【小ネタ】公爵令嬢の弟達
「アーノルド殿下、こちらわたしの義弟のルクハルトです。今年デビューを果たしましたの。これからよろしくお願いしますね。ルクハルトはアーノルド殿下より二歳お兄ちゃんですね」
「アーニーは、リアねぇさまがいてくれたらそれでいいです」
きゅっ、と指先を掴んでうるうる見上げてくる第二王子に、彼女はメロメロだった。
「まあ。嬉しいことを。ふふ、アーノルド殿下がわたしだけの弟になってしまったら、王太子殿下が嫉妬してしまいますね」
「じゃあ、ルクハルトが兄上の弟になればいいよ!」
「嫌です」
「俺だって嫌に決まってるだろ!」
「まあ! 殿下はわたくしの自慢の義弟に何の不満があると言いますの?」
「この弟共を甘やかすお前に不満しかないわ!」
「リアねぇさま」
ちょん、とアーノルドに指を引かれれば、「はい、どうしました?」とコロリとにこにこ顔に変わる彼女に「そういうとこだよ!」と王太子が唸るが、彼女はどこ吹く風で、第二王子の前にしゃがみこんでにこにこと話を聞いている。
「絵本、読んでください」
「そうでしたね。さあ、あちらに座って読みましょうね」
「はい」
とことこと手を引いて柔らかなソファーに座った彼女は、そのままアーノルドを抱き上げると膝の上に乗せた。
「義姉さまっ!」
何やってるんですか! と悲鳴にも近い声にアーノルドの前に絵本を広げていた彼女はきょとんと首を傾げた。アーノルドはゆったりと背中を彼女の胸元預けて、ルクハルトをにんまり見ている。
「何って、絵本の読み聞かせよ?」
「どうして! わざわざ! 膝に乗せるんですか!」
「だって、この方が読みやすいし、見やすいでしょう?」
「リアねぇさまのお膝、大好きです」
「まあ! ふふ。では好きなだけ座ってくださいね」
「義姉さま! 相手は第二王子ですよ! 普通の子供ではないのですよ!」
「ええ。いつも王子としてしっかりしているから、たまにはこうして誰かが甘えることを許してあげないと、疲れてしまうでしょう?」
「えへへ。リアねぇさま大好き」
「ええ。わたしも大好きですよ」
ぎゅっ、ぎゅっ、と抱き合う公爵令嬢と第二王子。
「そういう甘やかしは、良くないと思います。良くないと思います!」
「まあ、ルークったら」
憤る義弟に、彼女はおかしそうに笑うと、「ちょっと失礼しますね」とアーノルドの身体を膝の半分にずらした。
「アーノルド殿下をかわいがっても、あなたがわたしのかわいい義弟なことには変わりないですからね。そんなに拗ねないでちょうだい。ほら、こっちのお膝にいらっしゃい」
手を広げ、彼女は聖母のような笑みを浮かべて、義弟を待った。
「そうじゃない! そうじゃないです!! どうして! あなたは、そう!」
地団駄を踏むような義弟の姿に、彼女は首を傾げ、アーノルドはにじにじと彼女の膝の真ん中を陣取った。
「リアねぇさま。ルクハルトはお家でもずっとねぇさまと一緒にいるのでしょう? ずるいです。アーニーもずっと一緒がいいのに。お城にいるときはアーニーのリアねぇさまがいいです」
「くっ、素直っ! かわいい……!」
「かわいい? えへへ、アーニーはかわいい?」
「ええ! ええ! とてもかわいいです」
「アーニーの方がルクハルトより、かわいいですよね!」
「は、いえ。そ、れ、はっ……! いえ、アーノルド殿下もかわいいですが、ルクハルトだってかわいい、です……! みんな違ってみんないい……!」
「――チッ!」
「あら? 今なにか」
「リアねぇさまー。早く読んでください」
「はい」
「義姉さま、そういうところですよ!」
「だから、そういうところだよ!」
「殿下、うるさいです。アーノルド殿下の読書の邪魔なので出ていってくださいますか」
「どうして、お前はそうなんだ!」
「兄上うるさいです」
「そうですよ殿下、うるさいです」
「お前らは、揃いも揃って!」




