桜
それは、舞い散る花弁のような散華、美しい、と禍炎は、素直にそう思う。”神宿る”と名づけられた、その巫女の闘いは、かくも美しい。あの醜い魑魅魍魎をして、美しさをここに現出させる程には
鬼、それは言の葉の澱、巫女とはその事の端の檻を砕く剣、故にともに語らず、ただ出会った瞬間に共散らすのみ。
隔夜とその巫女が、身振りで呼ぶ、いつも通り、呼ばれた少女が名の通りに夜を隔し、禍炎が、隠をその神火で焼く
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夜の闇が日の光に押し戻される直前、女は目を覚ます。質素な造りの部屋の中、その中で女性の存在だけが他を圧して存在していた。
珠のような肌とつややかな黒髪を清流で清めると、長の元へと趣く、下げられたままの頭の向こうから下知が届く、それに疑問も抱かずに彼女はその場に趣き、この世の穢れ、すなわち鬼を滅す。それが、桜という名の巫女の役目、上の者は穢れがうつるからと彼女に触れず、言葉すら鬼に触れると封じられ、下の者は、あまりに神々しい姿に臆し、彼女に触れる事すら叶わず。
それが、その才を見いだされた少女であった。人に囲まれ、それでも彼女は、あの炎の刻より一人、とどまったままであった。




