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ep-002 異世界転生じゃ無いです

 真っ暗な世界の中、零は一人呟く。


(あー死んじゃったなぁ、異世界転生だか転移だかは分からなかったけど、せっかくラノベみたいな体験できたのに。あんなすぐに死んじゃうなんてなぁ。それにしても、あの少女なんでいきなり攻撃してきたんだろうなぁ。錯乱してたのかなぁ……)


 しばらく考えていた零はあることに気づく。


(あれ?そういえば俺、なんでこんなに悠長に考え事してられるんだろ……もしかして、連続転生パターン!?なら今真っ暗なのは単に目を閉じているから?よーし、今度は異世界堪能してやるぞー!)


 零は勢いよく目を開ける。


「待ってろ異世界!ってうわぁ!?」


 目を開けてすぐ零が目にしたものは、胸の辺りにナイフが突き立ち、緑の血が流れ続けているゴブリンの死体と、ナイフを突き立てている自分の腕だった。


「え?何?何これ、なんでゴブリン殺してるとこからのスタートなの」


 と、零が疑問に思っていると。


(や、やったっすか?)


 と先ほどの少女の声が聞こえた。


「あれ?さっきのの声?どこからだ?」


(男の人の声がするっす!どこからっすか?)


 しばらく辺りを見回すが、人影は見当たらない。と、零があることに気付いた。


「この声、内側から響いている?」


(なんかおかしいっす!体が動かないっす!)


 内側から聞こえてくるような声に疑問に思った零は、自分の体を再度眺めてあることに気付く。


「あれ?スカート?」


 そう、今彼が履いているのはどうみたってスカート。そのことに頭が混乱し始めた零は、さらにあることに気付く。


「このスカート、さっきの娘が履いていたものにそっくりだなぁ......って、まじで?」


 聞き覚えのある少女の声がして、見覚えのあるスカートがあるこの状態で、別の異世界と判断することは難しい。


「つまり、今の体はさっきの娘のものってことで......まさか、転生先がすぐ近くの少女とか確率的にあるわけないよなぁ」


(なにをごちゃごちゃ言ってるっすか!それよりも私の体が動かない説明をするっす!)


「説明っていわれてもなぁ、俺だってこの状況を全く把握しきれてないんだよ?」


(どういうことっすか?あんたが狙ってやってる訳じゃないんすか?)


「うん。近くの林で目を覚ましたら君の声が聞こえてきて、それで助けるためにゴブリンにタックルして、起きあがった後、君にナイフで刺された事しか知らないよ」


(んん?どういうことっすか?私、男の人なんか見てないっすよ?それに、私がナイフで刺したのはなんか急にバランスを崩して無防備になったゴブリンっすよ?)


「え?どういうこと?なんでそんなことになってんの?」


(知らないっすよ!でも私が実際に見たのはそれっすから!)


「本当どういうことなんだ?これじゃあ俺がお化けか透明人間みたいじゃ……お化け?」


(どうしたっす?)


「お化け……?そうならこれは憑依ってことか?さっきゴブリンにタックルしたときも、追い払ったんじゃなくて体内に入り込んでいた?ってことは?」


(ってことは、なんっすか?)


「俺、もしかしてゴーストかなんかのモンスターに異世界転生してたってこと?なんだぁ、こんなところで転移なのか転生なのか分かるとは。モンスターになるタイプの異世界転()だったとはねぇ」


 一度そう納得した零は、次の瞬間大声をあげた。


「……って!これ生きて無いじゃん!全然『転生』じゃ無いじゃん!死んでんじゃん!なんなんだよこれ!?」


(うるさいっす!イセカイテンセイが何か知らないっすけど、なにか分かったんならさっさと私を解放するっす!)


「ちょっと待って!こっちも混乱してるんだから!憑依した体から離れるには……ええっと……とりあえず、こうか!」


 たぶん幽霊にしか分からないであろう、謎の感覚とともに一つの変化が生じた。零の意思によって体が動かなくなったのである。


「体が動くっす!ということは、あいつは出ていったっすか?」


(ごめん、まだ取り憑いたままみたい)


「うわっす!?なんすか、まだいたんすか」


(どうにも体の操作権とかその他諸々が移っただけっぽいね、憑依を解く方法がちょっとわからないや)


「ならどうするんすか」


(色々試行錯誤して頑張ってみるから、その間一緒に居てもいい?)


「うーん、あまり良くはないっすけど、離れられるようになるまではいいっすよ」


(そう、ありがと)


「まぁ、私もしばらく歩くっすし、話相手ができたと考えればいいんすかね」


(じゃあ、これからしばらくよろしくね)


「よろしくお願いするっす」


 こうして、人間と幽霊の奇妙な旅は始まったのだった。

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