惑乱
闇から伸ばされた巫女と鬼の手が絡み合い、神鳴が、炎の腕が撃ち交わされる。
巫女のその身が白銀に輝き、己が戒めをさらりとうち捨てる。
鬼が、用を成さなくなった己が左腕を貪り喰らい、灼熱に包まれる。
二人、ただ互いをその身に映し、歓喜にその身を打ち震わせる。
白銀の呪力が鬼を打ち据える。その呪力の中、身体を焼かれながらも鬼が進む、白くたおやかな腕が宙を舞い、鬼の片眼が血に濡れる。
鏡面に映したかのように二人は己が魂を満たす愉悦に歪む。
鬼が己の眼にささった女の腕を喰らう。巫女が、その手に持つ血塗れた鬼の眼球をくしゃりと握りつぶす。
隔夜、呼ぶ声は悦楽に濡れ、過炎、手招く白きその姿は闇の中 艶めしく、抗えず二人は再び巫女の手足となる。
隔夜が世界を断絶し、過炎が己が炎を巫女に分け与える。
そうして二人は、互いの生を喰らい合う。
竜巻のごとき暴風が巫女の頬を掠め、それを幸いと触れた鬼の肌に呪力が流し込まれる。
鬼に触れられた傷口を愛おしそうに己が炎で焼き、その身に流し込まれた巫女の呪力を鬼は抱きとめる。
共に互い以外を知らず。交わり方といえばこれしか知らぬ。
炎の中に居た少女は、あの時の怪異のように蹂躙されたかったのか、その身を満たす歓喜が何かを未だ知らず。炎の中から顕れ出でた鬼は、何に飢えていたのか、今この身を満たすものは何かを未だ知らず、ただただ二人求め合う。
狂乱の宴は艶やかに、そうして狂おしく。例えるならばそれは、静と動の乱舞、太陽が照らし、月が緩やかに昇る一瞬の競演、まばゆいばかりの夢をそこに現出する。




