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森の家

作者: 朔夜

初投稿です。


誤字、脱字があったら教えてください。

暗い森の中、森の深い場所に場違いな家が一軒建っていた。


「先生ー!」


周りの森の様子とはかけ離れた明るい声が響く。


この家は様々な子供達が種族の壁を越えて住んでいる家。


その家の主は
















「先生!」


そう私を呼びながら腰に抱き着いてきたのは、獣人の虎族である男の子。


「どうかしましたか?」


聞き返すと男の子_テオは、


「僕ね!先生が言ってた魔法使えるようになったんだよ!」


そう言って両手を前に出し、手に魔力を集め始めた。


「【火よ来れ】!」


テオが詠唱すると両手の間に小さな火が生まれた。


「はい、よく出来ました」


そう言ってしゃがみ、テオの《青い髪》を撫でると、


「えへへ〜」


ふにゃりとした笑顔になるともっと褒めて、と言わんばかりに抱き着いてきた。


頭を撫でながらテオが来た頃を思い出していた。






テオがこの家に来たのは今から半年ほど前でした。


テオは、家の周りの森で魔物に襲われていたところを見つけ保護したのですが、


「こっちにくるな!」


他人を信用していませんでした。


理由は予想できます。


テオは虎族の子供ですが、虎族から《青い髪》の子供は普通は産まれません。


虎族はそのほとんどが金髪や白い髪、珍しいところで赤髪です。


その事からテオは虎族の村で腫れ物を触るような扱いを受けていたと思われます。


そして森に捨てられたのではないか。


それが私の予想でした。


「私を信用しなくても構いません。

ですが、あなた1人でこの森で生きていく事は不可能です。

なので、私の家に来なさい。

そこで生きる術を教えます。

それから家を出ていっても構いません。

本気で嫌ならば無理にとは言いません。

ですが、あなたは確実に今日中に死にます。


どうしますか?」


私は森で出会った子供達には基本的に保護をしています。


けれど、その中にはテオの様に他人を信用していない子もいるので、私はわざとこの様に言います。


この問いかけは選択の余地がないもので、子供達は従うしかない。


嫌われても構わないのでとにかく、子供達を安全な場所に連れて行く事が目的なので仕方ないと割り切っています。


テオは、かなり渋々といった感じで私のあとをついて来ました。


家に着いたあとは他の子供達にテオを紹介したあと、体を綺麗にするように頼むとテオをお風呂へ引きずって行きました。


その直後お風呂場からテオの悲鳴が聞こえましたが、この家に来た恒例行事なので特に気にしませんでした。


このあとが大変でしたし。






「先生!、あの子がいない!」


そう言って部屋に入ってきた子の話を聞いて溜息と共に呆れた声をこぼしました。


「またですか…」


青い髪の男の子はよくどこかへ行ってしまう。


「どうしよう…森に行ってたら…」


「その心配はいりませんよ」


「え?」


その子の考えを即座に否定し、言葉を続ける。


「あの子は外に行く力がありません。

敷地のどこかにいますよ。

私が探しておくので家事に戻って大丈夫ですよ」


「分かった!」


そう言ってきた時と同じようにかけて戻って行くのを見送り、部屋で読み聞かせをしていた子供達に外で遊ぶように言うと新しくきた青い髪のあの子を探しに行きました。






「…………なんで場所が分かるんだよ………」


そう言いながら私を睨みつけるのは明らかに不機嫌だと分かる青い髪の男の子。


「この家は私が創り出した家ですよ?

子供達が敷地内のどこにいるかなんてすぐに分かりますよ。

ほら、早く戻りますよ」


そう言って木の枝に登った男の子に手を差し出します。


「嫌だ!」


「我が儘を言わないでください。早く降りて来てください」


「絶対に嫌だ!!」


そう叫んでさらに上に行こうとする男の子。


足をかけている枝の不安定さを気にせず登ろうとしていた。


「待ちなさい!」


「やだ!!」


私が怒っていると思ったのか、さらに意地になって上に行こうとするのを止めようと声をさらにかける。


「違います!危ない!!」


そう叫んだ時には男の子の足が乗っていた枝が折れました。


「え……」


気づいた時には男の子は宙に浮いていました。


「っ…!!」


反射的に木の下へ走りより、男の子を受け止めました。が、続いて折れた枝が降りかかってきました。


咄嗟に男の子を胸に抱き込みました。


落ちてきた枝が頭に当たりましたが、そんな事を気にしている場合じゃありません。


男の子を地面に下ろし、


「大丈夫ですか?ケガは?痛いところはありませんか?」


立て続けに質問を重ねる私を呆然と見る男の子。


「やはりどこか痛みますか?

【光よ来れ、求むは癒しの光、ヒール】」


痛みからまともに話せないのかと思い、回復魔法を使うと、


「……なん……で……」


「どうかしましたか?」


小さく呟いた言葉は聞こえず聞き返すと、


「なんで自分に使わないんだよ!僕なんかより自分の方がケガしてるだろ!なんで………な…ん……で……………」


最初叫んだと思ったら段々と声がしぼんでいきます。


「……なんで……優しくするんだよう………」


弱々しく吐かれたのは男の子の本音。


その呟きに苦笑しながら、


「ダメですか?」


そう聞けば男の子は、堰を切ったように叫びました。



「だって!

今までこんなふうに!

優しくしてくれる人なんていなかった!

いっつも!

酷い事しか言ってこなかった!

母さんも!

父さんも!

優しくしてくれなかったのに!

なんで!

なんで追い出さないんだよ!

なんで優しくするんだよ!

なんで!!

