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ジュエル!  作者: asobito
マシュメ王国編
47/67

第40話 ハジメ対団長フィータ

総合PV430万突破! 総合ユニーク53万を突破しました! 読んでくれた皆様に感謝! ありがとうございます。引き続き楽しんでもらえたら幸いです。


2012/12/03 指摘のあった誤字を修正しました。

 クェーメン村を出て海岸沿いを南下して行くと、岩山が見えてきた。海に面した部分が削り取られ崖になっている。辺りに身を隠すような場所も無かったので、ハジメ達はそのまま崖へと近づくが、見張りがいる様子も無かった。崖を覗き込むと、海面に面した所に大きな穴が開いていてそこから海水が入っていた。


「あれが海蝕洞って奴か。たしかに小さい船は入れそうだが…どうやってあそこまで行くんだ?」


 洞窟の周囲を見渡しても降りられそうにはなかった。


「岩山の方に入口があるのかもしれないですね」


 ハジメが岩山を見る。大小様々な岩が重なっていて、何処かに海蝕洞と繋がる洞窟の入り口があるのではと考えた。


「よし、それを探すか。お前等あまりバラバラになって探すなよ、待ち伏せしてるかも知れねぇからな」


 ハーンに言われ、全員あまり離れず岩山を見て回った。岩山の麓付近を端の方から調べていると、兵衛の声が上がった。


「皆のもの、これを見て下され」


 ハジメ達が兵衛の元へ行くと、2つの大きな岩に挟まれた隙間の奥に木の扉があった。


「ここが入口みたいだな。だが、見張りが1人もいないってのが気になるな」

「ハズレか罠か…ですかね」

「行ってみなきゃ分からないわよね」

「行ってみよう!」

「キュィィ!」

「よし、それじゃ先頭はオレ、その後にハジメ、クーネ、サニー、最後は兵衛だ」

「殿はお任せ下され」


 全員に確認を取ると、ハーンはゆっくりと扉を開ける。中は人ひとりが通れるほどの薄暗い洞窟が続いていた。ハーンは角灯に火を灯すと慎重に奥へと進んで行き、ハジメ達もその後に続いた。

 細い1本道を進むと松明の明かりが見えてきた。身を潜めながら覗き込むとそこは大きなドーム状の空洞になっていて、小屋や足場が幾つか建っている。奥の壁に開いた穴は海と繋がっていて、そこから差し込む日の光とあちこちに掛かってる松明のおかげでまったく見えないという事は無かった。


「岩山の中がこんな風になってるなんてな。隠れ港ってとこか。それにあの船…か? ありゃ何だ?」


 ハーンは停泊している船を見て首を捻る。そこにあった船は自分の知っている船とはあまりにも形状が違った。


「え、どんな船ですか?」

「あ、私も見たい」

「サニーも!」


 後ろに閊えていたハジメ達が覗き込もうとハーンを押す。


「バ、バカ、押すなっ!」

「おわっ!」

「きゃっ!」

「わー!」


 急に押されてハーンは踏み止まろうとするが、3人の力にあっさり負けてしまい、そのまま倒れ込む形で広間に出てしまう。ハーンの後に続き、ハジメ達も倒れ込む。最後尾に居た兵衛は慌てて倒れた4人に手を貸す。


「だ、大丈夫でござるか?」

「皆大丈夫か?」

「びっくりした。いきなり倒れるんだもん」

「あはははは。びっくりしたー」


 ハジメは倒れた状態のまま視界に入った船を見る。海面に浮かぶその船は整備中なのか周りに足場を組まれていて、たしかに今まで見た船とは違う形状だった。だが、ハジメは似たような船を知っていた。


