そのいち
ボクが小学2年生だった頃、じぃちゃんが猫を拾ってきた。
その日は朝から晴れてはいたけど空一面に淡い雲が広がっていて、雨がさらさらと降ってるような変な日だった。
ボクは拾われてきた猫よりこの変な天気の方がよっぽど気になっていたが、じぃちゃんがしきりにボクを呼ぶので走りよっていった。
じぃちゃんの腕の中を覗き込むと小さく黒い物体がぎゅぅっと身を丸めていた。
ボクはなんとはなしにその猫をじぃーと見つめていたが、不意にしっぽがボクの方を向いてふりふりと揺れた。えっ?と思った。
頼りなくボクの目の前で揺れているそのしっぽの先が2つに分かれていたからだ。
ボクは驚いてじぃちゃんの顔を見たがじぃちゃんは優しい笑顔をボクに向けるのみだ。
今思えばあの頃のボクと同じ子供ような目をしていたように思える。
ぼくは慌ててもう一度そのしっぽを確認したがいつのまにか元の、いわゆる普通の、当たり前の猫のそれだった。
ボクは訳がわからなくなりむむーっと唸ったその刹那、猫がひとつにゃーんと鳴いた。
どこからともなく甘い薫りが流れ込み、ボクとじぃちゃんの頬をふぅわりと撫で、開け放っていた窓から空に舞い上がっていった。
見上げた空はすでに雨が止んでいて、虹が架かっていた。