第27話 結婚の宴と学園卒業
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2014/1/24 指摘のあった脱字を修正しました。
「さぁ皆さん、間もなく到着しますよ」
御者台に座るラウが馬車内に声を掛ける。すると中からドタドタと御者台へ近づく足音が聞こえる。
「わっ! おっきい街! お母さん! すごいよ!」
ヒルダは前方に見える王都の大きさに驚き、馬車の中で座っているモルヒラに伝える。
「そんなにはしゃぐんじゃないよ、田舎者丸出しじゃないかい」
「だって田舎者だもん!」
プクっと頬を膨らませるヒルダにやれやれと頭を抱えるモルヒラ。そして横で笑っているハジメに話し掛ける。
「それにしても坊ちゃん、いいんですかね? アタシらみたいなのが来ちゃって」
「もちろんです。ヒルエさんも結婚の祝いにモルヒラさん達が来てくれたら喜びますよ」
5年生になり、相変わらず学園での勉強と村での特訓の日々に明け暮れていたある日、ヨークソンとヒルエから結婚をするという報告を受ける。グァロキフス王国では結婚式をやる習慣はなく、その代りに夫婦がこれから住む町や村で宴を開き住民達が夫婦を歓迎するというのが一般的だった。ヒルエが結婚するという事で村からもお祝いに行く事になったが、オルタスの計らいで村の代表としてモルヒラとヒルダが王都に行く事になった。
王都に入り、〔黄天亭〕へ向かう一行。〔黄天亭〕へ近づくと普段の賑わいとは違うバタバタした雰囲気に包まれていた。王都に入ってからずっとキョロキョロしていたヒルダだったが、荷物を持った人たちが右往左往している姿を見てハジメに聞く。
「ねぇねぇ、アレは何してるの? お祭りか何かあるの?」
「あれは今夜の宴の準備だよ。集まる人数が人数だし、〔黄天亭〕の外にも席を作るんだ」
「へぇ、スゴい事になってるのね!」
結婚をするのが街で人気の騎士と〔黄天亭〕の看板娘という事もあり、集まる人数はかなりの数だった。〔黄天亭〕の周りの店も協力して辺り一帯が会場となっている。〔黄天亭〕へ入ると中にはヒルナン達が準備の手伝いをしていた。
「あっ! 母ちゃんにヒルダにラウさん! もう着いたのか!」
ヒルナンは大声でそう言うとハジメ達に駆け寄ってきた。周りに居たエルレア、ラニアン、リニス、ラミィが後に続きやって来る。
「こんにちわ、モルヒラさん、ヒルダ、ラウさん」
「ヒルナンにエルレアちゃん、元気そうだね。それにその子達はお友達かい?」
「おう! 皆今日の宴の手伝いしてくれてんだ」
「あ、僕はラニアンと言います」
「はじめまして、リニスです」
「ラミィです。はじめまして!」
「はじめましてヒルダです! いつも兄がお世話になってます」
ヒルダの丁寧な挨拶に皆が「おお」と感心する。
「さすがヒルエさんの妹だね」
「うん、姉妹揃ってしっかりしてそう」
「それにかわいいよね!」
ラニアン達に褒められて照れるヒルダ。だがヒルナンは何か納得してない顔をしていた。
「・・・オレの妹でもあるんだけどな」
「ヒルエさんに似てよかったな。お兄ちゃん」
「うるせぃ!」
「まぁ、そんなことより」
「そんな事ってなんだ!」
ヒルナンをスルーしてハジメは話を続ける。
「ヒルエさんは?」
「あ、それなら・・・」
ラミィが外を指差して応える。
「ヒルエさんはバトマス家の方で衣装合わせしてるよ。こっちに来るのは宴の始まる前じゃないかな」
「そっか。それじゃ、バトマス家の方へ行きます? モルヒラさん」
「いえいえ、アタシらはここでいいですよ。ヒルエも色々準備で忙しそうだしねぇ。どうせなら宴が始まった時にヒルエを驚かせてやろうかね! ・・・そうと決まったら私はここの女将さんに挨拶してくるとするかね」
「あ、じゃあオレが案内するぜ!」
ヒルナンが案内役を買って出た。ヒルダはどうしようかキョロキョロしていたが、エルレア達が声を掛ける。
「じゃあ、ヒルダは私達と向こうで準備をしましょ」
「あ、うん!」
女子達は先程準備をしていたところへ戻って行った。残ったのはハジメとラニアンとラウだった。
「僕たちは何しようか」
「うーん、外の力仕事を手伝うかな」
「うん、そうだね」
「畏まりました」
こうしてそれぞれが宴の準備は着々と進んでいった。
