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ジュエル!  作者: asobito
マシュメ王国編
44/67

第37話 クェーメン村からの依頼

2012/10/9 指摘のあった誤字を修正しました。

 コクメー村の依頼を終え、王都に戻ってきたハジメ達は、サニーの事も考えて街中で出来る簡単な依頼をしながら数日間過ごしていた。今までずっと1人だったサニーにとって沢山の人が暮らす街は初めての事だらけだったので、サニーに色々な事を教える事に時間を費やした。物覚えのいいサニーはすぐに街に慣れ、住民や子供達とも顔見知りになった。

 そして今日は「そろそろ街の外での依頼を受けようか」と、3人でギルドに向かっていた。


「パラミノさんに会えるかなー」


 ニコニコしながら歩くサニー。街に来た時は裸足だったが、さすがにそれは可哀そうだという事ですぐに靴を買った。そしてもし突然サニーの能力が発動しても被害を抑えるという意味も込めて鍔の大きな麦わら帽子も買っており、それを愛用している。

 大きく手を振って歩くサニーの左手首には黒い龍の紋章が付いていた。これはコクメー村での依頼達成を報告しに行った時、ハジメとクーネの紋章をサニーが羨ましそうに見ていた為、担当していたパラミノが気を利かせて付けてくれたものだった。もちろん見た目も中身も子供のサニーは冒険者として登録出来るわけもなく、ただの同じ絵を写されただけだった。だが、ハジメ達と同じ紋章を付けられた事が嬉しく、それをやってくれたパラミノに懐いて、それ以降ギルドに行くとパラミノとよく話をしている。パラミノは仕事中なのだが。


「パラミノさんは仕事中なんだからあまり邪魔しちゃダメよ」

「うん!」


 クーネが注意するとサニーは元気よく返事をする。ギルドに行く度に同じやり取りをしているクーネは思わず苦笑を浮かべた。


「あ、ハジメさん、クーネさん」


 ギルドに入るとすぐにパラミノが声を掛けてきた。


「こんにちわ、パラミノさん」

「こんにちわ」

「こんにちわ!」

「キュィイ」


 一斉に挨拶が来て思わず「これはこれは」と頭を下げるパラミノ。だが、思い出したかのようにすぐ頭を上げる。


「って、それよりハジメさん達は今、依頼を受けてます?」

「いえ、何か受けようかなと来たんですけど。そろそろ外に行く依頼を――」

「それはよかった! 実はお二人に受けてもらいたい依頼があってですね、呼びに行こうかなと思ってたんですよ」

「あ、そうなんですか」

「はい。あ、とりあえず応接室の方に…。皆さんお待ちなんで」

「皆さん?」


 応接間に向かう途中、パラミノは事情を説明を始める。


「ある依頼なんですが、依頼を受けた方々が3人組だったんです。でも依頼主の要望は5人となっていて、ハジメさん達に白羽の矢が立ったわけです。まぁ薦めたのは私なんですけど」


 応接間の前に着くとパラミノが扉の取っ手に手を伸ばす。


「依頼の詳しい説明はこれからしますんで、受けるかどうかはとりあえずそれを聞いてからでも大丈夫です」

「はぁ…」


 パラミノの勢いに流されるまま、ハジメ達は応接間に入って行く。すると中に居た人物達が素っ頓狂な声を上げる。


「げっ!!」

「あっ! お前等は…」

「あぁぁ!」

「ん?」

「あ、あの時の…」


 応接間で待っていたのは、ハーン、チュカ、テシンの3人だった。


「あぁ、思い出した。岩熊に襲われてた人達?」

「冒険者だったのね」

「おいおい…。追加ってお前達かよ」


 ハーン達はすごく気まずそうにする。だが岩熊の一件でのハーン達の事情を知らないハジメ達は首を傾げていた。


「あ、お知り合いだったんですか。それはよかった! それじゃ皆さん座って下さい」


 パラミノはハジメ達とハーン達が顔見知りだと知り、ホッと安心する。

 テーブルを挟んでハジメ達とハーン達が向き合って座る。パラミノは立ったまま書類を片手に説明を始めた。


「それではハーンさん達には一度説明をしましたが、改めて今回の依頼をご説明させていただきます。今回は南の国境付近にあるクェーメン村から盗賊を追い払うという依頼です。報酬は銀貨10枚、5人での依頼ですので、1人銀貨2枚となります」

「盗賊ですか?」

「ええ、恐らく…ですが」

「?」

「それが今回の依頼の特徴ですかね。半年程前から村に食糧を分けてくれと数人の男が来るようになったそうです。皆武器を持っていて、明らかに堅気の人間ではない風貌らしいですが、食糧を奪い取るわけではなく金品と交換するそうなんです」

「それって盗賊では…」

「はい、ですが交換した金品がその男達の風貌とは不釣り合いだったらしくてですね」

「盗品かもしれない…と」

「はい。ですが、村は特に危害を加えてくるわけでもなく、金品も手に入るので特に問題視しなかったそうです」

「そ、そう言うものなんですか」

「ふん。そりゃ、村からすりゃ金になるなら盗品かどうかなんて関係ねぇさ。どこの村でもそんなもんだぞ」


 やれやれと言った様子のハーンが口を挟む。


「へぇ、そういうものなのか」

「知らなかったわ」


 ハジメ達が感心しているのを見て調子が狂ったのか、そっぽを向くハーン。パラミノは苦笑を浮かべ説明を再開する。


「村の人達もそのうちいなくなるだろうと思っていたのですが、それからしばらくして事件が起きたそうです」

「事件?」

「その日もいつものように男達が来たのですが、武器を構えて食糧と金品を全部寄越せと言ってきたそうです。村人達はいつも通り食糧を渡すつもりだったので呆気にとられてたのですが、村人の一人が斬りつけられて騒然としたそうです」

