若輩者の至らなさ故 #1
夏を前にした日の光が窓から差し込み、涼しい風はカーテンを揺らしていた。窓辺の手洗い場を、カーテンのなびきとともに、日差しがちらちらと照らしていた。彼とその友は、部屋の中の日差しからは少し離れたところで向かい合い座っていた。彼はこの友を慕い、尊敬していた。
彼は友に問うた。
「友よ、恋愛とは実にむつかしいものだな。私は痛感したんだ。」
「何があったんだい」
「言うに恥ずかしいことなのだが、一時の感情に任せてひどい言葉を浴びせかけてしまったのだ。彼女を酷く傷つけてしまった。愛してやまない人を、一番傷つけてしまった」
「何だか深刻な顔をしていると思えば、そういうことか。君は思い詰める性質の人間だからね。考え込んでしまうのは分かるように思う」
「わかってくれるかい。そのことで大変頭を悩ませている。何だかよくわからん感情なのだ。自分が傷つけたにも関わらず、彼女への怒りのような感情もある。かと思えば、感謝もある、後悔もある、悲しみもある。感情とはなんと雑多であろうか」
「彼女とは話したのかい」
「話したさ、電話でな。私は激し、面目もプライドもずたずたさ。君はどう思う?」
彼は、窓の外に一羽の鳥が通り過ぎたように思った。視界の隅に影が映ったように見えたが、気のせいかもしれなかった。外は少し曇ってきたようでもある。脇にある机に置いていた飲み物を口に含み、友は少し考えるように下を向き、ややあって顔を上げ、真っ直ぐな目で彼を見つめて言った。
「友として意見を呈するといくつかある。君は彼女をちゃんと見ていたのかな。自分のことしか見えていないように僕には思える。人のことを考えようとして、いつの間にか自分の欲とすり替わっていたなんてことはないかい。それに、激して傷ついているのは彼女ではなく、君の方ではないかい」
「何を言っているのか理解しかねるのだが、友よ。私は彼女の為を思い、たくさんのことをしてきたのだ。彼女も何度も喜んでくれた。なのにそれがどうだ。リターンがいつの間にかなくなってしまった。自分の事しか考えていないのは向こうの方じゃないか」
「愛の意味をはき違えているようだよ、君は。久しく見ないうちに柔軟性まで失ってしまったのか。私は残念でならない。理由は君の中だ。無いものを考えても仕方がない。受け入れること、そして赦すことが解決の糸口になるよ。今は辛いだろう。彼女のせいにしたい気持ちもわかる。それは最も簡単なことだ。しかし、それではあまりに不幸だ。だが安心していい、君には私という友がついている」
彼は頭を垂れていた。心に痛烈な何かを感じていた。少々曇り気味だった外は、いつの間にか元のきつい日差しに戻っていた。強い風が窓から入ってきた。彼が風を受けて顔を窓の方へ向けると、窓の光が霞んで見えた。