日が暮れ始め〔黄天亭〕の周辺には人々が集まり始めてきた。店内はヨークソンとヒルエの関係者達が席に着き、2人の登場を待っている。ハジメも友人達と集まって雑談をして待っていた。すると、外の方から歓声が聞こえてくるのに気付き店内の人全員が入口に注目する。そしてヨークソンとヒルエが店内に入ってきた。ヨークソンは白を基調とした騎士団の礼服、ヒルエは純白の白いドレスを着ている。シンプルな造りだが裾には細かな刺繍が入っており上品な仕上がりになっている。
「わぁ!」
「おお、すげぇな!」
「きれ~い」
「ヨッ! 待ってました!」
「きれいだぞ~! ヒルエちゃ~~ん!」
会場中から聞こえる歓声と拍手で場内は一気に盛り上がる。そしてヒルエは席に着き、ヨークソンが喋ろうとするのを見て歓声も収まってくる。周りが落ち着いたのを見てヨークソンが一礼して挨拶を始めた。
「今日は私達の為にこれほどの人々が集まっていただき誠に感謝いたします。今日は時間を忘れて楽しんでいただきたい。私達夫婦とここに集まってくれた皆様、そしてグァロキフス王国の安寧と繁栄を願い、乾杯!!」
「「「「乾杯!!」」」」
乾杯を合図に宴は始まった。一気に騒がしくなる中、ハジメ達はヨークソン達の元へ行く。
「結婚おめでとうヨークソンさん、ヒルエさん」
「おめでとう!」
「おめでとうございます」
「おお、皆ありがとう」
「ありがとう」
ハジメ達に声を掛けられ2人ともニッコリと微笑む。
「お姉ちゃん!」
「ヒルダ? それにお母さんも!」
ヒルダとモルヒラの姿を見て驚くヒルエ。ヨークソンは立ち上がり一礼をする。
「父上の計らいで、村の代表として2人に来てもらったんですよ」
「まさか義母上殿がいらっしゃるとは。気付かず申し訳ない・・・」
「あら、いいんですよ。ヒルエを驚かそうと思って黙ってたアタシ達も悪いんだ」
そう言って「アッハッハ」と笑うモルヒラ。ヒルエが涙目になっているのに気付いて笑い飛ばす。
「あら、ヒルエ、泣いちゃったらせっかくの美人が台無しになっちまうじゃないか。アンタは笑顔が一番なんだから」
「うう・・・お母さん・・・」
そう言いながらヒルエはモルヒラに抱きつく。モルヒラもニッコリと微笑みながらヒルエの頭を撫でる。周りで見ていたハジメ達も笑顔で2人を見つめていた。
挨拶を済ませた後、モルヒラ達家族を残しハジメ達は席に戻る。そこにシヤン達も合流してきた。
「ボス!」
「お、シヤン達今来たとこか?」
「そうなんスよ。仕事の後片付けがあったんで遅くなっちゃいました」
「おつかれさん」
「おつかれさま」
「どもども。あ、料理旨そうッスね! っと、その前にヒルエさん達に挨拶してきます」
「ああ」
シヤン達はヨークソン達へ挨拶を済ませて再びハジメ達の元へ戻ってきた。
「いやぁ、美人ッスね」
「だろ? 化粧すると一段と違うよなぁ」
「あの横に居るのは妹さんスか?」
「ああ、ヒルダって言うよ」
「へぇ、姉さんに似て美人になりそうスね」
「あ、ダメよシヤン。ヒルダちゃんには将来を約束した彼がいるんだから」
ラミィがニヤリと笑って言うと、慌ててシヤンが否定をする。
「え? あ、いや狙ってねぇよ! っていうか、もうそんな相手がいるのかよ」
「小さい頃から一途に思ってる相手がいるのよ。ヒルエさんが結婚したから次はヒルダちゃんね!」
「まぁそうなるだろうな。っていうかラミィ達は準備の時に聞いたのか?」
ハジメが聞くとラミィは「当然」という顔をして頷いた。
「女の子が集まったら恋の話になるのは当然よ!」
自信満々に答えるラミィの横でエルレアが首を傾げていたがハジメは見なかった事にした。
「そう言えばシヤン達は仕事順調なのか?」
ハジメは話を変えてシヤン達の話をする事にした。
「順調ッスね! 最近は各々得意な分野が分かってきて、それ中心に腕磨いてるとこッス」
「へぇ、得意な分野かぁ」
「例えばオレは金属を加工したり鍛えたりするのが得意で、ソプは革細工がウマいッスね。で、セッケは装飾や細工が得意ッス」
シヤンは両隣にいるソプとセッケを指差して説明する。
(ソプとセッケ・・・相変わらず影が薄いというか、シヤンと1セットで見てしまうな)
ハジメがそんな失礼な事を考えていると、シヤンが何か思いついたように目を輝かせる。
「そうだボス! ボスは冒険者になるんスよね。オレ達で何か作りますよ!」
「え?」
「まぁ、オレ達の腕じゃ大したものはできないんで期待はしないでほしいんスけど」
「いやいや、楽しみにしておくよ」
