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ジュエル!  作者: asobito
マシュメ王国編
59/67

第50話 護衛依頼に向けて

累計PVが600万アクセス、ユニークが90万アクセスを突破しました。読んでくださった皆様本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します。


ひゃっほう。


2014/1/20 指摘のあった誤字を修正しました。

詰所での事情聴取はマフィー達やフロックス達のおかげで問題無く終わった。それでも時間はかかってしまい、マフィー達とフロックス達を送り、ハジメ達が宿"一枚看板"に戻った時には日が暮れていた。宿に戻ると、主人のロシキがすぐにやって来る。帰りが遅かったので心配していた様子だった。


「えらく遅かったな。何かあったのかい?」

「ええ、ちょっと騒動に巻き込まれたと言いますか……」


 ハジメは苦笑いを浮かべながら事の顛末を話した。話を聞いたロシキは呆気に取られてハジメ達を見る。


「へぇ~、あのバータルやっちまうなんてアンタ達そんな凄かったのか」

「ハジメが一人で倒しちゃったのよ」

「ハジメはすごいんだよ!」


 クーネとサニーが自分の事のように胸を張って言うのを見てロシキは豪快に笑う。


「ハッハッハ!! そいつはお疲れ! 飯はすぐ用意出来るからよ。ちょっとあっちで待っててくれ」

「あ、ロシキさん」


 ハジメ達を食堂に案内して厨房へ行こうとするロシキをクーネが呼び止める。


「カマル君はちゃんと戻って来てます? 私達途中で別れちゃって」

「ん? ああ、あの坊主なら昼間に戻って来てよ。親の用事が終わったとかでそのまま部屋引き払っていったよ」

「え!?」

「なんでも別の用事があるから急いでるんだと。アンタ達にありがとうって言っといてくれって言われてたの忘れてたぜ。わりぃわりぃ」


 ロシキは申し訳なさそうに頭を掻いた。ハジメ達がお礼を言うとロシキは厨房へと歩いて行った。


「カマル、もう行っちゃったんだ」

「残念だったわね」

「一緒に遊びたかったなぁ……」


 サニーが残念そうに呟く。


「用事があるなら仕方ないさ。きっとまたどこかで会えるよ」


 ハジメがそう言って慰めるとサニーは「うん!」と笑顔で返事をした。

 食事を終えて一息ついていると、兵衛がハジメ達に話し掛ける。


「……皆に相談なのじゃが、某明日鍛冶屋へ行こうと思う。よろしゅうござるか?」


 いつもより若干元気が無い兵衛。ハジメ達はすぐにその理由に気付く。


「折れた刀ですか?」

「そうね、鍛冶屋さんなら直せるかもしれないわね」

「刀鍛冶が居ればいいのじゃが……。とにかく行ってみようかと」


 ハジメの知る限り、この世界で日本刀を見た事は一度も無い。ハジメは日本刀を直せる鍛冶師がいる可能性は低いのではと推測する。それでも探してみなければ始まらない。兵衛もそう考えての発言だった。


「明日は一度冒険者ギルドに行こうかと思ってるくらいで後は特に用事は無いです。オレ達も一緒に行きましょうか?」

「いや、某一人で大丈夫でござる。皆は護衛依頼の準備もござろう。そちらをして下され」

「わかりました」

「ハジメ、冒険者ギルドへ何しに行くの?」


 クーネが明日の用事について聞いてくる。


「オラリアさんの依頼は一応終わったしね。その報告かな」

「じゃあ冒険者ギルドに皆で行って、その後は兵衛さんは鍛冶屋探し、私達は旅の準備でいいかしら?」

「うむ、そうでござるな」

「はーい!」


 その後他愛もない談笑をした後、各自の部屋に戻った。

 翌朝、食堂で朝食を済ませたハジメ達は冒険者ギルドへ向かった。


「おお、ハジメさん! 皆さんも!」


 ギルドへ入るとすぐにベグルが駆け寄ってくる。


「ベグルさん。おはようございます」


 ハジメ達は駆け寄ってきたベグルに挨拶をする。


「おはようございます。いや、聞きましたよ。バータルを倒してしまうとは! 最初は何かの間違いかと思いましたがね」


 嬉しそうに話すベグルを見てハジメ達は驚く。


「もう知ってるんですか?」

「そりゃこの仕事は情報が命ですからね。詰所からも確認取れましたし、正確な情報として本部にも報告させていただきます」

「やっぱりオレマズイ事しちゃったんですかね」


 ハジメは街で戦った事が問題になるかと心配した。しかし、ベグルは首を横に振る。


「いえいえ、その逆ですよ。優秀な人材として評価が上がると思いますよ。階級が上がるというわけではありませんが、所謂"名が売れる"というやつですね。今後の依頼成功時の評価も上がりやすくなると思いますよ」

