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かんわ

桜井 一華 の 日常 ……?


 高校生になれば友達や彼氏の一人くらい自然にできる。そう考えてた時期も私にはありました! しかし現実は非常である。趣味を隠しながら適当に生活する毎日、中学の知り合いが来れないようにちょっと遠めの進学校に入ったはいいものの高校デビューなど出来る筈も無く!


 気が付けば灰色の青春まっしぐら。まあ家では性春まっしぐらですけどねはははなどと言いながら毎日を送っていた私の穏やかなる日常は、ある圧倒的な存在によって激変した。


 最初突然声をかけてきたのは、クラスの中でもある意味で浮いている存在、安藤君だった。簡潔な自己紹介に親しい友人が居なさそうな彼はもし私が同じようにすればぼっちの謗りを免れない中でも誰とでもしっかりとコミュれる雄才であった。浮いているっていうのは何というか、こう。


 住んでる世界が違う。正にそんな感じだった。整った顔立ちは女子の中で人気になっておかしくない程だったけど、委員長タイプともまた違う、クールさと電波を混じらせたような、不思議君的アトモスフィアは全体として声を掛けたりするのをためらわせていた。


 そんな彼が何故か学校内カースト底辺とも言えるような私なんぞに何の用事かと思えば、何故だか分からないが彼が私の家に来ることになっていた。な、なにを言っているのか分からないと思うが、私にもさっぱりわからなかった。ん? 今何でもするってry


 今の世の中ゲーム位誰でもやってるとはいえ、みんなでわいわいする系のばかりだろうと思っていたら、何故かアニメを見るかまで聞かれて。ははーんこれはあれだな? 実はオタク文化に興味がある美少年とかいう私の妄想の産物だな?


 という冗談は置いておくとして、まあ淡い期待を抱いていないわけではないけども、現実問題としてはがっつり見てるとか言って引かれたら明日から机の上に落書きが書かれるやつだろうと思って。と思っていたら何故か家に遊びに来たいとか言われて。


 いつどっきり大成功とかそういう感じの苛めが始まるのか身構えていたのに、気が付けば電車に乗って安藤君と下校である。コレガワカラナイ。何故か終始笑顔の安藤君を見ているだけで感じる心拍数の上昇、はっ、これが恐怖! むしろイケメンが怖いのは当然なのでは?


 いつもなら面倒だと思う通学路が、安藤君を盗み見ているだけで一瞬で家に着いたのは魔法の一種だと思いましたかっここなみかん。多分目が合ったように思えたのは気のせいだと思うのだけれど、こちらが様子を窺った時毎回目があった気がするんだよなぁ。


 家に帰ってきて、そういえば今まで家に友達とか呼んだことが無い事に気が付く。ま、まあ高校生だし友達を家に連れ込むくらいヨユーだよねとか思いながらも、何の連絡も無しにしかも友達だなんて恐れ多い美少年が一緒とか何かいわれそうだなーとは思った。


 けどまさかいきなり娘に向かってどんな弱みを握って脅迫したのとか詰め寄ってくるなんてお母さん流石に酷くないかなぁ! 確かに普段から部屋でゲームアニメフィギア製作と後ろ暗い生活してたけど、流石に現実でフィクションみたいなことするわけないじゃん!


 しかも友達だって言ったら今度は友達料とかのお金を払ってるのは友達じゃないとか、そういうお店に興味があるのはわかるけど未成年は犯罪だとか、娘に対する信頼ってものが足りなさすぎない? 日頃の行い? 残当? 返す言葉がございません。


 ちょっと怒りのままに安藤君を部屋まで連れていく。多分お母さんに怒ってなかったら手なんて掴まなかっただろう。なんていうか男の子の手っていう感じで、すごいと思いました(語彙力が死滅してる)。で、ドアの前で気が付くことがあるわけですよ。




 ――汚部屋までは行かなくても完全にオタ部屋じゃんかぁぁぁ!!!




 はたしてこの世界にクラスメイトの穢れを知らない美少年を自分の部屋にそのまま連れ込めるオタなどどれくらいいるのだろうか。まあそういう風に考えると多少興奮するけども、現実で出来るほどの剛の者ではない。訴えられたら負ける自信があるもん。


 あわてて片づけを始める。夜の恋人(笑)関係のグッズは最優先で戸棚の奥にぶち込み、それから明らかに露出度の高いマッチョマンフィギアとか自作フィギアも放り込んでいく。ライトじゃない漫画とかアニメも全部封印する。等身大ポスターとかなんでのり付けしてんの馬鹿じゃん!!!


 今世紀最高に最速で運動した気がする。犠牲も出たけれども、目的達成の為の些細な犠牲である。コラテラルダメージってやつよ。へへへなんだか無性に泣きたくなってきやがった。まあそれ以上に重要な事がドアの前に存在してるんだけど! ど!


 部屋に招き入れてから、椅子が一つしかない事に気が付くミステイク。口から思考が漏れていたのか、椅子に座ってもらって正座すべきかと思っていたところでベットを椅子代わりにしていいか聞かれた。ダメな訳、無いですかっこ迫真。大丈夫かな? プレミアついたりとかしない?


 自分のベットに男の子、それもイケメンが腰かけている光景に、そらお母さんもお金とか言い出すわけだと納得した。世の中から風俗店が無くならない理由を魂で理解した。正に永久保存してしかるべき光景である。今夜は捗りますなぁ!


