輪廻の外の住人
村長の案内で村の外れへと連れて行かれた。
そこには元々もう少し人がいたんだなって分かるくらいの墓があった。
「ここには昔からの墓もありますが、そこら辺の60人はつい最近に亡くなりました」
「そんな死体をもらえるのは嬉しいんだけど、他の人達は文句を言わないの?」
「今を生きるために男達の怪我をどうにかする必要があった。あなた様は治して救ってくださったのです。これは村人全員からの贈り物だと思って受け取ってください」
村長は辛そうな顔を一切見せずにサテラに死体の所有権を与えた。
サテラは黙って受け取って、早速スケルトンや契約霊を召喚して掘り返させた。
その速度はかなり早い。
「後悔しないでよ。私は女神の使いでも、自由を許された死霊術師なんだから。死人を好きに使うよ」
「大丈夫です。全村人がそれを承知の上でこの村と自分達と死体を捧げたのですから」
「分かった。それら全て受け取るとしよう」
「ありがとうございます」
こうしてる間に最初の遺体が掘り出し終わったと報告が入った。
それでサテラはドキドキし始めた。
その状態で最初の遺体を見た時、なんでこんな子が死ぬことになったんだろうと思ってしまった。
それくらい若くて綺麗な遺体だった。
「腐敗はまだまだ進んでない。でも、なんでこんな子が死んでるの?」
「それは魔物の襲撃に勇敢にも剣を取って反撃したからです。その戦いの結果、相手は今生きてる連中でトドメを刺して彼女達は亡くなりました」
その話を聞いてサテラは手を合わせた。
それからその遺体に死霊術で魂を呼び寄せて入れた。
そして、その体に死して二度死ぬことなき力を与えた。
「目覚めなさい」
そうささやくと遺体の少女は目を開けた。
その瞬間、サテラでも驚くような殺気とオーラが辺りを包んだ。
「殺す。敵は殺す」
そう言いながらフラフラと立ち上がった。
どうやらまだあの時の戦いから抜けられていないようだ。
サテラもこれには怖くなってスケルトンなどで全力に止めにかかった。
「みんな!あの子を止めろ!」
その命令に従って5体のスケルトンは一斉に襲いかかった。
しかし、鋭い眼光を走らせてからアンデッド少女は脳の制限を少し外された力で思いっきりスケルトンを殴った。
あまりにも強いのでスケルトンでは手に余ってしまった。
「ちょっ!勇敢な戦士ってこんなに殺気立つものなの!」
サテラが思わずそう叫ぶとアンデッド少女の目は彼女を見つけてしまった。
そこから少女はすぐにサテラに向かってきた。
その時死んだなと思って覚悟した。それで目を閉じてしまった。
「我が主人よ。敵と間違えてしまいましたが、私はちゃんと意識も理解もあります。復活させてくれてありがとうございます」
サテラはその言葉を聞いてそっと目を開けた。
そこには殺気を消して跪くあの少女がいた。
「えっ?私達を全滅させるつもりじゃないの?」
「いえ、スケルトンを敵と間違えただけで主人にたてつく気はありません」
「あっ、スケルトンも魔物の一種だからか。それは私が悪かったかも」
「いえ、恩人で主人のあなた様の所有物と気づけなかった私に非があります。怖がらせてしまった責任を取ってどこまでもついていきます」
こんな形でサテラは一番強い右腕を手に入れた。
その力はサテラの予想以上で得られた物の大きさに喜んだ。
「あっ」
悪い人の目つきでサテラがニヤリと笑った時、アンデッド少女が突然そんな声を出した。
なんでそんな声を出したのかとよく見てみたら、傷は土で汚れた服で隠れているが開きっぱなしだった。
それにようやく気づいたサテラがサッと術で傷を瞬時に縫った。
「これで見せられるようにはなったと思うよ。死んでるから痛みとかの感覚がないのは変わらないけど」