「これって…」


 ハジメが船を見入っていると、下から怒声が聞こえてきた。


「早くどきやがれ!」


 下敷きになっているハーンが怒鳴る。すると女の笑い声が響いてきた。


「アハハハハハハ! 面白い登場をするねぇ」


 声の方を見ると1人の女が立っていた。赤い長髪で小麦色の肌、一般的な女性よりも身長は高く、鍛え上げた体つきをしている。胸元の大きく開いた白いシャツと紺色のズボン、革のロングブーツを履いており、腰には細剣らしい剣が掛かっていた。凛々しい雰囲気から男装の麗人という言葉がピッタリだなとハジメは思った。ウェーブのかかった艶のある長髪と、主張の大きい胸元を見ればすぐに女性と分かるが。

 慌てて起き上がるハジメ達。下敷きになっていたハーンもすぐに起き上がる。それを確認すると女は再び口を開く。


「どんなのが来るのかと思ったら、変わった面子の冒険者だねぇ」

「アンタは?」

「アタシかい? アタシはアンタ達が探してる一味の頭ってとこかね」

「他の奴等は?」

「部下達は忙しくてね。アンタ達の相手をしてるヒマは無いのさ」

「こちらは全員捕まえるつもりなんだがな」

「ああ、そうだろうね。そこでちょっとした賭けをしようじゃないか」

「賭け?」

「ああ、アタシと1対1で勝負して、アンタ達全員が負けた所で終了。アタシが負けたら大人しく全員お縄になるよ」

「えらい自信じゃねぇか…。オレ達がその賭けに乗らなかったら?」

「無視して襲ってきてもいいけどね。そうなると部下も参加する事になるね。そんなつまらない事にならない事を願うよ」


 ハジメは広間の至る所から視線を感じた。


「結構な数がいるようですな」


 兵衛がボソリとハジメに呟く。どうやら兵衛も視線に気付いた様子だった。


「賭けをするなら部下は一切手を出さないから安心しな」


 女はハジメと兵衛に向かって言ってくる。その表情は笑顔だが、ギラリと獲物を見つめるような目をしているように見え、ハジメは警戒心を強める。ハジメはリーダーであるハーンにどうするかを尋ねる。


「ハーンさん、どうしますか?」

「どうするって、帰るわけにもいかねぇし。やるしかねぇだろ」


 そう言うとハーンは前に出て剣を抜く。


「相手は女1人だ。オレがさっさと終わらせてやるぜ」

「ちょ、ちょっとハーンさん! <魔力塗装(コーティング)>を…」


 ハジメが慌てて止めるがハーンは聞く耳を持たない。女も意外そうな顔をした後、ニコリと笑う。


「へぇ、アンタが最初かい?」


 女はハーンを品定めするように見つめると、腰の剣を鞘ごと外し手に取った。


「何のつもりだ?」

「生憎、無益な殺生は好きじゃないんでね」

「チッ、舐めやがって…後悔すんなよっ!」


 剣を構えたハーンは一気に距離を詰め、横に払う。だが女はスッと後ろに退き、剣を躱す。


「チィッ! これならどうだ!」


 振り払った剣を上段に構え直し、今度は力を込めて縦に斬りつける。それも女はスルリと横に躱し、持っている剣でハーンの腕をビシリと叩いた。


「そんな力任せに振ったって当たらないよ。振りが大きくてバレバレじゃないか」

「クッ、うるせぇ!」


 ハーンは必死に何度も攻撃繰り出すが、悉く躱され、時折悪い点を指摘しながら手足を剣の鞘で叩かれていく。その様子をじっと見ていたクーネがハジメに話しかける。


「ハジメ、これって…」

「完全に遊ばれてるよな…」


 ハジメがそう言うのと同時にハーン足を縺れさせ転倒してしまう。全力で空振りを繰り返した上に脚を何度も叩かれ疲労が溜まってきていた。


「く、クソッたれが…」


 肩で息をしながらハーンは剣で体を支えて起き上がるが、立っているのがやっとだった。その様子を見て女も一呼吸してハーンに話しかける。


「まぁ、こんなもんかね。アンタの負けだよ。もっと体力をつけるんだね」


 そう言うと女はハジメ達の方を見る。


「さぁ次は誰がやるかい?」

「よし、兵衛。お前に任せるぞ…」


 フラフラとこちらに戻ってきたハーンは兵衛に行かせようとする。クーネとサニーに戦わせるわけにはいかないので、兵衛とハジメのどちらかになるのだが、兵衛の様子がどうもおかしいのに気付く。


