第32話 新米冒険者の初仕事
各アクセス数、お気に入り登録、評価などが跳ね上がって驚きが隠せません。正直最初バグかと思いました。皆様本当にありがとうございます。
2012/07/21 設定見直しの為、岩熊の籠る期間を1年の4分の1から5分の1に変更しました。
〔岩熊のねぐら〕に戻って来たハジメとクーネは、まず昼食を取ることにした。食事をしながら今後の話をする。
「薬草取りに行くだけだし、カバンは部屋に置いて行くかな。そう言えばクーネは泊まる所決まってるのか?」
「あ! 決めてなかったわ・・・」
「昨夜はどうしたんだ?」
「看病してくれた漁師の奥さんが家に泊めてくれたのよ。・・・どうしよう、すぐに宿探せるかしら」
するといつからいたのか、ゲンマーが声を掛ける。
「そう言う事ならウチが空いてますぞ!」
「え? いいんですか?」
「いいもなにも、お客ならいつでも歓迎しますぞ!」
ゲンマーが胸をトンと叩いてふんぞり返る。
「フフ、それじゃお願いします。えっと・・・」
クーネはしばらく目を泳がせ、少し恥ずかしそうにハジメに話し掛ける。
「ねぇ・・・手続きってどうしたらいいのかしら? 私1人で宿取った事ないから・・・」
「え?」
「なんじゃ、嬢ちゃんはどこぞのご令嬢かの?」
「あ、いや・・・アハハ・・・」
クーネは笑ってはぐらかした。ハジメとゲンマーは首を傾げるが、特に追求することなかった。クーネはその場で宿泊代を払い、鍵を受け取った。
食事を終え、外へ出る2人。集めた薬草を入れる袋がなかったので、宿で布袋を1つ借りてきた。中央通りへ出て、南にある正門を潜り街から出る。綺麗な青空に白い雲、辺り一面には草原が広がっていて、その中をいくつか街道が通っていた。辺りから鳥の鳴き声が聞こえ、草木が風で緩やかに揺れているのを見て、2人は長閑な印象を受けた。
「わぁ、いい景色」
「天気もいいし、気が緩んじゃいそうだな」
「危険な動物もいるらしいし、気をつけなきゃダメよ」
「わかってるって。とりあえず薬草が生えてそうな所探すか。岩場には近づくなって言ってたし、岩場までの道の途中にあるんじゃないかな」
辺りを見渡すと真っ直ぐ南の方に小さく岩場らしきものが見えた。
「よし、あっちに向かおう」
ハジメは草原の中にスタスタと入って行く。草は踝程の高さが殆どなので、歩く事に支障はなかった。
「ちょ、ちょっと! 街道通りなさいよ!」
「え、遠回りになるし、真っ直ぐ行った方が近いだろ?」
故郷の村周辺には街道がなく、普段からこのような場所を歩いていたハジメはそう言って進んで行く。クーネは少し呆れながら後に続いて行った。
「そうだ、クーネってどんな事できる?」
「え?」
歩いている途中、ハジメは急にそんな事を聞いてきた。
「これから一緒に旅するんだからさ、お互い何ができるか把握してた方がいいだろ?」
「ああ、そう言う事ね。私は・・・光魔法が使えるわ」
「へぇ! 光魔法って見た事ないな」
「あら、そうなの? 得意なのは主に治癒や防御の魔法よ。あと水属性の魔法が使えるわね」
「2属性かぁ。クーネって凄いんだな」
「そ、それほどでもないわよ。あと杖術もできるわよ!」
褒められて気を良くしたのか、持っていた杖をクルクルと回す。真っ直ぐに伸びた金色の杖は日の光に当たりキラキラと輝いていた。
「頼もしい限りだな」
「ハジメは何ができるの?」
「オレは・・・精霊魔法は火と風だな。あと魔人魔法で色々と」
「魔人魔法?」
「魔力を操作して色々できるんだよ。こんな感じ」
ハジメは手を出すと掌に火の玉を出す。火の玉は次第に電気に、そして紫色の水になり、紫色の立方体に変わった。それを見たクーネは目を見開く。
「何これ・・・」
「あと風もあるけど、風は見えないからなぁ」
そう言うと紫色の立方体が掌から消えた。そしてその手を誰もいない方向へ振りかざすと、振りかざした先に突風が吹いた。
