じゅうはちわ
「ヴぁー」
中学校までの算数と違って公式を覚えていない事にはどうしようもなさの漂う数学。という事かどうかはさておくとして、また赤点の科目が増えた桜井さんの口からは悲鳴が漏れ出ていた。やはり勉強時間の不足は如何ともしがたい問題だったのではないか。
実際数時間教えた程度で今回のテスト範囲の問題を多少改変した程度の問題であれば解けるようになったので、勉強が根本的に出来ない人種ではないのだ。まあ入学してから今までの授業時間を考えれば当然とも考えられるし、一夜漬けにならないよう気を付けなきゃいけないけど。
「桜井さん、教える範囲増やすからね」
「ぴぃぃ」
逃がさんぞという意思を込めて肩に手を置きそう言えば、普段にも増して緊張したような声を出す桜井さん。何故だろうかと少々考えたが、今ちょうど周囲でも椅子をガタリと鳴らしている人も居たしそちらに驚いたのだろうか。だとすればタイミングが悪かった。
「ぁぁぁ安藤君!? ここ教室だよぉ!?」
「え、うん、そうだね」
声こそ大きくないものの、突然そんな当たり前のことを言われて逆にびっくりする。別に公衆の面前で行うには問題のあるいかがわしい行動をしたわけでもないのに、あれ、まさかとは思うけど肩に手を置くのがアウトとか? いやいや、そのくらい皆やってるのを見てるぞ僕は。
「へぇ、桜井ちゃんさぁ安藤君と勉強会? 安藤くぅん、あーしらも混ぜてほしぃんだけどぉ」
「わかるー、安藤君成績良いしぃ!」
「今からカラオケ? ス〇バ?」
クラスメイトの平素から声の大きい系の女子グループがそんな事を脇から言い出し、桜井さんがバイブレーションを始める。なんだろう、この場合クラスメイトのチャラ男グループに囲まれている状況になるんだろうけど、別段怖く感じないな。
「桜井さんの家で教えてるから、桜井さん次第かな?」
「あー桜井ん家……家?」
空気が凍り、教室が無音になる。静まった教室の筈なのに、どういうことかざわ……ざわ……という効果音が聞こえてくる。幻聴だろうか。もしかしたら唯一動いている桜井さんの振動が音となって聞こえていたのかもしれない。流石に冗談だけど。
「「「き、緊急会議ー!」」」
「あわ、あわわわ!?」
がたがたと唐突に動き出したかと思えば、僕と桜井さんを除くクラスメイトが密集してなにやらがやがやと騒ぎ始める。正直音が乱雑すぎて何を言っているのか分からないが、まあ多分大したことではないだろう。それよりは桜井さんが慌てているのを見てる方が面白そうだし。
作品ジャンル:コメディー
作品タグ:ギャグ
いや、男子クラスメイトのどろどろしたスクールカーストとか現実味ある描写の方向性と迷ったんですけど、よく考えたらとりあえずそういうのうっちゃって桜井さんいじr……可愛がりしようかなってなって、そういう方向性でゆこう、ゆこう、そういうことになった。




