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七色の……  作者: 四十水智美
暗殺未遂
17/72

6 ロウディ(前半)

 部屋の入口で話をするのは失礼だからと、その男はクリス達を中へ誘う。

 部屋に入ると、外見から判断して役職の高そうな人達が、数人入口付近に集まっており、順番にクリスに会釈をしていった。

 入口付近に集まったのが警備兵でなく、職員だったと知って、メイプルとマーブルは少なからず驚いた。何故なら、あの失礼な返事で、現れたのがクリスであると伝わったことを意味するからである。


 応接室には、クリス達三人以外には、クリスに挨拶した男だけが入った。そしてクリスが紹介役を買って出た。まあ、両方を知る人間がクリスしかいないので、他に紹介役が出来る人はいないのだが。


「と、その前に……」

 クリスはマーブルの方を向いて言った。

「帰る?」

 マーブルはかなりがっくりとした。何が言いたいのか、悔しいがわかってしまう。これから彼女の名前を相手に紹介するが、アットに伝える気なら帰れ、と言うことだ。だが、それだけではなく、伝える気がなくても帰ってくれないかな、と思っているに違いない。


「俺は口が堅い」

 と、マーブルは残る意志を表明したが、クリスには、

「知ってる」

 と一言で返された。


 きちんと約束しろと言うことか、と気付いて、

「ここでのことは誰にも一切話さない」

 と約束すると、クリスは頷いた。マーブルの口の堅さを、クリスは本当に認めているのである。クリスがマーブルを信じてくれたことを、マーブルは嬉しく感じた。


「彼女はメイプル・ウィリアムズだ」

 クリスがメイプルを紹介すると、誰よりもマーブルが驚いた。

 相手の男は、無論メイプル・ウィリアムズと聞いて驚いていたが、それ以上にマーブルの立場を不思議に思った。クリスの仲間ではないのか?


「そして、マーブル・スタンレーだ」

 続いてクリスがマーブルを紹介すると、再び相手の男は驚いた顔をした。

 それをクリスは見逃さず、

「知っているのか?」

 と尋ねると、男は、

「名前だけは聞いている」

 と言って肯定した。


 クリスは何故マーブルを知っているのか疑問に感じたが、とりあえず紹介を終わらせることを優先することにした。


「彼がロウディ・ヴィドゥニだ」

「えっ!?」

 マーブルは目を丸くして聞き返した。勿論、聞こえなかったのではなく、思いも寄らない名前だったからである。

 やっぱり、とメイプルは頷く。そしてクリスを見て、マーブルの驚く顔を見逃さなかったわよ、の報告代わりににっこりと笑う。


「宜しく、ロウディ・ヴィドゥニです」

 ロウディ・ヴィドゥニと紹介された男は、早速挨拶をした。

 メイプルとマーブルもそれぞれ挨拶を返す。マーブルはまだ慌てていて、挨拶がぎこちなかった。


「それでは、とりあえず腰掛けましょうか」

 ロウディはクリス達三人に着席を勧めた。

 テーブルは片側四人の八人掛けで、ロウディが下座に、クリス達三人は上座に着く。


「メイプル」

 着座すると、クリスは最初にメイプルを呼んだ。

「前に紹介したいと言った俺の親友だ」

 メイプルは、クリスからロウディに視線を移し、再びクリスに戻してから、頷いた。


「いつから気付いてたんだ?」

「ん?」

「ロウディと俺が親友だってこと」

「あ、別に気付いてた訳じゃなくて、あたし達に何も言わずにここに入ったから、そうなのかなって思っただけ」

 クリスはメイプルの察しの良さに感服した。クリスとしては、ほんとはマーブルじゃなくてメイプルを吃驚させたかったのだ。


「紹介したいって言うのは?」

 話の見えていないロウディが尋ねた。

 クリスはロウディがエルテック王国に滞在していたことを確認して、以前エルテック王国を目指していたことを話した。


「知り合いだったなら教えてくれれば良いものを」

 とマーブルは不平を述べる。暗殺未遂をどう成功させるかに苦心していたマーブルの気持ちもよくわかる。

「メイプルを驚かせたかったから」

 とクリスは全く悪びれない。そのメイプルには、

「バレバレだったけど」


「メイプル・ウィリアムズと言うのは、あのメイプル・ウィリアムズだよな?」

 ロウディが尋ね、クリスは頷いた。

「いつどこで知り合ったんだ?」

「半月前にWE街道で擦れ違った時に対戦を申し込んだ」


 マーブルは丸々信じ、ロウディは、クリスが女性に対戦を申し込まれることはあっても申し込むとは思えなかったので、一目惚れでもして声を掛けたんだろうと判断した。その通りである。


「半月前ってことは、俺達と会ったのと変わらないじゃないか」

「一日違いだな。その一日の間に、その後の二週間以上のことがあったけどね」

 クリスはマーブルに、少々嫌味を込めて返答した。


「しかし、噂とは全然違うな」

 と言ったのはロウディ。


 噂とは、勿論、

『年の頃なら四、五十。絶対零度の心を持ち、身体もでかけりゃ態度もでかい。容貌だけは聞かないで、言えたもんじゃありません』

 と言う、歌のようなメイプルの噂のことである。


「所詮、噂は噂さ。それより、どうしてマーブルを知ってるんだ?」

 メイプルがその噂を結構気にしているのを知っているので、クリスは話題を変えた。

「立場上、各地の色んな人物を調査しているからだ」

「ああそう」

 クリスは、マーブルの家系はネオレド王国内で最も歴史が長い、と本人が言っていたのを思い出し、納得した。


ロウディとの会合は長くなったので、前後半にわけました。

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