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七以転生~転生先で人生謳歌しちゃるきに~  作者: 矢野 肇
以蔵と異世界
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一章 その5 新しい世界で 1

狼さんは以蔵がおいしくいただくそうです。

とある民家の一室で以蔵はラトを睨んでいた。


「どういうことがじゃ。なんでおんしの事を見れる奴が居ないんじゃ。」

「僕は神様だよ以蔵君。そんな易々と見られる趣味はないさ。」


 あの後、アリーシャから向けられた疑いの目を何とか誤魔化した。

曰く「記憶があいまい」「仲間とは別れてる」「故郷を探している」

どれも、疑いを払拭するには弱いが、アリーシャも助けられた身である。

深く追及をすることは無かった。

微妙な空気の中、街道を進むこと一時間。以蔵はアリーシャの家である道具屋に

着くと家人への挨拶も早々に済ませ、部屋へと閉じこもった。


「だいたい、これは君の人生なんだ。僕が助けるなんて思わないでくれたまえ」

「おまんに期待なんぞしちょらん。」



 ボスっと音を立ててベットに座る以蔵。

今までに無いフカフカの座り心地に、体を横にしたくなるが、

何とか抑え、小太刀を取り出した。念のため折れた刃は狼ごと回収している。

道中でアリーシャに「その狼は・・・」と聞かれたが、「食べる」と答えると会話は途絶えた。

 以蔵としては肉は食べられるし、革は商人に売れるしで持ち帰らない方がどうかしてる。

と思ったのだが、此方では違うのだろうか?


「直るんか?」

そも、折れてしまった刀は直すことはできない。だが、ここは異世界で、小太刀は自称神が作ったものだ。自分の居た世界ではできない事ができるかもしれない。

「名刀だったでしょ?君が錬気を使えれば折れずに済んだんだけどね。」

言外に、お前が勝てたのは奇跡だよ。と言われている訳だが、以蔵は気に留めなかった。


「まぁ、武器屋にでも行けば何とかなるんじゃない。」

「武器屋?なんで商人が刀ば打てるきに?」

「ああ、そっか。君の所では商人と職人は別物だったね。」


 ラトは簡易的にではあるが以蔵に説明すると、以蔵もふむふむと納得した。その姿は、人斬りとして周囲を騒がせていた彼からは想像もできない。


意外と素直だな。まぁ以蔵君、ヘタレな所も有ったしね。案外、情と狂気を履き違えただけなのかもね。




「それやったら、あいたは武器屋にでも行こうか。こっちの世界の武具も気になるしの。」

「武具なんて気にしてどうするの?また盗人でもやる気?」


ラトの率直な質問にぐぬぬ…と声を埋める以蔵。実のところ、この無宿人が捕まった理由は、食い詰めた末の強盗だ。当時の以蔵は開き直っていたが、牢屋での時間が過ぎるにつれ後悔が押し寄せたのは言うまでなかろう。


「いんや、アリーシャの言うちょった、冒険者っちゅうになろうちょ思うてる。」

「君が・・・冒険者か。まぁ、冒険者崩れの山賊にはならないでよ。」

「ならんわ、すでに後悔しちゅうきの。食い扶持の心配をしない程度でいいがじゃ。」

「君って妙に無欲だよね。やっぱ酒や遊郭で失敗すると無欲になるの?」

「きさんどこまで知っておるがじゃ……」

「知りたいことはどこまでも、興味を持ったら骨になるまで見つめてるぅ♪」


 ラトは小太刀を以蔵に投げ返すと、鏡の前で機嫌良さそうにクルっと回った。

「今日はなかなかいい暇つぶしになったよ。また近いうちに楽しませてもらうね。」

「ちょ、待つきにまだ錬気っちゅうのの事聞いてなか。」

「その辺は自分で何とかしてよ。代わりと言ってはなんだけど・・・」

パチンとラトが指を鳴らすと以蔵の服についていた返り血や泥が消えていた。

「これも魔法の一つでね、簡単にできる部類だから覚えると便利だよ」

ニパッと笑って消えていくラト。あとの部屋ではポツリとたたずむ以蔵が残った。


「いんや、魔法じゃのうて錬気の方が気になるんじゃが……」


 以蔵は帯から刀と小太刀を外し、外羽織を脱いで鏡の前に立った。

ラトが居た時からチラチラと気にはなっていたのだが、ラトの手前

じっくり見る事は出来なかったのだ。ラトの目の前でそんな事をすれば

小馬鹿にした様にからかわれるのは分っていたが、やはり自身の外見が気になった。


「おぉ~若い。若い頃の儂がおるがじゃ」

鏡に映ったのは20そこそこの好青年。ちょうど以蔵が剣術修行のため江戸に行った頃だ。

享年と言うとおかしく成るが、死んだのは28だ。やはり、同じ20代でも30手前と20代前半ではこうも

変わってくるか。鏡に映る若い時分に嬉しさのあまり色々とポーズをとってしまう。

いくつかポーズを取っていると「プフッ」と笑い声が聞こえる。

その声にハッとなり後ろを向くとラトが居た。


「いや、ごめんごめんwww帰るつもりだったんだけどさ。」

そんなラトの横を以蔵は無言で通りすぎ、七以斬に手を掛ける。

「おまん、そこに座るがじゃ。」

「いや、待って以蔵君。それはシャレにならないんじゃないかな…」

「剣には自信がある。安心せい。一瞬じゃ。儂もそうじゃった。」

何に安心しろと言うのか、以蔵は無言でラトに近づくと抜刀した。

鋭い一閃と共にゴトリと不穏なおとが鳴る。以蔵は何事もなかったように刀を払い

落ちた首を拾おうと身を屈めた。


「で、気は済んだかな?僕にただの斬撃はきかないよ。」

不意に聞こえた声に、振り返るとそこには、

普段通り、一切の怪我が無いラトが居た。


「おまん、ほんに何でもありじゃのう。」

「神様だからね。ちなみに認識を変えただけだから、斬った感触も無かったでしょ。」


 確かに、感触は薄かった。静かに手をに握って自身の感覚の問題を確認する。


「今のが幻影魔法さ。使える人は少ないけど、君みたいな肉体派は常に警戒しないとね。」

「幻影ごと斬ることはできるがじゃ」

「それは、教えられないな。まぁ次に会う時までの課題って事で。」


 そういうとラトは窓を開けて飛んで行った。彼女なりに気を使ったのだろうか。

以蔵は開けられた窓を閉めるとベットに倒れこんだ。


「まずは、武器じゃ。次が錬気かのう。金銭は・・・あの狼がいくらで売れるか次第だにゃぁ。」


初めて使ったベットの感覚に身を任せる。長かった一日がようやく終わった。

以蔵は、そのフカフカの感触に、異文化も悪くないと思い始めていた。






ふぅ~ようやっと村に着いた。

結局、お金の説明してできなかったジャマイカ。

これもそれも、全部ラトが悪い。奴こそこの世全ての悪に違いないw


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