「そ、そうですか」


 ハジメとしてはあまり実感の無さそうな話だったので微妙な返事になってしまう。


(噂が広まる程度って事かな。あまり面倒事は避けたいけど、今更か……。変なのに絡まれやすくならないかなぁ)

「優秀だって、やったわね!」


 クーネにバシリと肩を叩かれ考え事を中断する。


「あ、ああ。そうだね」

「ハジメすごいもんね! 優秀だね!」


 サニーはパチパチと拍手をしてハジメを褒める。

 

「面と向かって言われるとすごく照れるけど、ありがとう」


 ハジメは周りの暖かい目に若干戸惑いつつ、サニーにお礼を言った。


「闘斧団はどうなったのでござろうか?」

「ああ、それですね」


 ハジメとサニーの様子を笑顔で見ていたベグルは兵衛の疑問を聞くと視線を兵衛に移した。


「バータルなんですが、街の外で瀕死の重傷を負ってましてね」

「え?」


 それを聞いたハジメが驚く。ベグルは自分の言葉が足りない事に気付き、ハジメの考えているであろう事を否定する。


「いやいや、ハジメさんが原因では無いようです。河から出た所を何者かに襲われたようですね」

「誰がやったのかしら……」


 これはハジメ達にもわからない事だった。ベグルも同意するように頷く。


「団員達がやったのか、それとも他にバータルに恨みがある人物……そんな人はいくらでも出てきそうですし、犯人は分からず仕舞です。とにかく、闘斧団はこれで終わりでしょうね。これで我がパマウィン支部も活気を取り戻せますよ!」


 バータルを襲った犯人が気になったが、ベグルが嬉しそうに話すのを見てハジメ達は頷くしかなかった。


「おっと、ハジメさん達は今日はどういったご用件で?」

「昨日のオラリアさんの依頼が完了したので、その報告に」

「おお、そちらも解決されましたか。では受付にどうぞ」


 ベグルに案内され受付へと移動する。オラリアからの依頼の結果を報告し、報酬を受け取る。


「……では、この依頼はこれで完了です。ハズク商会の護衛依頼は2日後の朝ですのでお間違いの無い様にお願いします」

「はい、わかりました」


 ハジメが返事をすると横からクーネが「ちょっといいですか」と小さく手を上げる。


「ベグルさん、旅支度の買い出ししたいのですけど何処かいいお店知りませんか? あと鍛冶屋さんも」

「おお、クーネ殿忝い」


 クーネの気配りに兵衛は丁寧に頭を下げる。


「買い出しと鍛冶屋ですか。そうですね、それなら河の向こうの商業地区なんですが……」


 ベグルはメモ用紙に道具屋への簡単な地図と店の名前を書く。そしてこの街では一番だという鍛冶屋の地図も別の紙に書いて兵衛に渡した。


「本当は個別にお店を紹介したりするのはあまりしちゃいけないんですけどね。ハジメさん達にはお世話になったので」

「ありがとうございます」

「かたじけのうござる」


 ハジメ達が頭を下げるとベグルは「いえいえ」と笑顔で応えた。お礼を言った後、ハジメ達はギルドを後にする。それを受付から見送ったベグルは持っていた書類に目をやる。先程ハジメ達に説明した闘斧団の現状が書かれた書類だった。書類にはハジメ達に説明していない部分があった。それはバータルの今後。現状辛うじて生きてはいるが予断を許さない事。そして弱みを握られていた商人や貴族がこの事を知り、これ幸いと口封じに動く恐れがある事。冒険者ギルドもバータル達から冒険者の資格を剥奪し、見捨てる方針にある事。


