じゅうわ
「そ、そういえば安藤君、毎日女の子の家に遊びに行っててお、親とかに何か言われないの?」
見終わったアニメのディスクを片付けながら、桜井さんにそんなことを尋ねられる。アニメの解説をしているときは饒舌なのに終わった瞬間どもる桜井さんにほっこりしつつも、そういえばこの世界の常識的に考えればそっちの方が問題なのかと……いやどっちにしろ異性の家に入り浸りなのは駄目じゃない?
「あぁ、僕今一人暮らしだから。父さんも母さんも知らないと思うよ?」
「」
また桜井殿が固まっておられる。まあわざわざ一人暮らしとか吹聴する必要も無いから学校で知ってる人は居るのかな? レベルである。実際こまごまとしたところが変わっているこの世界では、本気で知っている人間が居ない説すら濃厚だ。
「あ、僕ばかりお邪魔するのもアレだし、今度家来る?」
「(ナニヲイッテイルノカ、コレガワカラナイ)」
フリーズした桜井さんはそれなりの衝撃を程よい角度から叩き込むと復活する。なおこの際角度が鋭すぎたり衝撃が強すぎると血を噴き出すので注意だ。……これが物理だったらとんでもない暴力系ヒドインだな、この世界で言うと。
「あ、安藤君はもう少し危機感を持った方が良い! 絶対!」
男をほいほい部屋に入れてしまう桜井さんがそれを言うのかぁ……たまげたなぁ。
「そ、それはそれとして、おおおお邪魔しちゃってもだだだ大丈夫なのでせうか?」
「なんなら明日来る? ちょうど休みだし、お昼ごはん位なら作るよ?」
「行きますっ!」
食い気味で返事をする桜井さんに心の腹筋が悲鳴を上げる。お前直前まで言ってたこと覚えてるぅ? 手の平というか態度というか、変わり身早すぎなぁい? 状態である。多分全人類がこの気持ちを共有したら、戦争なんて無くなるか人類滅亡待ったなしかの二択だろう。
「一華ぁ~、そろそろ遅い時間だし、安藤君帰らせないと駄目じゃない~?」
「そ、そだねー! わかってるー!」
おっと、もうそんな時間だったか。やはりアニメ見てると時間が経つのが早いな。うっかり忘れるところだった。
「じゃあ安藤さん、今日のお礼はどうする? また腹筋?」
「ぇぁ、ぅ、うん!」
今日も今日とて真っ赤になりながらガン見する桜井さん。心せよ、お前が腹筋を覗くとき、僕もまたお前の赤面を覗いているのだ、なんちゃって。