きゅうわ
「そういえば、お礼をどうするか決めてなかったね」
「!?!? げほっ、げほっ」
ゲームの中断もあり、ちょうど飲み物を飲みながら一旦休憩のタイミング。恐らくだが現在の桜井さんの脳内では何でもするというセリフと直前の桜井母のセリフがダンスを踊っているのではないだろうか。噴き出すかと思ったがむせる程度で何とか堪えた桜井さんは真っ赤になっていた。
「色々教えてもらってるし、これからも色々教えてもらいたいから、僕にできる事なら何でもするから」
追い打ちをかけていく。これでもFPSでは死体撃ちを欠かしたことは無い。相手が弱っているときは最大の攻撃の機会なのは当たり前だよなぁ。
「にゃんでもってことは、たたた例えばの話だけど、ふっふっ腹筋を見せてもらうとかもアアアアリだったりするのかなぁなんて」
「へ?」
「いやいやいやほんの冗談なんですみません変態だとかそういうんじゃなくてマジごめんなさい冗談だから」
別に引いたとかではなく、何を言ってるのか分からなくて出た声だったが土下座せんばかりの勢いの桜井さんは全自動謝罪マシーンへと変貌を遂げていた。腹筋? 腹筋フェチとかなのかな? そう思った所でそういえばいろいろと逆転してることを思い出す。
んー、腹筋て元の世界的にはどういった扱いなんだ? さっぱりわからな過ぎて逆に笑えて来る。冗談で言える程度には普通の部位なのではないのだろうか? パンツだとかお尻だとかならまだわかりやすいんだが腹筋と来たかぁ……
「えっと、腹筋……見たいんだよね?」
「ひゅい?」
学ランのボタンを下からいくつか外し、シャツを軽く外に出す。Yシャツのボタンをはずしながら上目で桜井さんの様子を窺うと、何が起きているのか分からないと言わんばかりにぽかんと口を開いていた。インナーシャツをたくし上げるように横隔膜の辺りまで引き上げる。
「これで良いかな? もうちょっと上げた方が良い?」
「」
先程まで青ざめていたくらいだった桜井さんの顔から湯気が立ち上る。真っ赤なのは顔だけではなく鼻から垂れる血もである。ドバドバとまではいかないものの、ぽたりぽたりというよりは勢いのある流れ方。それを気にしていないように目は腹筋をガン見していた。
「桜井さん、鼻血出てるよ」
「へぁっ!? いやこれはその、大丈夫というか、えっと、大丈夫だから! ……(コレナンテエロゲ? ユメ?)」
鼻を抑えながらぼそぼそと呟く桜井さん。その目線は僕がシャツを下すまで腹筋に釘付けだった。破れたと思しきポスターの分程度にはなっただろうか。ちょっとよく分からないからこれからも積極的にいこうと思います。