表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七以転生~転生先で人生謳歌しちゃるきに~  作者: 矢野 肇
以蔵と異世界
9/27

一章 閑話 とある冒険者の一日

今回は閑話です。

書いてて、閑話じゃなくても良かったかもw

とか思ったけど、閑話って事で。

その日少女は意気揚々とお使いに出かけた。


 日差しが高く、風が心地よい。その晴天ゆえ道中の景色は見晴らし良く、普段は雲がかかっているプルトア山の頂上まで見通すことができた。

 この少女の名前はノルン。ドワーフと人間のハーフゆえ、外見こそ15歳前後だが、冒険者を始めてすでに10年になる。ノクト村に住むアリーシャという、道具屋の孫娘と仲が良い。今回のお使いも、その道具屋からの依頼で、ノルンが二つ返事で引き受けた案件だ。

 すでにCランクになっているため、こういったお使いは普段は受けていないが、年数回アリーシャの道具屋から受ける依頼だけは別だ。


 久しぶりにアリーシャと会える。と意気揚々と街道を進むノルン。

ノクト村までは彼女が住むシャルド街からおよそ5時間ほど進む必要がある。もっともこれは、村と町の間にあるプルトアの森を通らないよう迂回した街道を使った時の話だ。

 プルトアの森はプルトア山の麓に広がる鬱蒼とした森だ。たまに魔獣が出るため、普通の人々はプルトアの森付近を通る直線の街道を使うことは無いのだが、彼女は冒険者である。

 背に背負った巨大なハンマーは虚飾ではない。そのひと振りで森に出るちょっとした魔獣程度なら文字通り叩き潰せる。もちろん今進んでいる街道は迂回路ではなくプルトアの森を通るものだ。


 そんな危険のある道の先に子供が現れれば、疑問を抱くのは当然の事だろう。

その子供は道中で蹲る様に屈んでいた。ノルンも最初に見た時は異様さから、無視して進もうとしたのだが、彼女の性格から無視できずに声を掛ける事にしたのだ。なにより、本当にただの子供が何かの事件に巻き込まれ、そこに蹲っているのだとしたら、それを無視して進むことは冒険者には許されない。


「君、どうかしたの?」

「フフッやっぱり君は優しいね。ノルンちゃんなら子供を無視できないと思ってたよ。」


 その一言に自分が厄介な者に絡まれたことは瞬時に理解できた。なにせ見ず知らずの子供は、ただの中堅冒険者の自分の名前を知っていたのだから。その異様さに身構える事さえできないので有れば、中堅冒険者にさえなれないであろう。


「あなた、ただの子供じゃないわよね。何が目的かしら。」

ノルンは一歩二歩と後ろに下がって、子供から距離を取ると、愛用のハンマーに手を掛けた。


「あ~、ゴメン、ゴメン。僕は君に敵対する気なんかないよ。ほら、手ぶらじゃないか。」

そう言うと少年は手を広げプラプラとさせた。その格好はズボンに薄手のコートと目深く被った帽子と街中でよく居る子供さながらだ。声変りをしていないのか、少年の声は中性的である。


「んとね、僕は事情があって正体は明かせないけど、君の見方だよ。それだけは信じてほしいな~」

「アンタみたいに怪しい奴をいちいち信じていたら、冒険者なんて名乗れないわ。」

「ん~、どうしよう。コレってツミって奴かな…じゃあこうしようか。ここに、君の運命の人との出会いが書いてあります。」


 そう言うと少年はコートのポケットからレターケースを出した。

「そして、君は今日運命の人に会うための鍵を手に入れます。僕としては、その人を助けてほしいんだけど・・・どうだろう。」

「あー、えっと、何?何かの依頼って事?ギルドは通したの?」

「あ、そっか。そうだね依頼だよ依頼。」

今、初めて気付きましたと言わんばかりの対応にノルンは呆気に取られた。

「ねぇこの手紙渡したいんだけど、そっちに行っていいかな。」

「それはダメよ。貴方怪しすぎるもの。」


ノルンは警戒こそ解かないが、目の前の少年に敵意が無い事だけは伝わった。だが、問題も山積みだ。

まず一つ目が少年の持つ手紙だ。

 だれが何の為にこんな事をしているのかは分らないが、「事情を説明できない」と言うことは貴族からの依頼だろうか?だとしたらあの手紙の中身は相当に厄介なことが書かれているに違いない。

 次に依頼者が自分を選んだ理由だ。もし、手紙の内容が厄介な物ならなぜノルンを選んだのか。たかだかCランクの冒険者の名前まで調べ、更に現在の居場所を把握し、待ち伏せているのだ。手紙の内容がどんな物にしろ、危険なことは間違いないだろう。


「え~じゃぁこの依頼は受けて貰えないの?」

少年は駄々を捏ねるように疑問を口にした。ノルンとしても受けないという選択肢を選べるならそれに越した事は無い。

「そうね、内容と報酬次第かしら。知ってると思うけど、私は冒険者としての腕は中堅止まりよ。できない事のほうが多いわ。」


 Cランクの冒険者ーーー言い換えればそこそこ強い何でも屋さんだ。魔物や魔獣の討伐任務もこなせるし、採取も採掘もできる。パーティさえ組めば遺跡調査の許可も下りる。もっとも代表的なのは商人や旅行者の護衛だろうか。

