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第1話 卒業。そして旅立ち

「「あお〜げば〜とお〜とし〜♪」」


まだ少し寒さが残る3月初旬。今日は私立如月高校の卒業式。


 俺の名前は新見新一。身長178㎝、体重70㎏のそれなりに筋肉質で運動全般に万能な体型である。本人としてはそんなに悪くはない容姿という認識ではあるが、それなりに女子からは人気があり、ラブレターや女子からの告白なんかも何回か受けている。


 ただ俺が女子から人気なのには、イケメンというだけでなく、秀才であり運動神経もよく、性格も良いといった欠点という欠点がない点もあるが、何よりもお金持ちであるということが玉の輿狙いの女子などから言い寄られる理由と言えるだろう。


 俺は小学生2年の時に両親が交通事故に遭い、この世を他界している。そこからじいちゃんとばあちゃんが面倒を見てくれているのであるが、このじいちゃんとばあちゃんというのが、世界でも類を見ない偉人なのである。


 じいちゃんの名前は新見団十郎。ばあちゃんの名前は新見トネ。じいちゃんは化学者でばあちゃんは科学者である。この2人の発明品が世界に衝撃を与えることになった。


 じいちゃんが発明したのは、(がん)の特効薬。これまで癌に対する治療法はあったが、やはりなんだかんだと致死率の高かい癌もじいちゃんの発明した薬を飲むことで頭痛薬を飲んで頭の痛みが消え去るかのように綺麗さっぱり癌細胞を取り除き、次の日は何事もなかったかのように治すことが出来るようになった。


 ばあちゃんが発明したのは、永久電池。名前の通り永遠に電気を発すること出来る電池である。もちろん充電の必要もない訳で、とんでもない発明品である。


 こんな発明をしたじいちゃん・ばあちゃんは当然世間で有名人であり、長者番付でもぶっちぎりの1位で大金持ち。家も大豪邸であり、その親族にあたる俺の財産もとんでもないものな訳だ。



それはさておき・・・


 卒業式も終わり、俺は同級生の女子や後輩の女子にもみくちゃにされながら、なんとか校門までたどり着いた。


「シンジ(・・・)」


 シンジっと呼びかけるのは、俺の幼馴染みの西島樹(にしじまいつき)。髪型はショートカットで少し髪が日焼けをして茶髪がかっている。体型はスレンダーで陸上部短距離のエースだ。性格は明るく、美人なことから学校内で彼女にしたいランキングナンバー1だ。


 ちなみに俺がシンジと呼ばれるのは、苗字と名前の新が二つあるからだ。そして


「よう、新見」


 俺を苗字で呼ぶもう一人のシンイチである佐藤伸一(さとうしんいち)。身長190㎝の長身でイケメンヤロー。バスケ部ではキャプテンをしていた。まあ頭の方は中の下であったが、性格もまっすぐな奴でみんなからは慕われている。


「にぃにぃ~」


 そして最後に俺のことをあだ名で呼ぶのは、鈴木桜(すずきさくら)。身長は150㎝ぐらいの小柄であるものの出るとこは出ていて、かわいいキャラとしてオタク男子からは絶大な人気だ。


「おぅ~。みんな無事か?」


 俺たち、男二人女二人の4人組みは、全員が共通して学校でも人気者の集まりな訳で、卒業ともなれば全員が校門にくるまでにもみくちゃにされていた。


「でも、シンジが一番大変そうだったね」

「まぁな。俺の場合、生徒だけじゃなくて保護者とかからも何かとつかまっちまうからなあ」


 俺の家に対して、少しでもおこぼれや良い関係を築こうと、孫の俺にまで手を掛けてくる大人は後を絶たない。そんな俺に佐藤が肩に手をやり、何か情けをかけるように他人事として言ってくる。


「そこは新見だから仕方がない」


 正直、俺もあきらめていたりするわけだが、しかし俺にお願いしたところで本当にどうしよもないのにと常々思っている訳だが・・・

 俺は改めて3人の顔を見ながら、


「なぁ~、おまえら本当にいいのか?」

「うん」

「ああ」

「いいよ」


 3人共、すがすがしく返事をしてくる。


 なにはともあれ俺が全員に確認したのは、俺たちは今日から異世界を探す旅に出ることについてだ。


 俺たち4人組みは別に幼馴染とか美男子美女で仲が良くなった訳ではない。


 俺たちには共通の趣味がある。それはネット小説なんかで良くあるラノベ小説大好きコンビだ。


 学校では体裁を保ってはいたが、俺たち4人はラノベ中毒と言ってもいいほど、集まってはあのラノベが面白いとか、あのラノベの続きまだかなぁ、続きどうなるのかなぁ~、みたいな話題でいつも盛り上がっていた。