なんで僕を助けるんだよ!!」



そのまま大声で泣き始めました。


その様子を見て、この子の本音を聞く事ができた事に安心しました。


泣きじゃくっている男の子を抱きしめ、小さな頭を撫でながら優しく話しかけました。



「これが私の普通です。

大切な子供を助けたいのです。

守りたいのです。

そして、笑っていて欲しいのです。

その為なら私は自分の事を犠牲にしても構いません。

あなたは今まで頑張ってきました。

けど、この家ではただの子供です。

ここであなたの事を悪く言う人はいません。

もう、気を張る必要は無いのです。

だから、


思う存分泣いても大丈夫ですよ」



その言葉が決め手となったのか一層大きな声で泣きじゃくる男の子。


私は泣き止むまでずっと抱きしめ、頭を撫で続けました。






どれくらいそうしていたかは分かりませんが、やっと落ち着いたのか泣き腫らした目を擦りながら小さな声で、


「…ごめんなさい……」


そう謝ってきました。


「気にしなくても大丈夫ですよ」


そう笑いながらいえば、


「でも!ケガして……」


また泣きそうな顔で私のケガを気にする男の子。


「それも大丈夫です」


そう言ってこめかみを流れていた血を袖で拭うと、


「ほら、もう血も止まっていますし」


そう言ってケガをした場所の髪をかきあげると、男の子はまじまじと場所を見て、


「よかった………」


そう言って脱力して私に倒れ込みました。


「でも、僕ここにいていいの?」


「?何故そんな事思ったのです?」


呟きにそう返せば、


「だって……僕、気持ち悪いとか、異端だとか、忌み子だとか言われてたから……」


ボソボソと今まで言われてきたであろう言葉に、


「そんな事気にしなくて大丈夫ですよ?」


「え?」


そんな事、と言われたのが余程以外だったのか目を丸くしながら私を見つめ返す。


「この家にはそれぞれの種族で似たような事で森に捨てられていた子供達ばかりですよ?」


そういえばさらに目を見開き驚いていた。


「それにあなたのその髪はおかしくないのですよ?

あなたのその髪の色は200〜300年に1人産まれるか産まれないかぐらいの珍しい髪の色ですよ?

さらに詳しく言うならば、獣人は総じて魔力が少ない代わりに身体能力に秀でていますが、青い髪を持つ虎族は他の獣人と比べると何十倍もの魔力を持つ証拠ですよ?

ですから、あなたは祝福された存在ではありますが、決して忌み子ではありませんよ」


続けてそう言えば男の子は固まって動かなくなりました。


ああ、やっぱりこうなるのかと思いながら男の子が動くまでしばらく待っていると、


「ええ??!!!」


大声を出して騒ぎ始めました。


「え?!なんっ!どう?!ええ?!」


かなり混乱しているようで、言葉になっていません。


それでも辛抱強く待っていると、ようやく落ち着いたのか私に、


「なんで知ってるの?」


そう酷く混乱した様子で聞いてきました。


まあ、そうなるだろうとは予想していました。


何故なら、獣人は基本的に何かに書いて出来事を残さず、口伝がほとんどです。

仮に残していたとしても部外者に見せるような事はしません。


なのに何故私が知っているのが不思議なのでしょう。


別段隠すような事でもないので素直に、


「会った事がありますからね」


そう言えば、


「……………………………………………え?」


そう呟き固まってしまった。


今日はよくこの子は固まるなあ。なんて思いながら、流石にこれ以上ここにいる訳にもいかず、


「さて、そろそろ戻りましょう」


そう言って男の子の手を取り、家に向かって歩き始めると、男の子は覚束無い足取りでついてきました。


その様子に苦笑しながら家の前で待っている子供達の元へ近づきました。


「その子大丈夫?」


子供達の中からそんな言葉が出てきて、


「私の事を話したらこうなりました」


苦笑しながらそう言えば、皆一様に納得したように頷くと、


「まあ、初めて聞けばそうなるよね……」


「これも1個の恒例行事になってるよね…」


「そのうち気づくと思ったけどね……」


そう口々に言いました。


「お願いしても大丈夫ですか?」


そう子供達に聞けば、頷き男の子を連れて家の中に入って行くと、



「ええええええっっっ!!!!????」



男の子_テオの叫びが敷地内に木霊しました。






その後、テオは今までの態度を改めて真面目に手伝いをするようになり、私から魔法を学びたいと言い出した。


その要望に私は丁寧に魔法を教え、テオには火属性の適性がある事が分かり、その初歩を教えている所で今にいたる。


「先生どうしたの?」


テオと会った頃の事を思い出していたと素直に伝えると、


「……忘れてよ………」


何故と聞き返せば、


「だって……あの頃先生に酷い事いっぱい言ったから………」


その答えに思わず笑ってしまうと、


「笑い事じゃないのに!」


ごめんなさい、と笑いながら言えばすねたように、


「むぅ〜〜」


頬を膨らませて怒ったようにしている。


その様子を見て、次の魔法を覚えましょうか、そう言えば、


「ほんと!?」


すぐに機嫌が直り早く早くと急かす。


その様子を見て、自然と笑顔がこぼれるのが分かった。



「テオ」



そう名前を呼べば、キョトンとした様子で、


「なに?」


そう返事を返す。


そんな些細な事すら嬉しく思えて幸福感が溢れてくる。


テオに、

本来の家族から与えられなかった愛情を、

私の与えられる最大限の愛情をあなたに。











「あなたを愛していますよ」
















暗い森の中、森の深い場所に場違いな家が一軒建っていた。


「先生ー!」


周りの森の様子とはかけ離れた明るい声が響く。


この家は様々な子供達が種族の壁を越えて住んでいる家。


その家の主は、


先生と慕われるとても優しいヒト

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