 Cランクと言うのは、そういった弱くは無いけど、過度に強いわけではない。優秀な一般人の代表と言った扱いだ。ギルドに舞い込む以来の大半はこのランクの冒険者に任せられる。故に人数も依頼も多く、良い案件はいつでも取り合いが起きてしまう。


「報酬か~それは、手紙の中に書いて有るから後で読んでよ。」

「読んだからって受けるとは限らないわよ。」

「いいよ~それに、君がだめなら道具屋の娘に頼むだけだし、僕としてはどっちでもいいんだ。」


 余りに軽い口調に少年の持つ依頼内容が何なのか見当もつかなくなる。一瞬、手の込んだイタズラの類も考えたが、それは無いだろう。ノルンも馬鹿ではない。自身の事を知っている人間が道具屋と口にすれば…考えたくは無いが、脅迫の類に近い。言外に「お宅の大切な人に迷惑が掛かりますよ。」と言われているも同然だ。


「Cランクの冒険者に頼む案件を道具屋の娘ができるとは思えないけど。」

「んっふふ、できるできる。だってただの人助けだもの。君が考えているような危険な類ではないよ。」


 アリーシャにもできる内容で人助け。引っかかる部分は多々あれど、本当に危険な依頼では無いのかもしれない。ノルンはとりあえず手紙の内容を読むことにした。受けるにしろ、受けないにしろ、この先の村に用事があるのは確かだ。なにより、少年とのやり取りを続ければいつまでたっても村には行けないだろう。


「わかったわ。その手紙を読ませて。」

「本当⁉やった~いや~君を選んで良かったよ。うんうん、やっぱり運命とかって気になるよね。」

少年が嬉しそうにニコニコとノルンに近づこうとすると、ノルンはハンマーを自身の前に振り下ろした。激しい音とともに土埃が舞う。かなり手を抜いたが、少年の足を止めさせるには十分だった。

「怪しい人には近づいてほしくないの。手紙はちゃんと読むから置いて行って。」

「う~ん、やっぱり警戒は解かないか…まぁいいや。ここに置いていくから、ちゃんと読んでよ。約束だよ。」


 少年はぶつくさと文句を言いつつ、足元に手紙を置くと一瞬にして目の前から消えた。あまりの出来事にノルンは眼をパチクリさせて自分の頬を摘まむ。刹那鈍い痛みが伝わる。どうやら夢ではないらしい。

「人が…消えた……」呟くように言葉を零すと、頭を振って気持ちを入れ替える。


 今、彼女に必要なのは現状の把握だ。そのためには、例の手紙を読むのが最も早いだろう。ノルンは、ハンマーを構えながら慎重に進み手紙を拾い封を開けた



ーーーー親愛なるノルン・エミリオット様へーーーー


拝啓 麗日の候 ノルン様に至ってはますますご健勝のことと存じます。

僕の方はと言うと、最近面白い玩具を手に入れ、日がな一日に充実感を感じています。


さて、この手紙を受け取っていただけたという事は、使いの者の誤解も解けた事でしょう。

今回頼みたい事はノルン様の今後にかかわる方を助ける事です。


助けると言ってもその方が危険な目にあっているわけでは御座いませんので

余り危惧する必要はありません。

まず、村に着いたら、紋付の袴を着た青年を探し、知り合いになってください。

その方が今後の貴方の鍵となる事でしょう。


冒険者として過ごすノルン様への依頼ですから、報酬も出すべきなのですが、

大したものも出せませんので、貴方の好みそうな情報を別紙に纏めました。

この依頼を受ける受け無いに関わらず、お好きに使ってください。


まずは略儀ながら書中をもちまして挨拶とさせていただきます。

暖かい季節になってきたとはいえ、なにとぞお体を大事にしてお過ごしください。


       ----貴方のそばに寄り添う神よりーーーー




 最初こそ堅苦しい文章だ、と頭を捻っていたノルンだったが、最後の「神」と書かれた一文に背筋を撫でられたような不気味さを感じる。書かれていることはなんてことは無い依頼ともいえない物だが、神なんて隠語を使う奴がまともな奴とは思えない。


 仮に身元を隠したいのなら、もっとマシな言葉は幾らでもある。では、本当に神なのだろうか……答えはノーだ。本物ならこんな言葉は使わないだろう。なにより、二枚目の別紙とやらに書かれた内容は一枚目とは明らかに書き方が違うとてもふざけた物だった。情報と言うよりは、「こうなると良いな~」という子供の書いた未来予想図を思わせる口振りで書かれていた。気になるのは、名言こそされてないものの、一枚目に書かれたであろう人物を助けられないと、自分の未来は暗い物になるという点だ。とてもふざけた口調で書かれた重い文章に辟易とする。


「なんか、とんでもない奴に魅入られたみたいね…」

ノルンは一人残された森でそう愚痴ると手にしたハンマーを元に戻し森を進んだ。



 







書いてる途中でノルンさんのフルネームを見るのに設定集を開いたのですが…

そこに書かれた名前はノエル・エミリオットでした・・・

イヤーあせったわw自分で作ったキャラ名間違えるかね普通ww

急いで他の話を見返すと全部ノルンと書かれていたのでほっと一息。

そして設定集の「ノエル」を「ノルン」に改名。

ノエル…君のことは忘れないよw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