「・・・魔人族って皆こんな事できるの?」
「両親以外の魔人族を知らないから何とも言えないけど、5属性への変換は初歩って言ってたな。あとは独自の魔法があるよ。その辺は追々説明するさ。あと出来る事は、体術と剣はそれなりってとこかな」
「ハジメの方がすごいと思うわ・・・」
「そうか? そうだ! パルの事があったな。パルの能力は巨大化、あと火が吐ける、そしてかわいい」
「キュィイ!」
パルはクーネに向かって「ドヤ!」という顔をする。クーネはニコっと笑うとパルの頭を撫でた。
「フフ、親馬鹿なのはわかったわ」
「親馬鹿じゃない、事実を・・・ん? あの辺じゃないか?」
ハジメは目の前にある草むらを指差す。目指している岩場の手前、西側に背の高い草や小さな木が生い茂っている所があった。高さ10m程の1本の木を中心にテニスコート程の広さだった。
「うへぇ、こんなところから薬草探すのか」
ハジメはゲンナリとした顔をする。薬草は背が低く、つくしくらいの大きさで、腰の高さの雑草が生える所で探すのは骨の折れる仕事だった。
「だからこそ冒険者に頼むんじゃない?」
「たしかにな。それじゃ探しますか。・・・ん?」
ハジメは何かに気付き、中央の木に近づく。クーネも後をついて行き、それを見つける。
「な、何よこれ・・・」
クーネは眉間にしわを寄せて見つめる。視線の先にあったのは枝に吊るされた3羽の兎だった。嫌悪感を露わにするクーネとは違い、ハジメは「あ~」と何か納得した様子だった。
「これきっと血抜きだよ」
「血抜き?」
ハジメは吊るされた兎の下を指差す。地面には兎の血が染みていた。
「たぶんこの辺で狩りしてる人がいるんだな。それで狩った兎の血抜きをしてるんだよ」
「その狩人さんはどこに行ったのかしら?」
「ん~、血抜きが終わるまで他の狩場に行ってるんじゃないか? まぁ、気にせずオレ達は薬草探そう」
「・・・ねぇ、血の匂いに誘われて動物が来たりしないかしら?」
「あぁ、それはあるな。・・・それじゃパル、木の上に行って何か来たら教えてくれ」
「キュィイイ!」
パルは木の枝に飛び乗り周りをキョロキョロ見渡す。それを確認して「ヨシ」と頷くと、ハジメは薬草探しを始める。クーネも不安は残るものの薬草を探し始めた。
その様子を更に岩場に近い小さな茂みの影から伺っている男達が居た。ハーン達3人組だった。
「アイツ等ビビッて逃げなかったな。普通に薬草探してやがる」
つまらなそうに言うハーン。それに呆れた様子でチュカが答える。
「こんな事の為に、わざわざ兎用意してここまで来たのか。っていうか、いつまでこんなとこで隠れてんだ? やる事やったしさっさと帰ろうぜ」
「バカだな。アイツ等が襲われて初めて達成だろ。そろそろ何か来ると思うんだがなぁ」
「バカはお前だろ。そんな事して何になんだよ」
「襲われてる所をオレ達が助けに入って調子に乗ってるガキ共に一言言ってやるんだよ」
「オレ達の手に負えないかもしれねぇだろ」
「この辺で出るのなんて"草色狼"くらいだろ。あれなら余裕だ」
「そんな都合よく行くかよ」
「あ、あのさ・・・」
ハーンとチュカの会話を後ろで聞いていたテシンが、2人に声を掛ける。テシンはキョロキョロ周りを見ている。
「い、岩場近いし、岩熊が出るんじゃねぇかな?」
「あ? 岩熊はまだ巣穴に籠ってる時期だろ。見かけたって話もまだ気かねぇしな」
岩熊は1年の5分の1の間、岩場にある巣穴に籠る習性があった。毎年同じ周期なので地元の人間は大体把握している。
「でも・・・」
「お前はビビり過ぎなんだよ。そんなに怖いならお前は後ろずっと見張ってろ」
ハーンは後ろに広がる岩場を指差す。テシンはオドオドしながら後ろを向いた。
「まったく・・・。お! 来やがった」
