にわ
死よりも残酷な現実というダメージから辛うじて生き残った僕は、一欠片程残された希望……つまり実は気が付いていないだけで魔法とか使えるようになっているだとか、一晩寝て起きたら全部夢だったとか、多分夢だしせっかくだから楽しもうとかそういった現実逃避をしていた。
次の日の朝、薄々わかっていた悲しい現実、つまりもう二度と僕が育て上げたデータには会えないのだという事に少し泣き、今まで見た事の無い名作を沢山プレイできると無理矢理自分の心を奮い立たせた。パッケージを見て、説明書に目を通し、流す程度にプレイしてみて、二度目の絶望を味わうことになる。
システム自体が理解できない程の変容を遂げていたわけではなく、動物と戯れたり架空の生き物を使役する系のゲームはそれまでの自分が育てたパーティが存在しない事以外はそれほど問題なかった。いや、一応自分が育てたであろうやり込んであるデータは存在するが。
キャラクターデザインが男の比率が多い。それは許容しよう。熱血系兄貴とかそういったキャラクターは嫌いでは無いし、渋い師匠ポジだって嫌いではない。むしろそういったキャラクターは好きだ。格段の問題と言えるほどではない。では何が問題か。全部、かな。
サービスシーン的カットでおっさんの尻が出てくるとか、ばぁっかじゃねぇの? 精神的なダメージが許容値を超えかけた。死にそうな目をしながらインターネットの海をかき分ける。ファンタジーは所詮ファンタジーの、何もかもが変わったわけではなく、ただ一つだけがあべこべになった世界。
つまり、男女の常識というか、性的感覚だけが異常な世界だった。魔法も奇跡もなにも存在せず、普通に、普通の、どこまでも普通で、僕にとっては異常な世界。壁にかかった制服が、明日から始まる高校生活を思い出させる。
……入院とゲームに時間を使いすぎて、何の準備も出来ていない現状は割と詰みなのでは?