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【小ネタ】公爵令嬢と地獄のダンスレッスン

「さあ、お嬢様! 休暇中もしっかり復習していただいたことでしょうから、その成果をお見せ下さい」

「え?」

 休暇とは休みである。休みとは、心身の疲れを取り、調子を整え、休み明けにいいスタートダッシュを切るための準備ともいえる。

 つまり、誰が休暇中にダンスの復習なんてするかバカ!

 であるが、そんなこと言えない公爵令嬢様はダラダラと嫌な汗を背中にかきながら、乾いた笑みを浮かべた。うふ。えへ。あはは。

 ――鞭のないロッテンマイヤー先生はもちろん誤魔化されてくれなかった。


「義弟と、義弟と一緒に、デビューしたいので、義弟と同じように進めてください……義弟が追いつくまで一旦、一旦、ストップで」

「そうですか」

 ギラリ、と講師の眼鏡が光った気がした。こわひ。

「ルクハルト坊っちゃま」

「はい」

「お嬢様があのように仰っておりますが、着いてくる覚悟はございますか? わたくしの授業は少々きつうございますよ」

 自覚あったのかー!

 クイッと眼鏡を上げて義弟に問う、講師の姿に彼女は内心でそっと手を合わせて謝罪した。

 ごめんねルーク。あなたのこと、とてもかわいいし、大事だと思うけど、お姉ちゃん、自分の身もかわいいの。

 保身たっぷりの公爵令嬢様である。

 マナー講師の言葉に、ルクハルトは「はい!」と真面目な顔で頷いた。

「早く義姉さまをエスコート、リードが出来るよう頑張ります!」

 義弟が何故かとてもやる気です。

 ルクハルトさん、その先生マジで鬼よ?


 とか思ってたのに。


「まあ。まあ。まあ。まあ! ルクハルト坊っちゃまは、大変筋がよろしゅうございますね! これならばすぐにお嬢様と合わせることが出来そうですわ!」

「ありがとうございます!」

「おふっ……マジか……ルクたん、マジか……」

「義姉さま! 義姉さまに早く追いつけるよう、僕、頑張りますね!」

「待って。ルーク。ほんと待って。そんなに頑張りすぎないでいいのよ、ほんと。無理しないで、ほんと」

「大丈夫です。無理なんてしていませんよ。義姉さまのために頑張りたいんです」

「うん、ごめん。私のために頑張りすぎないでお願い……!」


「さあ、お嬢様。お嬢様の腕前がどれだけ上達したのか見せて頂きましょうか」

「きゃー!!」



「お嬢様、王太子殿下から茶会のお知らせが」

「ダンスレッスンで死んでるから無理!!」

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