ハーンが前を向きなおすと、東の方から数匹の動物がハジメ達のいる草むらに向かっているのが見えた。ハーン達はいつでも駆け出せる様に身構える。
「キュィイイイイ!!」
こちらに走ってくる何かに気付き、大きく鳴くパル。それを聞き、素早く立ち上がったハジメはすぐにパルに指示を出す。
「パル、クーネを連れて上に飛んでてくれ」
「キュィイ!」
パルはクーネに向かって飛び立ちながら体を巨大化させる。
「え? な、なに? きゃあ!」
しゃがみこんでいたクーネは立ち上がり様、パルに抱えられて上空へ飛んで行った。数m上空で留まっているパルと何か文句を言っているクーネを確認しつつ、草の茂っていない木の下にやって来た。
「さーて、何が出てくるかなぁ」
全身の<魔力塗装>の強度を数段上げて身構える。待っていると、草むらの中からガサガサと言う音と唸り声がこちらに近づいてきた。そして草の中からギラリと光る目見える。体は草と同じような緑の毛に覆われた狼だった。
「緑色の狼なんて初めて見たな」
初めて見る色の狼をマジマジと見ていると、その周りから他の狼も顔を出す。
「まぁ、1匹なわけ無いか。ひどい目に遭いたくなかったら逃げる事を勧めるけど?」
「グァルルル・・・・」
「うん、分かるわけ無いよな。一応念の為だから」
故郷の灰猿の件もあり、相手が言葉の分かる場合がある為、話し掛けてみたハジメ。動物に話しかける自分の行為に少し苦笑する。そしてハジメは両手に火の玉を用意する。
「周りの草も青々としてるし、燃え移ることは無いだろ」
そしてハジメと目が合っていた1匹が、ハジメ目掛けて飛び出してきた。それに合わせて他の狼も飛び出してくる。ハジメは最初に飛び出してきた1匹と、横に居たもう1匹に火の玉を投げつける。火の玉は着弾と共に爆発し、狼は出鼻をくじかれるように後ろに吹っ飛ぶ。
「ギャイン!」
悲鳴を上げ草むらに飛んでいくが、他の狼が構わず飛び掛かって来る。ハジメは再び両手に火の玉を瞬時に作りだし、飛び掛かる狼の顔に直接叩きつける。爆発が起きて狼は明後日の方向へ飛んで行った。それを見たもう1匹は飛び掛かるタイミングを逃し、こちらに向かって唸っている。ハジメはもう1つの火の玉をその狼の手前に投げつけ爆発させる。
「キャウン! キャウン!」
狼は弱弱しい声を上げて逃げて行った。他の狼も同じように退散したようだった。狼達が逃げていく様を上から見ていたクーネは感嘆の声を漏らす。
「一人で簡単に追っ払うなんて・・・。アナタのご主人様って凄いわね」
抱えているパルに話しかけると「グァ!」と嬉しそうに返事をした。
同じく離れた場所から様子を伺っていたハーン達は、何が起きたのか分からない状態だった。草色狼が草むらに入って行ったと思ったら、今まで居なかった白い化け物が女を抱えて飛び立ち、木の所でいくつか爆発がしたと思ったら、草色狼が逃げて行った。それくらいしか分からなかった。
「くそっ! 何がどうなってやがる!」
「なぁ、アイツ等にちょっかい出すのやめた方ががよくねぇか? あんな化け物見た事ねぇしよ」
「ま、街に帰った方が・・・」
チュカとテシンは冷や汗を垂らしながら言う。
「あ、あんなの大した事ねぇ! こうなったら直接痛めつけ―――」
後ろを向いたハーンが固まる。その様子を見たチュカとテシンは、ハーンの視線の先を見た。そこには全長3m程の灰色の熊が居た。
「い、い、い、岩熊だぁぁぁ!!」
「グォオオオ!!」
テシンは大声上げ、這って逃げ出す。テシンの大声で岩熊も立ち上がり威嚇する。
「ま、マズイ! 逃げろ!!」
ハーンとチュカは立ち上がり逃げ出すが、テシンが立ち上がれずにいた。
「ま、待ってくれぇ!」
「バ、バカ! テシン早く立て!」
気が動転してるのか、未だに這って逃げようとするテシンに岩熊は近付いてくる。
「クソッ! チュカ! オレが気を引くからテシンを立たせて離れろ!!」
「お、おい!」