「どうした兵衛?」

「も、申し訳ないハーン殿。某、女子供に刃を向けられぬ」

「は?」

「えっ?」

「え?」

「うん?」


 兵衛の思いがけない発言にハジメ達は固まってしまった。様子を見ていた女も不快そうな顔をする。


「女は弱いから戦えないってのかい? 随分舐めた事言ってくれるねぇ」

「いや、お主が強い弱いは関係ない。これは某の師の教え故、破るわけにはいかぬ。ハーン殿、申し訳ない…」

「な…なんだそりゃ! じゃあハジメ! お前が行って来い!」

「そ、そうなりますか…」

「申し訳ないハジメ殿」


 兵衛は深々と頭を下げる。ハジメは慌ててそれを止めさせた。ハジメの知っている時代劇に出てくる正義の味方も同じような事を言っていた気がしていたので、それほど驚く事ではなかった。実際にそんなこと言うとは思わなかったのだが。


「そこまで謝らないでいいですよ。武士道ってヤツはなんとなく知ってるんで」

「おお、忝い」


 兵衛に笑顔で応え、ハジメは女の方を向く。


「それじゃ、オレが次の相手です」

「ああ、随分若い冒険者だね」

「なり立てなもんで」


 ハジメが腕をグルグル回したり屈伸したりしていると、後ろからハーンから怒声が飛んでくる。


「手加減すんじゃねぇぞ! 岩熊殺しの実力をあの女に教えてやれ!」

「あの、その呼び名やめてもらっていいですか」


 あまり好きではない呼び名を言われ、振り返り訂正を求めるハジメ。女の方からは「へぇ」と感心する声が聞こえてくる。


「岩熊を倒せるのかい。新人なのにやるねボウヤ」

「ボウヤもやめて下さい」


 そう言うと全身に<魔力塗装(コーティング)>を施す。そして両手に魔力を集めてると半透明な紫色の籠手の形になって行く。


「ハジメそれって…」


 後ろで見ていたクーネがハジメに問うと、ニコリと笑って答える。


「<魔力塗装(コーティング)>だけじゃサニーの時みたいに破れたりするからさ。もっと頑丈なのを考えてみた。<魔力籠手(ガントレット)>ってとこかな」


 両拳をぶつけてガキンと鳴らす。


「へぇ、変わった魔法を使うねぇ。それにその眼…ただのボウヤじゃなさそうだ」

「ボウヤじゃないってのに…。じゃあ行きます」


 ハジメは構えて一呼吸すると、一気に距離を詰める。ハーンと同じ行動だがそのスピードは格段に違った。鳩尾を狙って正拳突きを繰り出すが、紙一重で躱されてしまった。だが女も真剣な表情に変わっている。後ろへ飛び距離を取った女は苦笑いを浮かべる。


「アハハ、危なかった。恐ろしいボウヤだね。ボウヤ、名前はなんて言うんだい?」

「人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもんですよ」

「それもそうだね」


 女はそう言いながら持っていた細剣を腰に掛け直す。そして鞘から剣を抜く。剣の刃は細く真っ直ぐで全体が紅かった。女が剣を胸元に構え、手に力を込めると赤い刃の中心に橙に光る文字が浮かびあがる。


「アタシの名前はフィータ・アンエコ。ここからは文字通り真剣勝負と行かせてもらうよ」


 それを見てハジメも再び構え直す。


「ハジメ・アメジスト。受けて立ちます」


 それを聞いたフィータは一瞬笑顔を見せるが、すぐ元に戻り構える。片手で細剣を持ち半身の構え。どこかで見たその構えにハジメの脳内で警鐘がなる。


(あれ? この構え…)


 そう思った瞬間、フィータの手元がフッと消えるように動く。


(マズイッ!)


