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ep-001 異世界転生かもしれないです

「うう、ん」


 爽やかな風に吹かれながら目を覚ます。


「車は……どうなったんだ?というかここは?」


 零のいた場所は、先ほどまでいたはずの街中ではなく、どこかの林の中。


「もしかして、俺拉致られた?いや、それにしては、最後の記憶にある車がこっちに突っ込みすぎてるような気がするんだよなぁ。あれだと、あそこから曲がっても巻き込まれるような......」


 零はなにかに気づいたかのように顔を跳ね上げると、


「もしかして、異世界転移!?」


 と叫んだ。


「いやでも、シチュエーション的には車に轢かれた感じだから異世界転生か?」


 ぼそぼそと独り言をしながら、現状を整理していく。考えに詰まった零はとりあえず自分の体を眺めだす。


「胸は無いなぁ、ってことはTSでは無いのかな?いやでも、ぺったんってこともありえるな。なら、確かめる為には......」


 ごくりと唾を飲んだ零はズボンに手をかけていく。


「確認するため、確認するためだから」


 緊張した面持ちでズボンのベルトを外そうとした瞬間。


「―――――!!!」


 とかすかに女性の叫び声が聞こえた。


「す、すみません!つい出来心で......って、違う。ここじゃない!林の外で聞こえた!」


 零は跳ね上がると声の聞こえた方へ走り出す。


「女の子は!?」


 辺りを見回すと、叫び声をあげている少女がなにやら薄汚れた子供らしき者に襲われている。

 子供は手にこん棒を、少女は手にナイフをそれぞれ持っていたが、少女の方は腰を抜かしているようで、動くことすらままなっていない状態だった。


「くっ!間に合え!」


 急いで走る零、とそこで零はあることに気づく。


(子供かと思ったあのちっちゃいやつ、人間じゃない!?もしかして、本物のゴブリンなのか!?)


 ゴブリンは、手に持ったこん棒を少女に向かって振り上げる。


「あぁ、もう!うああああああ!」


 零は目をつぶりつつ、やけくそ気味にゴブリンにタックルをした。


 何かに当たったような感触、タックルの勢いのまま地面に倒れこむ。ごつりと地面に頭を打ち付けたような衝撃に零の意識は途切れてしまった。


 ▽ ▽ ▽


(女の子は!?ゴブリンは!?)


 がばりと起き上がった零。辺りを見回すがゴブリンの姿は無い。


(よかった、どこかに行ってくれたのかな)


 零は少女に、大丈夫だったか聞こうと振り向いて。


 ぐさり、と心臓を一突きされた。


(え?どういうこと?)


 疑問が尽きないままに、意識が薄れていく。視界が完全に真っ暗になる前に見た自分の腕が、なんだか薄汚れていたように零は感じた。

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