ハーンは岩熊の横に回り込み、石を拾って岩熊に投げつけ剣を構える。その間にチュカはテシンを立たせ、その場を離れる。
「よし、オレも逃げ―――」
「グォオオオオオ!!!」
大きな咆哮を上げると、岩熊の手に辺りの石が集まって行く。その咆哮とその光景に気を取られ、思考が止まってしまうハーン。石を集めながら突進してくる岩熊に反応が遅れてしまった。
「しまっ―――」
岩熊は石で固められた右手を勢いよく振り払う。咄嗟に剣で防御しようとするが、剣を叩き折られ吹き飛ぶ。地面を何回転かし、ようやく止まるも立ち上がるのもままならない状態だった。
「ぐあああ・・・・・・。う、腕が・・・」
剣諸共攻撃を受けた左腕は骨が折れてしまっており、爪に引っかかれ血だらけになっていた。朦朧とする意識で手元に落ちている折れた剣を拾い上げ立膝のまま構える。岩熊は止めを刺す為に近づいて来る。
「ハーン! 逃げろ!!」
「ハーーーン!」
(バカが・・・早く逃げろってんだ・・・)
遠くから聞こえるチュカとテシンの叫ぶ声を、ぼんやりとした頭で聞きながら剣を構えてジッと岩熊を睨む。
「クソ・・・ついてねぇ・・・。こんなとこ来なきゃよか・・たぜ」
自分の運の無さを後悔した時、自分の目の前に何かが降ってきた。先程の咆哮でこちらに気が付いたクーネとパルだった。
「パル! 近づけさせないで!」
「グァアアア!!!」
クーネが自分の後ろに周った事を確認すると、岩熊に向かって炎を吐いた。炎を吐かれた岩熊は慌てて後退する。
「大丈夫ですか?」
「すまねぇ・・・うぐっ!」
「ジッとしてて!」
クーネは杖の頭部を傷口に近付ける。そして短い詠唱をすると体が白く輝き、その光が杖を伝わり頭部へと集まって行く。傷口が集まった光に包まれると、見る見るうちに治って行った。折れた腕もじわじわと元に戻って行く。
「こ、これは・・・」
痛みがだいぶ和らいだハーンは傷口をマジマジと見つめる。
「治癒魔法である程度は直しました。もう立てると思います。さぁ! 急いで離れて!!」
「あ、ああ。すまねぇ」
ハーンは急いで立ち上がり、チュカとテシンの元へ行った。
「ハーン! 大丈夫か?」
「あ、ああ・・・」
「よ、よかったよ・・・ごめんよ・・・オイラせいで・・・」
「気にすんな。それより・・・。おーーーい! オレ達は大丈夫だ! アンタも早く逃げろー!」
チュカ達と合流したハーンは、クーネに自分が避難できた事を叫ぶ。それを確認したクーネはパルを呼ぶ。
「パル! 私達も逃げましょう! ・・・パル?」
先程まで岩熊に翼を広げ威嚇していたパルは、普段の表情に戻っていた。その様子に疑問を感じたクーネは、パルが見ている方向が岩熊じゃない事に気付く。パルの視線の先を見ると、こちらに近づいて来ていたハジメが、火の玉を投げるモーションを取っていた。
「ハジメ?」
「・・・おりゃ!」
火の玉は真っ直ぐ岩熊の顔へ飛んでいき、着弾と共に爆発する。突然の攻撃に驚く岩熊。攻撃の主を見つけると、そちらを向き威嚇をする。ハジメは動じる事無く、スタスタと近づいて行く。
「ハジメ! 何やってるの!?」
「ああ、パルの巨大化って魔力の都合上時間制限あるんだ。こっちに惹きつけないとさ。パル、もう戻っていいぞ。クーネはパルと一緒にアイツ等の所まで行ってるといいよ」
「ハジメはどうするの!?」
「ああ、オレはコイツをやっつけるかな」
そう言うと、ハジメは腕をグルリと回す。
「何言ってるの!? 殺されるわよ!」
「いや、コイツ見た感じ灰猿爺さんより全然弱そうだし」
「?」
故郷の森のヌシこと、灰猿を知るわけもないクーネは訳が分からないといった顔をする。そんな事を言っている間に岩熊がハジメ目掛けて突進してきた。そして先程と同様に石を纏った右手を振り払う。腰を落とし構えるハジメはその右手に向かって突きを打ち込む。
「ハジメ!!」
バガァン!!