 ハジメは素早く上半身を仰け反らせる。先程まで頭があった所を細剣が突き抜けた。ハジメは後転し構え直す。


「へぇ! あれを躱すなんてすごいじゃないかい。当てる気で行ったんだけどねぇ」

「し、死にたくはないんで…」


 冷や汗を垂らしながらハジメは応える。


(やっぱりだ。この人、母上と同じ剣術を使うのか。知ってなきゃ今ので死んでたな…)


 フィータの使う剣術への衝撃に襲われるハジメだったが、ふと何か焦げる臭いがし、前髪を見ると少し焦げているのを見つけた。


(剣に触れた所が燃えたのか…?)


 前髪を気にしているハジメを見ていたフィータが口を開く。


「この剣は世界に一つしかない斬った物を燃やす剣なのさ。触れるだけで大火傷、気をつけなよ」

「ご親切にどうも。ついでに手加減してもらえるとありがたいですけど?」

「すると思うかい?」

「いえ、全然」


 細剣を持つ方の手首を回転させながら微笑むフィータ。苦笑いをするハジメだったが、気を引き締めて構える。


(正攻法で行っても避けられるのがオチか。だったら…)


 ハジメは左手で<魔法印(スタンプ)>"フレタラフキトブ"を作り右拳に写す。そして左手で火の玉を作るとフィータの足元に向かって放った。フィータは難なく躱し、地面で爆発をする。爆発と同時に距離を詰めるハジメに注視するが、視界の上の方で何かがこちらに飛んでくるのが見えた。


「!?」


 ハジメを迎撃するつもりだったフィータは慌てて後ろに飛び退く。先程居た所に再び火の玉が落下してきて爆発をした。ハジメは1つ目の火の玉を放った直後、フィータの避ける方向を予想してもう一つの火の玉を投げていた。2つ目の火の玉に気を取られている隙にハジメはフィータの目前まで距離を詰める。<魔法印(スタンプ)>の付いた拳を打ち込むモーションもすでに取っていた。「あの拳は何かある」と察したフィータは剣で腕を切り捨てようと考えるが、ハジメはしゃがみ込むような体勢をとり、フィータの足元を突いた。<魔法印(スタンプ)>が地面に付いた瞬間、地面には亀裂が入り、爆風が起こる。


「なっ!」


 咄嗟に手で防御を取りながら後ろに飛び退くが、爆風によって飛んできた石や砂利などは防げず、体中に当たる。そして巻き上がる砂煙でハジメの姿を見失ってしまった。

 後転して砂煙から脱出し、体勢を整えるフィータ。だが、すかさず砂煙の中から出て来たハジメが剣をフィータ目掛けて投げつける。


「くっ!」


 上体を横に逸らし躱すが、剣が自分を通り過ぎようとした時、刃の両面に魔法陣が書かれている事に気付く。それと同時に声が響く。


「オンッ」

 

 声に反応する様に刃に付いた魔法陣が輝きだす。


「!」


 魔法陣が発動する瞬間、フィータは細剣で剣を上空に弾き飛ばした。魔法陣から爆炎を噴き出しながら剣はクルクルと空中を舞う。だが、柄に付いていた<魔法の縄(ロープ)>で引き寄せられ、炎を出しきった剣はハジメの手元に戻って行った。


「…ボウヤ、魔法使いかい? しかも2属性持ち…いや、それとはまた別って感じがするね」

「魔人魔法って言います。フィータさんの剣と一緒で珍しいと思いますよ」

「聞いた事も無い魔法に接近戦も出来る…。またデタラメな冒険者が居たもんだね」


 「これは困った」という仕草をするが、フィータの顔には楽しさが滲み出ていた。間合いを取って攻撃の機を探り合うハジメとフィータ。その様子を見ているクーネ達は小声で話を始める。