「バータルは風前の灯ですね。でもハジメさん達が知る必要はないでしょう」


 まだ若いハジメ達に道を踏み外した冒険者のなれの果てを教えるべきか迷ったが、教えない事に結論付けた。


「ただの責任逃れ……でしょうかね」


 そう言った暗部を伝える役目から逃げただけだと気付いて自嘲した。

 ギルドを出たハジメ達は大通りから橋を渡り商業地区へとやって来た。道具屋と鍛冶屋の分岐点で立ち止まる。


「それじゃオレ達は道具屋に行ってますね」

「承知致した。いつ帰れるかわからぬゆえ、そのまま宿に帰っていて下され」

「わかりました」

「直るといいですね」

「またね!」

「キュィィイ!」


 ハジメ達と別れた兵衛は地図を見ながら鍛冶屋へと向かう。鍛冶屋はすぐに見つかり、中へ入るとすぐに店主と思われるいかつい男がやって来た。


「いらっしゃい。見ない顔だが何か探し物かい?」

「いや、今日は買い物ではござらなくてな。すまぬが、これを見てほしいのでござる……」


 兵衛は腰に下げていた刀を取り出しカウンターに置いた。


「ほう、変わった剣だな」


 そう言って男は刀を手に取ると鞘から引き抜く。中には真っ二つに折れた剣が入っている。


「おぅおぅ、こりゃひでぇな」

「これを直したいのでござるが……」

「こいつをかい?」


 男は折れた剣をジッと見つめる。しばらく折れた断面や刀の形状を眺めた後、ため息交じりで答える。


「……こいつはウチじゃ無理だな」

「む、そうでござるか」

「ウチは鍛冶屋だが、剣より包丁や短剣といった日用品を主に作っててね。これほどの物を直そうってんなら武器を専門に作ってるような奴に頼んだ方がいいぜ。それに材料もその辺のを使ってるわけじゃなさそうだ」

「どこか心当たりはござらぬか?」

「あ~、この街じゃダメだな。武器の需要があまりねぇからよ。やっぱり東ディアヴェントの方で探したほうがいいな」

「山脈の向こうでござるな」

「そうそう、山脈を越えた先に鉱山都市があるんだがよ。そこなら鉱物の質もいいだろうし、腕のいい鍛冶屋も集まるってわけさ。こいつを直せる奴もいるかもな」

「なるほど。では、そちらで探してみるでござる」

「山脈越えは難儀だが、気を付けてな」

「世話になり申した」


 兵衛は刀を受け取ると頭を下げて店を出た。


「刀は護衛依頼の後になりそうでござるな」


 兵衛は「ふう」と息を吐き、気を取り直して宿へと戻って行った。

 道具屋へ買い出しに行ったハジメ達も買い物を終えて宿屋へと戻って来た。


「兵衛さん、早かったですね」


 紙袋を抱えたハジメが、食堂で寛いでいた兵衛に近づく。その後ろからクーネ、パルを頭に乗せたサニーもやってくる。


「おお、おかえりでござる。色々と買ったようでござるな」


 笑顔の兵衛は紙袋を見ながら言う。


「殆ど日持ちのする食料とか、消耗品ですけどね」

「うむ山を登る故、食料は多めに持っておいた方がよいでござろう」


 兵衛は自身の経験から語る。木々の生い茂っているなら現地調達でどうにかなりそうだが、遠目に見えた山脈は緑があまりないようだった。


「道具屋の人にも聞いたけど、岩だらけの山だから食べられる物もまず無いだろうって言われちゃって。護衛するんだから依頼側が食事を用意してくれるかもしれないけど」

「まぁ、それを当てにして行くのも怖いんで。買っておきました」

「兵衛さんの方はどうでした? 直せそうですか?」


 兵衛が刀を手元に置いているのを見てハジメは聞く。兵衛は苦笑いを浮かべ首を横に振った。


「いや、この街では刀を取り扱う者が居らぬらしい。修復に見合った材料も。山脈の向こうならそのような鍛冶師が居るかもしれぬとは言われたが」

「そうですか」

(刀ってたしか日本独自で、作り方が違うんだったっけ。材料も鉄じゃなかったような気がするなぁ)


 刀の作り方については詳しくないハジメはそれくらいの知識しかなかった。


(これはかなり厳しいかもしれないな)


