【小ネタ】公爵令嬢とモンペの首領
「ジュリア。どうしてお父様に言わないんだ」
「何をですか?」
「それともお前を不快にさせる輩がこの世に存在することを気付かなかった不甲斐ないお父様はもう信用ならないのか?」
「いきなり何のお話ですか?」
「生ゴミを欲するほど不快なことがあったのだろう?」
「ありません!」
うぉーい! 伝言ゲームミスってんぞ! 途中で抜けた奴誰だ! 情報は正確に最後まで上にあげんかぁい!!
「本当かい? お前は優しい子だから、そんな生きる価値もない輩にも情けをかけてるんじゃないか?」
「違います! 誤解です!!」
「――ということは、お前が生ゴミなんかを欲する娘だと吹聴する輩がいるということだな」
お父様が! お父様が! 笑いながら殺気を隠そうとしてないわ!
「違います! 誤解です!! リアが生ゴミを欲しがったのは本当です!!」
「ジュリアが? 生ゴミを? お前を貶めるような人間は存在することこそが罪なのだよ?」
「本当に! リアは生ゴミが欲しかったの!! ひどいっ! お父さまはリアの言ってることを信じてくれないの?!」
わぁっ! と顔を覆って泣く真似をする。誰か目薬をください。完璧な公爵令嬢になるためには、いつでも泣ける演技力も必要ね。
「ああっ! 違うんだリア! お父様が悪かった。だから泣かないでくれないか、私のかわいい薔薇の妖精姫」
「本当にリアの言ってること、信じてくれる?」
「ああ。もちろん。だが、お前が生ゴミなんかを欲しがった理由を教えてくれるか?」
「堆肥を作りたかったの」
「堆肥」
「生ゴミを土に埋めると、いい土ができるのよ。お父さまは、リアがもう少し大きくなったら畑をくれると言ったでしょう? だから、その時のために今からいい土を作ろうと思ったの」
「そうか。堆肥の作り方を知ってるなんて、リアは本当に賢いな」
デッレデレですお父様。落差が激しいですお父様。しかしどんな状況でも顔が良い。
「お前は何をしてもいい。何をしても許される。だがな、リア。お前が苦労をする必要はどこにもないんだ。お前はこの国一番のお姫様なのだから。お前が望む最前のものを手に入れるために人を使うことを覚えなさい」
「でも、いい土を作らないと」
牧場主スキルが上がらないと思うの。
「お前が手にする畑は、最良のものに決まっているだろう?」
確かに。これはお嬢様の道楽ナメプ牧場運営でしたわ。上げ膳据え膳に決まっているわね。
「分かりました。お父さま」
「ああ。いい子だ。ところで――」
「はい」
「本当に消えてほしいモノはないね?」
「ありません!」
もうその話題は忘れろください!
「そうか。お前が不要だと思たモノはすぐにお父様に言うんだよ。今後お前がそんな思いをしなくていいように、お父様が一族郎党すべての首を斬ってあげるからね」
それは解雇的な意味ですよね、お父様?! 物理的に首と胴体が離れるわけじゃありませんよね、お父様?!?!
国一番の溺愛お姫様の私の周りがモンペばっかりだった話する?
そうして甘やかされ、忖度され、密かに狡猾に立ち回ることを覚えた(ゲーム)公爵令嬢。
わたくしこそが、この世界の頂点に立つ存在であるべきよ。ねえ、そうでしょう?