「ハジメ大丈夫かしら…」

「ハジメは強いよ! 負けないもん!」

「キュイィ!」

「うん、そうね。ハジメが負ける訳無いよね」


 ハジメの強さを知っているクーネ達はフィータの強さに驚くが、ハジメを信じて闘いを見守る。兵衛は今のやり取りを見て驚きを隠せず、未だに疲労困憊のハーンに話しかける。


「あ、あのハジメ殿の技はなんでござるか!? 妖術でござろうか!?」

「妖術だぁ? ありゃ魔法だろうがよ。詳しくは知らねぇが」

「魔法…そんなものがあるのでござるか」

「アンタ魔法も知らねぇのか」

「少なくとも某の居た場所ではそんなものはござらん。…む? 周りの者達も何やら動いている様子」


 兵衛は周囲を見渡しながらそう呟く。


「あ? 大将に手を貸す気か?」

「いや…気配が離れていくような…」


 木製の足場や小屋が乱雑に並ぶ上、薄暗く確認は出来ないが、先程まで感じていた視線が減っている事に気付く。


「離れていくって…まさか大将置いて逃げるってか?」

「あっ!」


 周囲を伺っていた兵衛とハーンだったが、クーネの声に反応してハジメの方へ視線を戻す。フィータがハジメに向かって突進してきた。ハジメは再び剣を投げるが、速度を落とす事も無くスッと躱す。そして渾身の突きを放つが、ハジメは横に飛ぶ。だが、躱した瞬間フィータは急停止、ハジメの方へ方向転換して再び突進してくる。


「くっ!」


 着地する時には目の前に来ている細剣。ハジメは右腕で力一杯引き上げる仕草をする。<魔法の縄(ロープ)>で繋がった剣が猛スピードでフィータ目掛けて飛んできた。フィータは再び急停止し、飛んでくる剣を躱す。剣は空を切ってそのままハジメの後ろへ飛んで行った。フィータは再び斬りかかるが、ハジメの右腕が未だに後方へ向いている事に気付く。<魔法の縄(ロープ)>を巻き取り、ハジメの手元には剣が戻っていた。そしてフィータの剣撃を時に躱し、時に剣を使って捌く。だが瞬きさえ許さない連撃に防戦一方のハジメ。近くにあった足場を上りながら攻撃の機を伺っていた。5m程の高さがある足場の奥に立つと、フィータも登ってくる。


「さぁ、もう後が無いよ」

「そうみたいですね」


 フィータがゆっくりとハジメに近づく。ハジメは右手で剣を構えながら左手を後ろに回す。


「魔法陣でも作る気かい?」

「…バレました?」


 フィータはニヤリと笑って見せる。


「アタシが中央まで来たら広範囲の魔法陣を作ると思ってね。どういう仕組みかは知らないが一瞬で作れるんだろう? 大きさも自在じゃないかと思ってね」

「そこまでわかっちゃいますか」

「いやはや、とんでもないボウヤだよ。これだけ攻撃を捌かれるのも初めてだしね」

「知り合いに似たような剣術を使う人がいるので…」


 ハジメがそう言った瞬間、ピクリとフィータが反応をしたが、すぐに元に戻る。ハジメもその反応には気付かなかった。


「…へぇ、それは気になるねぇ。どうだい? アタシ達の仲間になる気はないかい?」

「盗賊の仲間になる気は無いです」

「盗賊ね…。あ、あの村からの依頼で来てるんだったね」

「領主からも盗られたものを取り返せと依頼が来てますけどね」

「あ~、そういう訳かい。村には悪い事したと思ってるよ。ちょっと前にケロなんとかってゴロツキ達数人を匿ったんだけどね。性根が腐ってたから叩き直してやろうと思ったら、村襲って逃げやがってね」


