【小ネタ】公爵令嬢と左回りのワルツ
「リア、お前左回りのワルツ苦手なんだって」
「だって、どう考えてもワルツは右回りに踊るように出来てるじゃない! なのに、なんでわざわざ左?!」
「そうか。それは困ったな」
「ぅっ、ぅっ……何なのよ左回りのワルツ」
「お前が王太子妃になったら大変だな」
「いや、ならないからね? 早く婚約者立てなさいよ」
「なんでそんなに嫌がるかな」
「いや、だって、ウチだけ王家の血が濃くなるじゃない?」
「ふーん?」
「ほら、家のバランス的に?」
「そうか。お前が王太子妃になるんなら、ファーストダンスの左回りのワルツを廃止することも考えなきゃと思ったんだが」
「え?! 左回りのワルツ、なくなる、の?」
「お前が王太子妃になるならな。ほとんどの舞踏会で社交序列一位になる王太子妃が左回りのワルツ出来ないとか格好がつかないだろ」
「え? 本当に左回りのワルツなくしてくれるの?! 本当に?!」
「ちょ! 義姉さま、何食い付いてるんですか?! 落ち着いて! そこまで左回りのワルツ嫌なんですか?」
「そこまで左回りのワルツ嫌なの……( ; ω ; )」
「未来の王太子妃がそこまで嫌いなら無くすしかないだろ」
「アルゥ……ヽ(;ω;ヽ)」
「落ち着いてください義姉さま! 王太子妃になったら、牧場なんて出来ませんよ!」
「( ゜д゜)ハッ!」
「いや、そもそも公爵令嬢が牧場とか――モガッ!」
「義姉さまの手作りケーキ美味しいですか? 美味しいですよね。ゆっくり召し上がってください」
「ル、ルーク?!」
「大丈夫ですよ義姉さま!」
「いえ、それよりアルが」
「僕と一緒に練習しましょう、毎日! 毎日一緒にいる義姉弟ですからね、いつだって練習できますよ。予定しているデビュー年までまだ時間もありますし、一緒に頑張りましょう」
「ルーク。あなたって、あなたって、本当に優しい子ね」
「本当に優しい子は王子の口にケーキぶっ込まねぇだろ」
「それに本当に無理だと思ったら、留学でもしてデビューの時期を遅らせればいいんですよ」
「え?」
「理由があれば、少しくらいデビューが平均より遅れても誰も何も言いませんよ」
「な、なるほど」
「それに、先に王太子がデビューしていれば、序列的に義姉さまの相手は僕ですからね。普段から一緒に練習してる相手なら義姉さまも少しは安心できると思いますよ」
「確かに」
「じゃあ、リア姉さま、僕と一緒にデビューしよっ!」
((いつの間に?!))
「僕と婚約してさ、婚約者のデビューに合わせたって言えば皆納得するよ? 僕ならさらにデビューの平均年齢まで三年の猶予があるよ。お得だと思わない?」
「た、確かに……!」
「いや、お前、王家と血筋が近いのが駄目だって言ったばっかじゃねぇか!」
「あれ??」