石の砕ける音と共に右手を弾き返される岩熊。岩熊も周りで見ていた人達も、何が起きたか分からなかった。そんな周りの反応を余所に、ハジメは再び構える。
「悪いな岩熊。お前の大きさの岩なら叩き割れるんだ」
そう言うとハジメは岩熊の鳩尾あたりに正拳突きを打ち込む。<魔力塗装>で鉄よりも硬い強度にされた右腕は岩熊の体に簡単に突き刺さった。
「グォ・・オオオ・・・」
腕を引き抜かれた岩熊は、そのままドスンと音を立てて倒れた。辺りに静寂が広がる。ハジメは血まみれの腕を振って血を落とす。<魔力塗装>を解くと手袋も服もまったく汚れていなかった。そしてハジメはクーネ達の方へ手を振る。
「おーい、終わったぞ~」
茫然としながら近づいて行くクーネ達。パルはパタパタとハジメの肩に移って行った。
「し、死んでるの?」
倒れている岩熊を見つめながらクーネが尋ねる。
「ああ、本当は縄張りに近づいた方が悪いんだから、追っ払うだけでも良かったんだけど。魔獣がどれくらいか興味あったし、あと、期待してくれてるハクマーさん達へのお土産ってのもあるかな。狩ったからには有効に使わないとな」
「なぁ、アンタ・・・」
ハーンがハジメに話し掛けてくる。ハジメはハーンの顔をしばらくジッと見て何か思い出す。
「・・・あ! 昨日港で絡んできたオッサンか!」
「え? あ、ホントだ!」
「今気づいたのかよっ! ・・・まぁいい、さっきは助かった。ありがとな」
「え? ああ、別にいいですよ。でもこんなとこで何してたんですか? 薬草取り?」
「あ、ああ・・・」
口籠るハーンに首を傾げるクーネ。ハジメは気にせずパルに指示を出す。
「それじゃパル、岩熊運ぶからよろしく」
「キュィイ!」
再び大きくなったパルに乗り、クーネに手を差し出す。
「さ、クーネ乗って」
「う、うん」
クーネを自分の後ろに乗せると、今度はハーンに声を掛ける。
「アンタ達も乗って行く? もう少しでかくできるけど」
「い、いや、オレ達は歩いて帰る」
「そっか、それじゃ気を付けて」
そう言うとハジメはパルに合図を送った。パルは手足で岩熊を掴むと、マシュメに向かって飛んで行った。
「なぁ」
後ろからチュカが声を掛けるが、ハーンは振り返らずにじっとハジメ達を見ている。
「これで懲りたろ?」
「・・・・・・ああ」
「こんな事やってないで、オレ達も真面目に仕事しようぜ」
「オ、オイラもがんばるよ」
ハーンは黙ったままマシュメ向かって歩き出す。チュカとテシンは顔を見合わせ、ハーンの後を付いて行った。
説明ばかりでしたが、やっとアクションシーンを入れられました。
次は初仕事の後日談的な話がメインになると思います。
次回もよろしくお願いします。