 材料はともかく技法を知っている者がいる可能性は限りなく0に近いとハジメは考えた。しかしそれを口にする事はなかった。


「山脈の向こうって言えば鉱山都市よね」


 クーネが思い出したように口にする。


「おお、鍛冶屋でもその名を聞いたでござる。有名でござるか?」

「う~ん、私も聞いた事あるだけだけど、宝石や鉱物が豊富に取れるから鍛冶や宝石細工が盛んらしいわ」

「なるほどのう」


 クーネが昔聞いた事を思い出しながら話す。それを聞いたハジメが素朴な疑問を思いつく。


「クーネって東ディアヴェント出身?」

「えっ!? あ! いや、そ、そうなるかなぁ。で、でもあまり詳しくは無いわよ。人伝にちょっと聞いた事あるくらい」


 狼狽えっぷりに首を傾げつつ、ハジメ達は「なるほど」と頷く。


「そ、そうだ! きっとハズク商会の人に聞けばもっと詳しくわかるわよ。東ディアヴェントに拠点を置く大商会ですもの」

「そっか、それじゃ機会があれば聞いてみますか」

「そうでござるな」


 兵衛の刀はしばらく保留する事で話は纏まった。その後、出発当日までハジメ達は観光都市を満喫して過ごした。

 当日、ハズク商会に向かう為早朝に食堂に集まるハジメ達。既に旅の準備は整っており、軽い朝食を食べていた。


「さて、それじゃ出発しようか」


 食べ終わり一息ついたところでハジメが皆に声を掛ける。


「そうでござるな」

「いきましょうか。サニー忘れ物ない?」

「大丈夫! パルもないよね?」

「キュィイイ!」

「ハジメさん」


 席を立つハジメに玄関から声がかかる。オラリアがこちらに手を振っていた。その後ろにはフロックスとクチナ、フィラとネモも来ている。


「オラリアさん? 皆さんもどうしたんですか?」

「今日出発すると聞いてたので見送りに来ちゃいました」


 驚くハジメにオラリアは笑顔で答える。


「わざわざありがとうございます」

「忝い」


 クーネ達もお辞儀をする。


「こっちこそお世話になったんだからこれくらいしなきゃね。コレ、よかったら道中食べて頂戴」


 フィラは持っていたバスケットをクーネに渡す。


「これは?」

「オラリアちゃんとクチナちゃんと私で作ったお弁当だよ。腕によりをかけて作ったからね味は保証するわよ」

「料理はまだ修行中なのでお義母さん程自信は無いですが……」

「私は味覚の修行中です」


 フィラは自信満々で言うのに対してオラリアは申し訳なさそうに言った。クチナは聞き捨てならない事をサラリと言ったが、オラリアがすぐにフォローをする。


「味見はちゃんと私達がしたので大丈夫ですから!」


 ドッと笑いが起こり和やかな空気のまま全員で外へと出る。


「それじゃ行きますね。皆さんお元気で」


 ハジメ達がオラリア達にお辞儀をする。


「皆さんお気をつけて行ってください」

「お世話になりました。またパマウィンに来たらウチに寄ってください」

「色々とありがとうございました」

「今後もウチの宿をよろしくな!」


 オラリア達が手を振るのに応えてハジメ達はハズク商会へと向かった。

 商業地区に入り、北東へ向かう大通りを通っていくと一際大きな建物が見える。看板には梟と天秤の絵が描かれていた。


「あれがハズク商会か。大商会と言ってたけど確かにすごいな」

「わ~、おっきいね!」

「あれで支部ですものね」

「本部はどれほどなのでござろうな……」


 早朝にも関わらず、ハズク商会の前には馬車が停まっており、慌ただしく積荷が行われていた。


「あれが護衛する馬車かな?」

「みたいよね。とりあえず依頼の担当者を探しましょう」

「そうだね。え~っと……ん?」


 ハジメは積荷をしている人達に声を掛けようと近づくがその中に見覚えのある後姿がある事に気付く。頭部に犬耳のある小柄な青年に確認するように声を掛ける。


「ラニアン?」

「え?」


 声を掛けられた青年は犬耳をピクリとさせ振り返る。


「……ハ、ハジメ君? わぁ、ハジメ君だ!」

「おおっ! ラニアンじゃん!!」


 ハジメとラニアンは思わず歓声をあげて喜び合う。何事が起きたのかと積荷をしていた人々、そしてクーネ達がポカンと2人を見つめていた。

そんなわけでラニアン久しぶりに登場。

次回から護衛依頼&山脈越え編になります。何も起こらないわけないですよね!


2014/1/20 ラニアンに尻尾は無かったのでその部分を修正しました。前書きに書くとネタバレになりそうなのでこちらに書かせてもらいます。

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