昔話 あるキャンプでの一場面
[約280年前のあるキャンプ]
「ゴクゴクゴクゴク・・・・プハァ!!いやぁ、助かった!マジで死ぬかと思ったぜ!」
「怪我が無くてなによりだ。だが、あんなところ一人でうろついてたら命がいくつあっても足りないぞ。」
一気に水を飲み干す金髪の男に隣に座っていた大男が声をかける。
「いやいや、まさかあんなのがわんさかいるとは思わなくってさ!やっぱ世界は広いね!ハッハッハッハ!」
そう言って話しかけてきた大男の肩をバシバシ叩いた。それに対して大男は溜息を吐く。
事の発端はキャンプをすることを決め仲間達と準備をしていたところモンスターの群れに追われているこの男が目に入ったことからだった。見つけてしまったものはしょうがないと仲間達と救援に向かい無事救出できたというわけだった。
「ところであんたらはなんの集まり?なんかゴッツイ鎧とか着ちゃってさ。」
金髪男は不思議そうに大男に尋ねる。問いかけられた大男は「何言ってるんだ」と質問に答える。
「この恰好で観光してるように見えるか?オレ達は傭兵だ。というかお前の恰好の方が疑問なんだが。」
そう言って大男は金髪男をマジマジと見る。金髪男は帽子とシャツとズボンだけという軽装で大き目の肩掛け鞄を1つ持っているだけだった。
「オレの住んでた田舎ではこれで全然問題なかったんだけどな。世の中なにがあるかわからないってこったな!ハッハッハッハ!」
そう言うとまた大男の肩をバシバシ叩いた。大男は素手で鎧をそんなに叩いて痛くないのかと思ったが平気な顔しているので気にするのをやめた。
「あ!そういやあのバケモノ倒した兄さんにお礼言ってなかった!」
「おお、それは言っておくべきだな。おい!オルタス!ちょっとこっち来い!」
そういうと少し離れたところで仲間達と談笑していた青年を呼ぶ。
「なんですか団長。」
オルタスと呼ばれた青年は呼んだ大男に問いかける。大男はこの傭兵団の団長だった。
「おう、こっちのあんちゃんがお前にお礼が言いたいとよ。」
「あぁ、別に気にしなくてもいいですよ。」
「いやいやいや!あんたは命の恩人だぜ!アンタがいなかったらオレは今頃バケモノの腹の中だったさ!」
嬉しそうにオルタスの手を取りブンブンと握手をする。オルタスは苦笑するしかなかった。
「あのバケモノ倒したのはわかるんだけど兄さんはどうやって倒したんだ?」
その後、金髪男と団長とオルタスで雑談をしていると不意に金髪男がそんな事を聞いてきた。
「え?どうやってって魔法でだけど。」
「魔法!?おおおおおおお!!!すげぇ!そんなことできるのか!いやマジ世界広すぎるな!!」
「魔法も知らないってお前はどんだけ田舎にいたんだよ。」
想像以上に驚く金髪男に団長は呆れ果てる。
「それに魔法使ってる時の兄さんの目も凄かったなぁ!まるでアメジストの様な輝きだった!。」
「アメジスト?」
「なんだそりゃ?」
初めて聞く言葉にオルタスと団長は首を傾げる。
「アメジスト知らないのかぁ。アメジストっての紫色の宝石だよ。オレも実物は見たことないんだけど兄さんのあの目みたいな感じだよ。たぶん。」
「たぶんかよっ!!」
思わず団長がツッコミを入れる。だが少し考えてオルタスにある提案をする。
「オルタス、お前たしか姓が無かったよな?せっかくだしアメジストにしちゃえばいいんじゃねぇか?宝石の名前なんてカッコイイじゃねぇか。」
「おおお、そいつはイイネ!カッコイイよ兄さん!。」
「は、はぁ・・・別にいいですけど。」
オルタスは困惑しながら答える。それを笑いながら見ていた団長に金髪男は話しかける。
「団長さんはすげぇゴツイし鉄壁って感じがするからダイヤモンドかな。」
「それも宝石か?」
「ああ、透明なんだけどすっげぇ硬いんだぜ!」
「ほう、それはいいな。」
「団長にピッタリじゃないですか。」
団長もまんざらではないような様子だった。そうすると話を聞いていたのか他の仲間達が集まってきた。
「え、なになに宝石の名前を姓にするの?いいなぁ、アタシもしたい!」
「お、じゃあオレにもつけてくれよ!」
「お前が宝石ってガラかよ、石でいいよ石で。」
「オレが石ならお前は砂利だがな!」
「なんだとコラァ!」
「やんのかコラァ!」
「ん、ちょっと待て、おい!なんか順番待ちの列できてるぞ!」
「げ、いい名前がなくなる!」
「あれ?クラウは付けないの?」
「私は別に・・。」
「バカだなぁクラウはアメジストって決めてんだよ。なぁ?」
そう言って男はニヤリと笑う。質問した女の方も納得の表情を浮かべる。
「あーそういうこと。それならクラウは必要ないよねー。」
「ちょ、ちょっと!変なこと言わないでください!!」
「おーおー赤くなっちゃって。若いっていいねー。」
「ね~。っと私も並ぼうっと。」
傭兵団には元々身分が低く姓を持つ者がほとんどいなかった。だから姓を持つことにちょっとした憧れを持つ者も少なくはなく、姓を持っていなかったほとんどの団員が金髪男に宝石の名前を付けてもらった。名前の由来は外観の特徴から付けられるのがほとんどだった。大半が金髪男の思いつきだったのだが。知らない名前の宝石ばかりだったのでそれぞれがどんな宝石か説明を受けて各々納得していた。姓を持つ上に宝石の名前を付けれたというわけでその日のキャンプは大いに盛り上がった。
間話です。でも結構キーポイントだったりそうじゃなかったり。こういうのが伏線ってやつですかね。