第3話さあ、みんな大好き保健の授業だ!
この学校に入って2週間たったのにもかかわらず、今現在僕は友達と呼べる人がいない。少ないとかではなく単純にいないのだ。別に人間嫌いとかそういうわけではない。誰にも話しかけず話しかけられなかったのだ。いわゆる1種の鎖国状態というやつである。
中学のときは友達とかそういったものに興味はなく、1人でいる自分が好きだった。でも今は違う。友達がほしい。大人になったんだな僕。成長したのはあそこだけだと思ってたよ、はっはっは。悲しいな。中学のときはこんな風に感じたことはなかった。いやぼっちで悲しくなるのは人間としての正常な反応だ。あそこが大きくなることぐらい正常な反応だ。いつまで僕はしょうもない下ネタをひっぱるんだろうか?自分でも恥ずかしくなってきたな。そうこう考えているうちに1時間目が始まった。
1時間目は保健の授業だ。このしょうもない下ネタを考えてた直後に保健の授業か。これが運命ってやつか。ときめいちゃうな。しまった今僕のことをきもいと思ってしまった。僕は誰にも好かれていないんだ。せめて僕ぐらいは僕のことを愛してあげよう。なんかナルシストへの階段を今1歩上がった気がするけどまぁいいや。
ちなみに保健の授業は僕のなかでは2パターンに別れている。まず前者のパターンは男子のみの保健の授業だ。この場合女子がいないので男子はやりたい放題できる環境になり、男子は発情期にはいる。その結果ホモに目覚めるとかそういことはなく、ただただうるさい。具体的には性器の名前の連発や性行為の体位の名前の連発である。僕個人の意見としてはその程度のことでいちいち興奮するなと思っている。ちなみに僕は興奮などしない。保健の授業は、というか常に僕は日常生活においてクールである。別に僕が普段から卑猥なものを見ているため、そういったことに慣れてるとかではないため勘違いはやめてほしい。僕のファンが減ってしまう。おっと、話がそれてしまった。
そして後者のパターンだ。これは男子女子が共に保健の授業を受けるパターンだ。この場合いわゆる常に羞恥プレイの状態になる。異性の前で性器の名前や避妊具の名前を朗読させられるなど、この僕ですら恥ずかしきことこのうえない。特に今日の授業の部分は性器の名前だけでは飽きたらず、こんどうさんの名前まで朗読させようとしてくるため、かなりの高難易度だ。こういうときには陰キャの特技のいないふりを使うことにより、あてられることを回避することが可能になる。
いないふり発動!僕は机の上でうつ伏せになった。これで将来安泰だ。結婚相手は公務員だ。
「それでは69ページを三条さんに呼んでもらおうかしら。」
艶やかな声と共に、保健の教師が僕ではない生徒を指名する。回避成功!可哀想に。三条さんが誰だかわからないが、まぁ存分に羞恥プレイを楽しんでくれ。達者でな。
「は、はい・・・。」
そのとても弱々しい彼女の声は、僕の後ろから聞こえた。僕は反射的に振り返った。彼女はとても震えていて、それでいて今にも泣き出しそうだった。クラスに1人はいるよね、朗読が苦手な人。多分彼女は朗読がとても苦手で、それに加えてあの卑猥なワード達だ。無理もないだろう。
「えっと、あ・・・。」
彼女は緊張していた。そんな朗読を恥ずかしがる彼女にむかって、他の男子達がはやしたてていた。そして女子からは早くしろよ等といった罵声に近いものをこそこそ言われていた。彼女は孤立していた。僕はなんだか無性に腹が立った。それは違うはずだ。彼女は今、彼女なりに精一杯頑張って朗読しようとしているのだ。それをそうやって・・・。気づいたら僕は顔をあげて席からたっていた。そして手を挙げて
「先生、僕が読んでもいいですか?」
クールに言った。ああ、僕はなにをやっているんだろうか?僕自身が自分に疑問を抱いた。しかし不思議と悪い気持ちはしなかった。