 などとゲスな事を考えながらトリップしていたら、安藤君が自分の横をポンポンしていた。??? いやいやいや、そんな餌に私がつられくまー。なんていうか、無警戒過ぎない? 純真無垢なの? 実は天使なの? 座った時にうっかりバランスを崩して肩が触れちゃうとか普通死刑じゃないの?


 脳が理解できる範囲を超えつつある現実に先ほどの掃除の疲れ以上に呼吸が怪しくなってくると、何故か背中までさすってくれるオプション付き。あ、オプションっていうとなんか本当にそういうお店みたいだぁげへへ。とか言っていたら更なる衝撃が耳から襲ってきやがった!


 後から思い返してみれば明らかに意識とか記憶の混濁が見られますなぁ。なんだかとてつもない衝撃を脳に直接ぶち込まれた事だけは覚えている。実は安藤君は相手の脳細胞を破壊するための兵器だった? むしろ対女子用最終兵器とか言われてもおかしくない。


 やっぱり私の脳内が産み出した幻覚という線が正しいのでは? いやぁでもお母さんにも見えてたしなぁ。ついに自分の想像の存在を現実化できる能力に目覚めちゃった? いやいやいやそれ系の過去はもう燃やしたので存在しませーん。


 若干走馬燈すら見えた気のする不自然な意識の空白の後、取りあえず友達とか呼んだことないから何していいのか分からないし、そもそも女子ですらない安藤君に要件を尋ねたのは決して不自然な事ではなかっただろう。


 ふ、ふーん? オタ文化に興味があるんだぁ? じゃ、じゃあおねえさんが手取り足取りねっとり教えてあげるねぇ! などと言ったら多分次の日には刑務所に入っていてもおかしくないと思うんですが、目の前の彼は本当に実在しているのでしょうか?


 べたべたなメンズゲーから出てきた架空の存在みたいな。何を話しても聞いてくれてるし、興味を持ってくれているとか。つまんなそうにもしてないしキモイって引いたりもしないとか。あーダメだ語彙力が死ぬ。天使か。もしかして私は今日死ぬのでは?


 そう思いながらもゲームで遊んでいたら、買い物から帰ってきたのかお母さんが部屋に入ってきた。しかも壮絶に勘違いしてるし! 有り得んでしょ! 男じゃないとはいえ部屋にノックも無しに入ってくるとか、それ以前の問題なんだけど!


 間違いとか起きたら明日の朝には死刑にされていてもおかしくは無いって。もっとこう常識を身に着けるべきじゃないの? 大人としてはさぁ。これだから女ってのはデリカシーが足りないんだよ。あ、私もですね分かります。


 しゃべり続けてたし怒ったしで少し喉が渇いたのも事実で、そこだけは飲み物を持ってきてくれたお母さんに感謝しなくも無い。そんな上から目線が悪かったのか、飲んでいるところに安藤君から盛大な爆弾が投下された。危うく噴き出す寸前。お、お礼? お礼ナンデ?


 何でもするとか男の子が軽々しく言っちゃダメなやーつ! もし悪い大人とかに言ったら即誘拐されてもおかしくないレベルなんですけど! もしかして安藤君って自分がイケメンだと気づいていらっしゃらない? おばさんそういうの良くないと思うなぁ!!!


 そんな感じで慌てていたのが良くなかったのか、気が付いたら腹筋を見せてとか口走っていた私が多分悪い人間だと思うんですけど! 完全にアウトですわ。あーあ明日から学校行けないわ。むしろ人生終わったわ。馬鹿すぎるでしょ。


 さっきまで頭に血が上りすぎていた分、自分のセクハラ発言に血の気が引いたのが良く分かる。冷静さを取り戻してみればどれだけドン引かれてもおかしくは無いし現に安藤君もほら今腹筋見たいんだよねとか罵倒………………あれ?


 外れていくボタン。インナーシャツは白であーやっぱり清楚そうだもんな―などと一瞬現実逃避を始める。ぇ? 下着じゃん!?!?!? ナンデ? シャツ外に出してるナンデ!?!?!? それだけに止まらず、Yシャツのボタンまで外されていき。


 たくし上げとは、古代日本で生まれた文化である。奥ゆかしさとエロスが同居するその仕草は全女性にとって男性にしてもらいたいポーズであり、こんなものを生み出した日本人が如何に変態かを如実に語る云々。頭の中でそれっぽい文章のコラを作っていく。


 多分隕石が落ちてきた時の地球ってこんな気分だったんじゃない? なんて、それくらいの表現が大げさじゃないレベルの衝撃だった。引き締まってて、うっすら筋肉質な感じの最高にえちえちな腹筋だった。そしてたくし上げに上目遣い。


 そらぁこんなシチュエーションになったら鼻血の一つや二つくらいでらぁ! え、ちょっとまってなんなのこれ? 実は後からお金を請求されるやつ? むしろなんでお金取られないの? 世の中で援助交際が存在する理由を全身の細胞が理解した。


 リアルがエロゲ―に侵食されてない? あるいは夢とか? いや夢にしては鼻血の感触が生々しいわ。というか鼻血出るレベルの時点で夢なら醒めてるよね。という事は現実? 現実にこんな無知系純真天使みたいなイケメンが存在している可能性が?


 ……絶対に保護しなくちゃ(確信)


 安藤君が帰った後、お母さんにしつこく尋問されたけど、私は安藤君補完計画に思考回路の大半を割いていたためにまともに返答していなかった。まあ鼻血の理由にうっかり部屋で転んだって言ったら信じられたのはイラっとしたがね!

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