 その話を聞いてハジメは思い当たる人物が居た。


「…それってケロコグじゃないですか?」

「そう! ケロコグだったね。…ってなんで知ってんだい?」

「ちょっと捕まえる事情があって。王都に引き渡したんで、今は牢屋にいるんじゃないですかね」

「へぇ、そうかい。こりゃアンタに礼をしなけりゃいけないね」

「捕まってくれると嬉しいんですけど…」

「残念だけどそれは出来ないね。こっちもやらなきゃいけないことが―――」

「団長!」


 船の方から男の声が聞こえてきた。


「準備完了です。団長も早く!」

「おっと時間だね」


 フィータは足場を数か所斬りつける。ガクンと傾きだすと隣にあった小屋の屋根に飛び乗った。


「残念だけどアタシ達は逃げさせてもらうよ。じゃあねボウヤ」

「ちょ、ちょっと待―――」


 ハジメが止めようとするが崩れる足場、慌ててハジメも小屋の屋根に飛び乗ろうとするが、崩れかかった足場ではうまく踏ん張れず、屋根の縁になんとか掴まる状態で落下は免れた。急いで登り、フィータの後を追う。


「ハジメ!」

「ハジメ殿!」

「よし、オレ達も追うぞ」

「キュィィ!」

「お~!」


 クーネ達もハジメを追って走り出す。

 ハジメが船まで来ると、フィータはすでに船に乗り込んで動き出そうとしていた。


「逃がすかっ!」


 ハジメは船に飛び乗るが、甲板の無い丸みを帯びた船上に転倒しそうになった。


(この形…これってやっぱり潜水―――ッ!)


 搭乗口に行こうとするが、船の表面に精霊文字が浮かび上がってきた。


「なっ!?」


 次の瞬間、船の表面から衝撃が伝わり、ハジメは海へと吹き飛ばされる。一瞬何が起きたか分からなかったが、慌てて海中から海面に出るハジメ。ゆっくり進みだした船の搭乗口からフィータが顔を出してきた。


「ボウヤ、さっきの礼だけど、ここの小屋に領主から盗った物があるから調べてみな。どうするかはアンタ次第だよ。それじゃあね」


 そう言うとフィータは船内に戻って行った。


「ハジメ!」


 岸からクーネが呼びかける。


「大丈夫でござるか! ハジメ殿!」


 兵衛達も駆けつける。


「ああ、オレは大丈夫。でも逃がしちゃったな…」

「だが…どうやって出る気だ? あのデカさじゃあの小さい出口を出れないだろ…」

「いや、あれは…」


 ハジメは既に想像がついていた。帆やマストの無い形状。前世での潜水艦に酷似していたからだった。船は進むにつれて海中へと潜って消えてしまった。


「船沈んでるよ!」

「いや、ありゃ潜ってるのか?」

「何と…」

「あんな船見た事無いわ…」

「だが、どういう造りだ? 海水は入ってこねぇのか?」

「それはたぶん…」


 海から上がったハジメがその答えを明かす。


「船全体に空気の膜を張ってるんです。精霊文字が書かれていましたし、さっきはその発動で吹き飛びました。細かい仕組みは謎ですけどね」

「とんでもねぇもん考えやがるな」

「あの集団がただの盗賊じゃないって事ですね。海に潜られるとパルで追うのも無理ですし…」

「逃がしちまったわけか…さて、どうするかな」

「あ、それなんですけど…」


 ハジメはフィータが最後に言っていた事を皆に教えた。


「デマっぽいけど一応探してみるか…」


 ハジメ達は広間にある小屋を探す事にした。

戦闘シーンは色々と大変ですね。パソコンの前で変な踊り(動きを考えてる)をしている自分の姿を鏡で見て「何してんだ俺は」となりましたが、今後もがんばります。

次回もよろしくお願いします。

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