 しかし、さすがの俺たちも異世界の存在なんてものは完全否定はしないものの、あくまでも小説の中だけの世界であり、あったらいいのになぁ~と妄想するぐらいであった。





 そんな俺たちが異世界を探す旅に出ることになったきっかけは、俺たちが中学2年生のとき、いつものように俺の部屋で集まって、ラノベの話をしているときだった。


 そこへ俺のじいちゃんとばあちゃんが部屋に入ってくるなり


「異世界はある」

「「「「えぇ????」」」」


 当時中学生であった俺たちは、そんなじいちゃんの宣言に驚いたものの、その時にはすでに世界でも偉人であったじいちゃんが発言したことにより、「もしかしたら」なんて思ってしまった訳だが。


「何言ってんだよ、じいちゃん。そんなわけ・・・」

「新一。おまえは異世界がないという証明が出来るのか?」


 疑う俺をじいちゃんはまっすぐ見つめ、真剣に質問してきた。


「いや、それは出来ないけど」

「そうじゃろう。いいか新一・・・」


 こうしてじいちゃんの『異世界はある理論』の解説が始まった訳だ。


 まず『異世界』と言われる単語がある時点でそれは存在する可能性が高いということ。


 また、『異世界』の話を作った発端となった人間はどこからその発想が出来たのかという点や世界での行方不明になっている人の存在など、『異世界』という世界がある可能性の方が高いと思われる事象がたくさんあるという点だ。


 そして、俺が一番納得したのは、「今はないかもしれないが、その内あると証明されるか、もしくは誰かが作る可能性は大いにあるのじゃよ」と言うじいちゃんの結論だった。


 確かに今は証明できないかもしれないが、それを証明する人間が出ることやよく小説なんかにある剣や魔法のファンタジーな世界を作ってしまうことの出来る人間が出てくるかもしれないという考えは正しいと思う。


 そもそも俺のじいちゃんやばあちゃんは、それを体現してきた人物なのだ。


 さらにじいちゃんがその時に言った最後の言葉が


「わしらで証明してみるか?」


 という誘いの言葉であった訳で、当時の俺たちはその気になり、ウキウキしていた。




 それから5年経ち、じいちゃん・ばあちゃんの異世界探索のための準備も完了し、俺たちは高校を卒業するとともに旅立つことになっていた。


 俺はじいちゃんとばあちゃんが保護者な訳で特に問題ないのだが、他の3人は大丈夫なのかと思っていたが、そこは俺のじいちゃんとばあちゃんのクオリティにより、3人の両親は快く送り出してくれるらしい。


 それが本当なのかはこの際どうでもいいのだが


 しかし、これだけは言っておきたい。俺たちはこれから『異世界』に行けるかどうかはまだわかっていないのだ。あくまでも探す旅なのだから。





「よしと、全員揃ったし、俺んちに向かうとしますか」


 俺たちは学校を出てそのまま俺の家に向かった。


 俺の家は、学校から徒歩5分といったところだが、学校よりも広い敷地であり、門から住居までが5分もある。


「やっぱり新見の家はとんでもなく広いな」

「はは」


 俺はあらためて自分の家の広さに呆れ、苦笑いを返していた。


 そんな会話も交えながら、俺たちは家に到着し、扉を開けた。


「ただいま」

「しんちゃん、おかえり」


 それを出迎えてくれたのは、自動車の整備する人のようなつなぎ姿のばあちゃんだった。


 ばあちゃんは俺のことを未だにしんちゃんと呼ぶ。正直もうやめてほしい年頃なんだが、ばあちゃんは一向にやめる気配はなく、あきらめている。


 ばあちゃんは樹・佐藤・桜の顔を見て


「みんなもおかえり。早速だけど、準備はいいかい?」

「「「はい」」」


 ばあちゃんはそれを聞くとおもむろにポケットからなんかの薬みたいなカプセルを取り出した。


「じゃあ、まずはあんたら、これを飲んで。あたしらはすでに飲んでるから安心していいよ」

「ばあちゃん、これって何の薬?」


 ばあちゃんは俺の顔を見て、何か含みを持った笑顔を向け


「まあ、それは飲んでからのお楽しみよ」


(怖ぇ~)


