よんわ
オーラ。というと途端に厨二臭くなるが、雰囲気というとそれなりに日常会話でも使われる人なりに対する感覚。その点で言えば、彼女から感じたのは正に同族のオーラであった。つまりアニメやゲームに造詣が深いタイプ、それでいて表面上は隠しているオタクだ。
友人を作れないか画策する上で、対象というのは重要だろう。話題の合わない相手に無理に付き合うなんてストレスを半端なく感じるし、つまりこの時点でこの世界の男子の大半は友人になりたいと思えない事になってしまった。ふとした時に感じる生理的嫌悪感というか。
かといって女子の集団に飛び込んでいけるかと言われれば、答えはノウである。別に僕がチキンだとかそういう話ではなく、元の世界で言うチャラ男だとかと盛り上がれるかと言われれば微妙だし、馬鹿な話で盛り上がるにしても男の腹筋だとかもっこりだとかにうひょーとなれる感性は持ち合わせていない。
オープンオタクと言えるような存在もおらず、他のクラスなどまで探せば居るかもしれないがわざわざ他のクラスに友人を作りに行くとかクラスの中での浮きっぷりが半端ない事になりそうで却下。となればつまり、隠れオタクポジションの女子を捕まえる他ないだろう。
というか、純粋に解説役が欲しい。この世界の未だになじみがたい文化に侵されたゲームやアニメの、ネタの解説やおすすめなどを教えてくれて語り合える仲間のような存在が欲しい。そう思って観察する事しばらく、どことなくそうだというオーラの持ち主を特定することが出来た。
「桜井さん、ちょっといいかな?」
「な、何かな、えっと、あ、安藤君」
桜井一華さん。眼鏡では無いものの話しかけるときょどる、自己紹介は簡潔で趣味は読書、と言いつつも人前ではあまり本を読んでいない。小柄で痩せ気味、運動は苦手な方。おしゃれなどは気を使っていないようで、まあ特徴を列挙していけば典型的ともいえるタイプ。
部活などは入っておらず、帰り道に誰かと遊びに行く事もほぼ無し。休日に誰かに遊びに誘われているところを見たことも無いし、誰かの口から遊びに行ったとかそういった話が出てこない、つまり基本的に家で遊んでいるタイプ。論理的に考えてアニメかゲームに違いない。
滲み出る同類の香りは間違いないと、声を掛ければこの反応。実は幼馴染的彼女……もとい彼氏が居て毎日帰っている線は無いとみて間違いない。童貞臭というか、この世界的には男慣れしていない処女っぽい感じが正に同志。
「ちょっと相談したい事があるんだけど、放課後って空いてるかな?」