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ep-011 あれ?俺今回喋ってないですよね?

「なーんか、待った割にあっさり終わったっす」


 またも、兵士に連れられて絢爛豪華な通路を歩きながらイブがそう呟いた。


「ははは、すみません。確かにぱっと光るだけだとそんな感じにもなりますよね」


「まったくっす。ところで、私はどこに案内されてるっすか?」


「今は他の勇者様の所へ案内させていただいております」


「あ、そうっすか。先に顔合わせして、その後で王様と会う感じっすかね」


「いや、はは、すみません。王様とはお会いできません」


「そうなんっすか?てっきり謁見とか、何か堅苦しい事でもしなくちゃならないのかと思ってたっす」


「実を言いますと、魔王が復活する頃になると、勇者の証を持った人も少なからず産まれるようになりまして……多い時には月に二桁いくかいかないか位には勇者様が訪ねてこられますので、その一人一人が王様に謁見するとなりますと準備やら警備やらが厳しく……ですので十全に支援はいたしますが、王城に勇者様をお泊めしたり、食事を振る舞ったり等はしないという事になっているのです」


「なるほどっす、まぁそれならそれで良かったっす。王様に謁見とか、会食とか、無い方が楽っすからね」


「そう言っていただけると幸いです」


 そんな話をしていると、少し大きめの扉が見えてきた。兵士は、その扉の前に立つと、コンコンと扉をノックしてから。


「失礼します」


 そう告げて扉を開けた。


「ブレイ様、もう一人の勇者様をお連れしました」


 先ほど待機していた時の部屋より少し広い、そこらの家のリビング程はある部屋に、年若い一人の男が座っていた。

 ブレイと呼ばれたその男は、険しい目付きでイブの方を睨んでくる。


「えっと、なんっすか?」


「どう見ても戦えそうにないが……お前、魔法でも使えるのか?」


「いや、魔法は使えないっすけど。それがどうしたっすか?」


 イブがそう尋ねると、ブレイは軽く失笑した。その後で更に威圧感を強くする。


「『それがどうした』だって?もしギャグだとしたら笑いすらおきないぞ?戦う力の無いやつが勇者なんてやるなって言ってるんだ」


「そんなこと、別にあんたに言われる筋合いは無いっす。こっちはこっちで、理由があって勇者になりに来たっすから」


「あぁ、そうかい。ま、勇者がやりたいなら無理して止める気はない。俺の見えない所で好き勝手戦っててくれ、ただし俺の邪魔をするのは許さない」


「言われなくてもそうさせてもらうっすけど」


「ということで兵士さんよ、見ての通り俺はこいつと組む気はない、早くそのお供っての連れてきてくれないか?」


「あ、はい。かしこまりました」


 兵士さんが、慌てて廊下へと出ていく。二人きり(零も入れれば三人だが)の静かになった空気に、ぴんと緊張の糸が引かれているようだったが、先ほどの兵士とブレイの会話が気になったイブは、ブレイに声をかけた。


「そういえば、組む気はないとか、お供ってのは一体何のことっすか?」


「……何も聞いてないのか?まぁいい、勇者は魔王を倒す可能性を持つもの、ここまではいいな?」


「そうっすね」


「その可能性はもしかしたら単騎で魔王を倒すという可能性かもしれないし、大軍を率いて魔王を倒すという可能性であるかもしれない。もしかしたら事故で魔王を倒すという可能性もあるのかもしれない」


「倒せる可能性(・・・)があるってだけっすもんね。どういう倒し方かは分からないっすよね」


「だから、勇者が魔王を倒すという可能性を増やすためにも、勇者同士が協力することは推奨されている」


「それで、『組む』っすか。……って、推奨されてるのにあんたは私を蹴ったっすか」


「戦えないやつは俺の仲間にはいらない、魔王を殺すのはこの俺だ」


「そうっすか。じゃあ、お供ってのはなんっすか?」


「単純に、国が勇者を手助けするっていう支援のうちの一つだ。前衛の兵士一人と、回復職を一人着けてくれるらしい」


「なるほどっす」


 そんな話をしていると、コンコンと扉が鳴ってぞろぞろと部屋に人が入ってきた。


「それじゃあ、ブレイ様、イブ様、この中に仲間がいないかお探しください」


 兵士がそう言った人の中に、キュヒールの姿があることに、イブは気づいたのだった。

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