りに来てるが、そんな質問をするので答えてやった。

 そして、装飾されて綺麗になってるスケルトンホースを召喚した。

 それからサテラとクレアで二頭に乗った。

 サテラ達は村を村長に任せて出かけていった。



 出かけてから3時間後にサテラ達は戻ってきた。

 交渉は女神の印を見せればすぐに来てくれることで決まった。

 全員が女神と強者の恩恵を得たいらしい。

 あまりにもこれがうまくいきすぎてサテラは不満そうな顔で帰還した。


「つまらない」


 そう呟くと出迎えた村長とお付きのクレアは困った顔をした。

 もう少し苦戦するかと思って楽しみにしてたサテラがそれだけでヘソを曲げた。

 このままヘソを曲げた状態が続けば面倒なことになるだろう。

 だから、2人でサテラを家で落ち着かせることにした。



 翌日、三つの村の住人が引っ越すために自分達の技術を使って作業を始めた。

 草原の村の農業と畜産業、森林の村の狩りと自然との共存、王国近くの村の鍛治と建築、川の近くの村の釣りと調理、それらの得意な技術が揃った。


「それぞれの技術を教え合えば作業は早く進む。朝早くに来るように言ったのはすぐに仮の住居を完成させるためだ。時間はたっぷりあるが大人数の仮住まいを作るのは大変だろうからちゃんと手を取り合いなさい。それじゃあ、それぞれの仕事を全うせよ!」


 一晩経って機嫌が良くなったサテラは朝早くに新しい村人の前に立って朝礼をした。

 それで女神の使いの下で守られることが本気であることを態度で見せた。

 それから普通に村は町へと向けて成長を始めた。

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