「なんで急にそうなったんだろう」

「騒ぎになっている中、その男達は何かを話し合うとそこにあった食料を奪い、そのままどこかへ逃げて行ったそうです。それで村はまた襲われるかもしれないとギルドに依頼をしに来たという訳ですね」

「なんかよくわからない盗賊ですね」

「へっ、そんなのオレ達3人で十分なんだよ。第一、そこにいるガキは冒険者じゃねぇだろ。そいつも連れてくのかよ」


 悪態をつきながらハーンはサニーを指差して言う。


「サニーの名前はガキじゃないよ! サニーだよ!」


 サニーの返しにクスクスと笑うハーン以外の人達。パラミノはサニーの事をハジメに尋ねる。


「ハジメさん。サニーちゃんはどうしますか?」

「身を守るくらいは出来るんで連れて行きます。いいよな? クーネ」

「一人でお留守番は可哀そうだもの。いいと思うわ」

「おいおい、遠足じゃねぇんだぞ」


 ハーンが呆れながらハジメに言う。


「大丈夫ですよ。昼間限定だけど攻撃力だけなら相当高いですし」

「何だそりゃ」


 訳が分からず首を傾げるハーン。一方のサニーは褒められた気がしたので胸を張っている。


「どうです? ハジメさん、この依頼受けられますか?」


 パラミノはハジメに依頼受諾を確認する。


「いいですよ クーネもいいよな?」

「ええ、やりましょ」

「よかった! 急ですが出発は明日の朝という事で、今日中に準備をしておいてください。依頼主の方も明日一緒に出発しますのでギルドに集合して下さいね。それから依頼の登録をしますので受付の方へいらしてください」

「村まではどのくらい掛かるんですかね?」

「えぇっと、10日程らしいです」

「それならしっかり準備しなきゃな」

「一緒にやるってんならしかたねぇな。だけどな、オレ達の足を引っ張るなよ新人さん達」


 先輩風を吹かせるハーン。その姿を呆れた目で見るチュカとテシン。


「はい。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「よろしくね!」

「う…お、おう。じゃあな」


 素直な反応にハーンは狼狽えながら部屋を出て行く。その後ろを笑いを堪えながらチュカとテシンもついて行った。


「それじゃオレ達も行こう」


 ハジメ達も受付へ行き、依頼の手続きを済ませ解散した。その後、〔岩熊のねぐら〕へしばらく街を離れる事を伝えたり、村までの旅に必要な物を買いに行ったりしてその日は終わった。

 翌日の早朝、ハジメ達がギルドへ行くとすでにパラミノ、ハーン達はいた。そしてもう一人若い男が一緒に居る。質素な服装でいかにも村人と思える男は、気が小さいのか街には初めて来たのか落ち着かない様子だった。


「おはようございます、皆さん。こちらが今回の依頼主リバさんです」

「は、はじめまして。よろしくお願いします」


 リバはペコペコと頭を下げる。パラミノは何か思いついたように手をポンと叩く。


「そうだ、皆さん自己紹介してませんでしたよね? ついでにしておきましょう。長い旅になりますし」

「ちっ、めんどくせぇな。オレはハーンだ。普段はこっちのチュカとテシンと組んで仕事してる」

「お前がオレ達も紹介するのかよ。えっと、オレがチュカだ。よろしくな」

「オ、オイラがテシン。よろしく」


 ハーン達が挨拶をし終わった後、ハジメ達が挨拶をする。


「オレはハジメ・アメジストといいます。こっちはパルと言います。まだ冒険者になったばかりですがよろしくお願いします」

「キュィイ!」

「私はクーネです。ハジメと同じ新人です。よろしくお願いします」

「サニーだよ! よろしくね!」

「…あれ? パラミノさん、たしか5人では?」


 リバは元気に挨拶するサニーに引き攣った笑顔を見せ、パラミノに問いかける。


「あ、サニーちゃんは冒険者ではなくハジメさん達の同行者といいますか、そんな感じです」

「は、はぁ…」


 リバがハジメ達を見て不安そうにする。ハーン達は別として、新人と言う若い男女に小さい子供を見て不安になるのは仕方が無かった。その様子を見てハーンがニヤリと笑って見せる。


「まぁ、オレ達もいるんだ。そう心配する事はねぇぜ」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 「勝った!」という顔をするハーン。だが、そんなハーンを無視してチュカが話を進める。


「それじゃ、出発って事でいいんだな」

「はい、皆さんお気をつけて」

「はい、行ってきます」

「行ってきます」

「またね! パラミノさん!」


 見送るパラミノに手を振りながらハジメ達はクェーメン村へと出発した。

3人組再登場。

次回も新キャラが出ます。今までとは一味違った人物の予定なので設定に悩んでますが、いいキャラになるといいなぁ。

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