「ありがとうございます。この村で元最強の女戦士クレア・フランベルク、主人のために精一杯頑張ります。そして、主人を守ることを誓います」
その誓いという言葉で契約が成立した。
これでクレアはサテラに仕えるアンデッドの仲間になった。
それによってクレアはその汚れた体の背中に主人と同じ女神の印が与えられた。
どうやら女神も認めてくれたらしい。
「あの、久しぶりですね」
しばらく黙っていた村長がクレアに怯えながら声をかけた。
その声の主に気づいて見下すような顔で返事をした。
「本当にしばらくぶりです。戦えないのに精神は強い村長さん」
その威嚇するように凄みを含ませた言葉に村長は完全に負けてしまった。
恐怖で何も言えなくなるほどにうつむいてしまった。
「クレア、村長は私に住む家をくれたしご飯もご馳走してくれたのよ。酷いことをするなら土に埋め直すよ」
「あっ!ごめんなさい!それだけは勘弁してください!」
クレアは主人に叱られて慌てて謝った。
それから反省のために黙ってしまった。
その状況にサテラはため息をつきながら新しいスケルトンを増やして墓掘りを続けさせた。
しばらくして10人の遺体の掘り出しが終わった。
他は損傷が酷くてアンデッドにしても使えそうにないので無視した。
「さて、全員目覚めなさい。そしてこの村を守れ」
復活のために魔力を込めた言葉を言うと、今度はさっきの反省をして傷を縫いながら目覚めさせた。
そして、目覚めた10人はそれぞれのやり方でサテラに頭を下げた。
ついでにあの女神への誓いのポーズもした。
右手を胸に、左手を腰に当てる。それがあの女神の好む人間の姿らしい。
「我らが主人よ!その命令承った!」
そう言うとアンデッドの男女10人集団が村の守護にあたるようになった。
その時に10人の体のどこかにも女神の印が刻まれた。
「さて、私の配下になったからには絶対に役目を果たしてほしい。だから、自由を与えておく。これで私が村を離れても守れるでしょ」
サテラが目の印を妖しく光らせて10人に自由を与えた。
ついでにクレアも行動範囲を広げた。
「ありがとうございます!」
これで10人に村を任せればいいだろう。
そうやって守りを考えていると、農業とかのことを任せるのを忘れていた。
「ついでに1人くらい無理やりアンデッドを作るかな」
そう言って掘り出されてない遺体を無理矢理に魔術で外に出した。
そのバラバラの体を勝手に繋いでロリっ娘アンデッドに作り替えた。
中身は自分が長く契約してる霊の中から選んだ。
「シェリー、この村の発展に貢献しなさい」
「かしこまりました。つぎはぎのアンデッドですが、この村の発展のために知識をフル活用します」
これでサテラは12人のアンデッドを作り出したことになる。
たったの数時間でアンデッドを作ることを完全にマスターした。
この調子ならサテラに勝てる奴はいなくなるだろう。
「さて、村長さん戻るよ。アンデッドは作り終えたからね」
「あっ、はい」
あまりにも狂った出来事に遭遇して彼は放心状態になっていた。
彼はサテラの言葉で我に帰って自宅へと戻って行った。
その後でサテラ達の方を見たが、先頭を女神の使いが歩いてアンデッドを率いる異常な光景がそこにあった。
その時のサテラは意外にもカッコいい顔をしていた。
その顔は自宅から覗き見た村長と真横を歩くクレアにのみ見えた。
いや、覗き見る女神にも見えていたかもしれない。
「夜は私のものだ。命の反応なき不死者を従える私の独壇場。魔物ども、お前達に夜は支配できない。覚えておけ」
家に戻る途中で立ち止まるとサテラは星空を仰いで物騒なことを言った。
その声が届かなくても魔力や殺気は少し離れたところにいる魔物に届いただろう。
この日からしばらく夜と死の支配者である死霊術師のおかげで村が襲われることは無かった。