 俺たちは各々そんな感想を持ったことだろうが、ばあちゃんからそれぞれ薬と机に用意されていた水の入ったコップを持ち、恐る恐る薬を口に入れ、一気に水を飲みほした。


「それでばあちゃん、いったい何の薬だったんだよ」

「ふむ、不老の薬だよ。じいさんのお墨付きだから」

「ふ・ろ・うって、不老?。えっ、もしかして俺たちこれから歳とらなくなるの?」


 ばあちゃんは、「何をそんな当たり前なこと言ってんだ」みたいな反応をされたが、だって「不老」だよ。そんな薬、おとぎ話じゃん。


「あんたら、これからどこに異世界を探しに行くと思ってるんだい。宇宙だよ。どこの惑星を探索するかもわからないし、いったいどれだけ距離が離れてると思ってるんだい。不老じゃなきゃ、いっけこないでしょうが」

「まあ、宇宙っての聞いていたんだけど、そんなに何年もとは」


 ばあちゃんは急に笑い出し


「あんたら、何年ぐらいで行って帰ってこられる程度なら、当に異世界なんか見つかってるわよ」


 ばあちゃんは上を向き、何かざっと計算しているように腕を組みながら


「まあ、少なくとも何千年って単位だと思って」


 ばあちゃんはそういうと、振り返り地下にある研究室の階段に向かっていった。


 それを聞いた俺たちは顔を見合わせるも、薬を飲んでしまったこともあり、あらためて覚悟を決め、ばあちゃんの後ろに続いて、地下にある研究室に向かうのであった。




 さらっと流してしまったが、異世界の場所としてばあちゃんが出した結論は・・・『宇宙』であった。


 異世界が異空間にあるかもしれないが、異空間にどうやったら行けるかわからないため、まずは宇宙船で他の惑星や銀河系に異世界のような惑星がないかを調査するらしい。


 宇宙を探索するってのはざっくり説明を受けていたが、まさか何千年も掛るものだとは思っていなかった。





 ばぁちゃんの後を追い、階段を降りながら俺たちは研究室とは名ばかりの学校の運動場ぐらいはある大きな地下室に来ていた。そこにはばあちゃんが手塩にかけて作った宇宙船『ユグドラシル』が存在感をアピールしていた。


 宇宙船『ユグドラシル』は、先端がとんがっており、クリスマスツリーを横に倒したような形をしている。全長は約100m。幅は後方部で約40m。木のように枝が分かれて、それぞれにいろいろな部屋がある作りをしている。それぞれの部屋は広いところでちょっと大きめの体育館ぐらいあり、狭い部屋でも10畳ぐらいの広さのあるものが30部屋ぐらい。大小様々な部屋はざっと合計で100部屋ある。


 俺たちは宇宙船『ユグドラシル』を別に初めて見る訳ではない。高校を卒業するまでにすでに何回も通っており、こんな部屋がほしいやら誰がどの部屋を使うなど、ばぁちゃんはその要望に出来るだけ応え部屋を準備していたのだ。


 俺たちは早速、宇宙船『ユグドラシル』に乗り込み、各自の部屋に前々から準備してあった私服に着替え、リビングに集まることになっていた。リビングはザ・お金持ちの様式になっている。


 リビングの机に俺を含めた6人が集まり、全員が席に着いたところでじいちゃんより今回の宇宙探索の説明がされた。


「まずは、新一を含めみんな卒業おめでとう。今からわしらは宇宙に旅立つ訳じゃが、船に乗る前に飲んでもらった薬でわかるように、長い旅になるじゃろう。この宇宙船『ユグドラシル』には新しい情報は入ってこないが、わしとばあさんで基本的には何でも作ったりしていくつもりじゃ。また、今日までに世界にある情報はすべてばあさんの作った『マザーコンピュータ』に記憶されておるから、船にあるパソコンから探したい情報などあればそれで探すのも良い。まあ果てしなく長いことじゃから、これからよろしく頼むのじゃ。では、出発進行じゃ~」



 こうして俺たちの異世界探索旅行が始まった。


 




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