表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/27

さんわ

 学校への距離よりも駅や商店街へのアクセスを重視した結果としてそこそこの距離となった通学路。とはいえ電車などは利用しないため遅刻などが起こるなら単純に寝坊などになるだろう。入学式早々に遅れることも無く、案内通りに自分のクラスへと辿り着く。


 ざわざわと騒がしい人溜まり。元々の友人なのか親しげに話をする数名を除けば、騒がしくしているのが女子であるというのは違和感を感じる。出身こそ地方都市だが別に10人のいくつかの学年を纏めて一クラスにしているような田舎では無かったのだ。


 馬鹿話やゲームやアニメの話題で盛り上がった彼らは最早存在せず、更に物理的に距離が出来た以上この場で話すことは出来ない。流石に初日から電話し続けるとかダメな方の高校デビューだろう。といってもこういう状況で何が良くて何がダメかなんて理解できないけど。


 特に中学の時と変わりない入学式が終わり、教室に帰ってきて自己紹介が始まる。名前順になった座席的に考えれば最前列の入り口という場所から考えて当然の様に最初に当てられたのは僕だった。何も考えていなかった上にどういった挨拶が普通なのか分からない。


安東あんどうゆうです。趣味は料理です。これからよろしくお願いします」


 当たり障りのない挨拶をする。どこからとなくよろしくーという声と拍手。それからの自己紹介は全体としてチャラいのは女子、大人しめなのが男子といった雰囲気。まあ女子にも物静かな人間はいるし、男子にも馬鹿っぽい奴はいる。有名高校といっても別に全員ががり勉眼鏡という訳ではない。


 そんな挨拶がよろしかったのかよろしくなかったのか。誰とでもそれなり程度には会話するものの、仲良く話す相手、というか友人と呼べるほど親しく付き合う相手が出来なかったのは、別に僕自身の気質が悪かったわけではないと思いたい。


 どことなく別の生き物のように思える、日常での些細な違和感。元々親しい人間の居ない環境。噛み合わない話題。原因なんて探せばいくらでも出てくるが、だからと言って既に手遅れとなりつつある環境に一石を投じる勇気はない。


 気が付けば休み時間にも教科書とにらめっこ。悲しい時間だけが過ぎていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