1パート
ワープゲートを抜けると驚くほどに穏やかである小さな村についた。
「ここが初代魔法少女ヒカリの時間。いろいろと聞きたいが過去の世界だし話しかけるのはだめか。」
「いや、いいよ。話しかけるくらいなら。ただ今の時間の人と恋仲になるとかやめてね。あとから調整が億劫だから。」
「わかった。」
二人は歩いていると花は咲き、森は穏やかな風を作り出していた。
大きめの家から話し声が聞こえた。
「そうか。お前の妹が選ばれてしまったか。気の毒にな。」
「なんとかなりませんか。こんな事を繰り返していたら何度も悲しみが繰り返されます。」
「しかし、ラセツがこの村を襲わないようにするために必要なことなのだ。」
「なぜ、私の妹なんですか。とてもいい子なのに。手のひらの上に紋章が浮かんだ時のあの子の表情が今でも頭に焼き付いていて離れない。」
「しかし、君の妹が犠牲になれば50年はラセツに襲われなくて済む。君の妹はとても意義深い事をするんだぞ。」
「そんな意義なんていりませんよ。私はただ妹と穏やかに暮らしたいんです。」
雄介とヨモツは聞き耳を立てていた。こそこそと2人で話した。
「私達の世界だけじゃなくあなたの世界にもラセツがいたんだ。」
「50年おきに人が犠牲になり、ラセツが襲わないという事で平和を手に入れていたんだ。」
「それであの人の妹が次の犠牲に…かわいそうに。」
「それで50年平和になると言われたとしても妹だものな。納得できるわけがない。」
「それで、妹さんを助けるために初代の魔法少女ヒカリになるのかな!」
「そうかもしれない。」
こそこそと話している途中でさらに村人の声が中から聞こえた。
「方法がないわけではない。」
「妹を助ける方法があるのですか?」
「鬼だ。」
「鬼ですか?」
「鬼の力を身に着け、ラセツを倒せば。」
「なんてことを…鬼になるだなんて。」
「鬼ってなんなんです。」
「伝説上の生き物だ。さまざまな言い伝えの中で生きている。しかし、鬼はひっそりと生きている。自らを鬼とし、ラセツと戦えばおそらくは…」
「しかし、鬼になるということは人間じゃなくなるということではないのですか。」
「そういうことだ。人間に戻れるかどうかもわからない。」
「そんな危険な賭けに出る人なんて…」
「私はなります!鬼に。」
ずっと泣いていた女の人が立ち上がった。
「わずかでも可能性があるのなら私はそれにかけたい。何もせずに妹が犠牲になるのをみているなんてそんなの耐えられない!」
「そうだよな。」
ヨモツが小さく同意した。立ち上がった女性とヨモツ自身がかぶった。その苦しみや思いがとても理解できた。
「あの女の人は初代の魔法少女ヒカリじゃない。あの子こそが般若だったんだ。」
「優しそうな子…あの子が般若になるだなんて信じられないけどね。」
「未来の般若…。」
「あの子、船に乗るみたいだよ。」
「船?あの子どこへ行くんだろう。」
「話しかけるしかないかな。」
「自分が行くと多分警戒するだろうし君が頼む。」
「わかった。」
ヨモツは女の人に話しかけた。相手は警戒することなく話している。大したものである。手招きをするので雄介も合流した。
「陸奥へ行くんだって。」
「どこだかわからないんです。」
「陸奥ってかなり大きいぞ?」
「なんだかラセツを追い払うところがあるんだって。」
「三ツ石神社の事だな。ということはこのあたりだ。」
「おお!ありがとうございます。」
女性は丁寧に礼をして走って行った。
「自分もヨモツさんの意見に賛成だ。とても般若になるだなんて思えない。」