第17話 別れの季節
体の節々というか全体が痛い。なんでだっけ。まあ空がきれいだからいっかな。
「良くないですよ起きてください現実君!。」
「ブルメッフォイ!?。」
誰かにほっぺたを平手打ちされた。いきなり善良な一市民である僕に向かって戦争をしかけてくるとは一体どこの軍事的独裁国家の連中だ?。僕は痛みに耐えながら地面に寝っ転がっていた自分の体をおこしてそいつの顔を見た。
「三条さんか。おはよう今日もいい天気だね。」
「寝ぼけたこと言ってないでしっかりしてください!。」
三条さんにまた平手打ちされた。ボロボロになる僕の体。それはまるで選挙に落ちた無所属の政治家のごとし・・・。だが自分の体と引き換えに前回までの記憶を僕は手に入れた。つまり今はかくかくしかじかという状況だ。
「よし、三条さん別れよう!。」
「ええ!?。」
「いや僕と三条さんの婚約を解消するという意味ではなく、このまま僕と三条さんがずっと一緒に居ると甲子園のソクラテス先生が話を進めにくくなってしまうから一回別行動しようという意味だ。」
「ええっ!?婚約ってどういうことですか!?、ま、まってくださーい!。」
さよなら三条さん。僕は韋駄天のごとく車道を走って行った。
さていつも通り冷静に茶髪に仕返しする方法を考えてみる。女子とラインしたい女子とラインしたい女子とラインしたい。よし、ここは野球部の先輩方に頼ってみようと思う。
「西田先輩ーーー!!!ジョージ先輩―ーー!!!。」
「「呼んだかげんげん?」」
後ろから声が聞こえたので振り向くと高校デビューに失敗したイキリチャラ男と、生れてくる時代のチョイスを失敗した世紀末覇者がいた。うん、呼んだら来てくれるとはなかなかいい先輩たちだ。それにしてもあの二人はそうとう耳が良くて足がはやいんだな。じゃなきゃこんなにすぐにはこれないだろう。さすが高校球児というべきか。そして僕は西田先輩の方を向いた。
「言わなくてもわかるぜげんげん。だって俺とジョージはお前の先輩だからな。」
「先輩という言葉にドラ○モン的ななんでもこなせちゃう万能野郎みたいな意味を含めないでください!。」
「ノリ悪いな―、げんげん。」
「西田先輩はとりえず黙っててください。ジョージ先輩にだけ話しますから。」
「わかった、話してみろげんげん。」
「簡潔に言いますと僕に恥をかかせた茶髪に復讐しにいくんで力を貸してほしいわけです。」
「ふ、復讐は良くないぞげんげん。」
ジョージ先輩らしい真面目な回答が返ってきた。だが復讐の鬼と化した僕の心にはそんな生半可な甘ったるい言葉は響かない。だけどどうやってあの見た目とは裏腹に心優しいジョージ先輩を説得しようか。
「いいじゃないかジョージ。他でもない野球部の唯一の後輩げんげんの頼みだ。悪一文字を背負おおぜ!。」
ここで意外な人からの援軍が来た。たまにはいいこと言うじゃないか西田先輩。これからも敬語を使い続けてやろう。それよりもジョージ先輩を落とすなら今しかないな。
「本当にお願いしますジョージ先輩!!。」
僕も西田先輩に便乗して深々と頭を下げてお願いした。
「わ、わかった。今回だけだぞ。」
ちょろいなジョージ先輩。なんというか俺俺詐欺とかにいとも簡単に引っかかってしまう未来が見えたような気がする。
「で、先輩方。どうやって僕しか見たことがない茶髪を探すんですか?。」
「うーん、どうするんだ西田?」
「とりあえずてきとーにそれっぽい奴がたむろしてそうな場所をあたっていけばそのうち出会えるんじゃね。」
やはり頼る相手を間違えたか。てきとうすぎる。だが僕が他に良い案を持っているわけではなかったので西田先輩の案に対して口出しはしなかった。だが移動手段はどうしよう。徒歩で探しまわるのはなにかと不便だ。
「げんげん。」
「なんですか西田先輩?。」
「ちょっと目つぶって10秒数えて。」
「別にいいですけど。」
何を考えているのかわかったものではないが、深く考えるのもめんどくさいので目をつぶって10秒数えることにした。1途なこの僕の気持ちを、2ーハイが似合う君に、3む空の下から、4れっと伝えようと思う。5年生の時から好きでした!。6ミオとジュリエット。7、8、9、麻布10番。よし数え終わった。僕はなまめかしく目を開けた。
ブルォォォォン!!!!!
目を開けると同時に耳障りな音がする。何かと思えば西田先輩とジョージ先輩がでっかいバイクに二人乗りしていた。ちなみに西田先輩が前だ。身長的には妥当だろう。ていうか二人ともヘルメットしろや。
「ノーヘル上等だぜげんげん。」
「いまさら言うのもなんですが僕の心の中の言葉につっこまないでください。」
「このバイクはハーレーて言うんだぜげんげん!。」
おいおい完全に完璧に艦船にスル―されてしまった。西田先輩のくせに生意気な事をするじゃないか。まぁいい。それより僕はどこに乗ればいいんだろうか。バイクの上は西田先輩とジョージ先輩がいるため僕が乗るスペースは微塵もない。
「早く乗りなげんげん!。」
僕の考えていることなどお構いなしいに西田先輩がバイクの横を指さしながら催促する。ん?指をさしている?。西田先輩が指をさした方をよくよく見てみると小さい車?のようなものがバイクの横についていた。まさかこれに乗れと?。まさかね。ちょっ、ジョージ先輩まで小さい車みたいな謎の物質がある異次元座標に指をささないでー!。
「よっしゃ行くぜww。つかまってまジョージ、げんげん。」
結局乗ってしまった。せめてヘルメットはしたかったな。だがまあいい、これでようやく話が進む、じゃなくて茶髪退治ができるというわけだ。
次回に続くぅ!!