皆でどんな装備がいいか話をしていると、ヒルナンがやってきた。
「皆で何話してんだ?」
「シヤン達が冒険者になる記念に装備品を作ってくれるってさ」
「あ! いいな! オレにも作ってくれよ」
「でも、騎士団の装備の方が全然いいものだけど」
「あ、ヒルナン君はもう騎士団入団決まったの?」
「おう! 内定は決まったな」
「そうなんだ、おめでとう!」
「おめでとうヒルナン君」
手を上げて「どうもどうも」と答えるヒルナン。するとシヤンが勢いよく立ち上がった。
「今は全然敵わないけど、いずれは王国一の鍛冶屋になってみせるぜ! 騎士団にも採用されるような!」
シヤンの決意発表に周りのみんなから「おおぉ」と感心する声があがった。
「エルレアとラミィは卒業したらどうするんだ?」
「私は学者になりたいからこのままレーネット先生の助手をしていくわ。いずれは自分の研究したい事を見つけて行きたいけど」
「私は・・・」
ラミィは少し緊張した面持ちで一呼吸して続きを話す。
「先生になろうと思ってるの」
「学園の?」
「うん、レーネット先生に相談したら研修生として経験積んで試験に合格すればなれるみたいなんだ」
「へぇ、先生なんてすごいな!」
「がんばってねラミィ」
「ラミィならいい先生になれそうだな」
「ありがとう、皆!」
皆の声援にラミィは嬉しそうにしていた。
「ラニアンは村に戻るのか?」
「そうだね。一旦村に戻って祖父の知り合いの店で修業をするって事になりそうだね」
「これからは商人の勉強かぁ。大変だな」
「うん、でも自分の店を持つのが夢だから頑張るよ」
「独立したらリニスちゃんを迎えに行くのね!」
「ちょ、ちょっとラミィちゃん!」
ラミィの突然の発言に取り乱すリニス。だがラニアンは顔を真っ赤にしながら真面目な顔で口を開く。
「い、いずれはそうしたいと思っては・・・いる、よ」
「「「おおおおおおお!」」」
ラニアンの決心にまたもや声が上がる。リニスは少し涙目になってラニアンを見つめていた。
「皆幸せそうで何よりだな!」
「いや、お前も頑張れよヒルナン」
「人の事言えるか! お前の方がそういうの鈍いだろ!」
「2人とも似たり寄ったりよ」
「「・・・・・・」」
言い合う2人を一刀両断するエルレア。ラミィとリニスは「エルレアちゃんが一番鈍感だけどね」と言いかけたが黙っておく事にした。
その後ヒルナン達がそれぞれの知り合いの元へ行ったので、ハジメはどうしようかなと考えているとシヨナが声を掛けてきた。
「こんばんわハジメ君」
「あ、こんばんわシヨナ様」
「今いいかしら?」
「ええ、大丈夫ですよ」
シヨナに促され近くの席に着く。スカリーが持ってきた飲み物を受け取るとシヨナが話を始める。
「ハジメ君は卒業後に冒険者になるのよね?」
「はい、卒業したら旅立とうと思ってます」
「ナディーユから船に乗る予定?」
「そうですね。パルに乗ってもいいんですが船にも乗ってみたいんで」
「そう、それならよかった」
「?」
シヨナがホッと安心する様子だったので不思議に思うハジメ。
「ナディーユと隣国の港町を行き来する船は今不定期なのよ」
「あ、そうなんですか。じゃあナディーユに行っても運が悪いと足止めを食らうかもしれないですね」
「そうね。でも不定期なのは国の運営する客船。ハジメ君にはバトマス家の商船に乗る事を勧めようと思って」
「え? いいんですか?」
「もちろんよ。あなたには色々お世話になったし、卒業お祝いも兼ねてね」
「ありがとうございます!」
ハジメが立ち上がってお辞儀をするとニッコリ微笑んで座るように促す。
「商船は天候以外で休航になる事はまず無いだろうから、予定が決まり次第またお知らせするわね」
「はい、わかりました」
その後しばらく雑談をしてシヨナ達とは別れた。
時間はすっかり深夜になり、はしゃぎ疲れた者、酔っ払った者が次々家に帰って行った。ハジメ達も子供という事で帰るように言われ、ふて腐れながらも楽しい時間を過ごせて満足して帰って行った。
ヨークソンとヒルエの結婚から数か月が経ち、ハジメ達の卒業式の日がやって来た。だが5年生になった時点で、殆どの生徒が既に新しい生活を始めている。学園で同級生と会うのは久しぶりという生徒も少なくはなかった。ハジメもずっと村での特訓に明け暮れていたので、村出身のヒルナンとエルレア以外の友人達と会うのは結婚の宴振りになる。
「皆久しぶりだな」
「元気で何よりだね」
「おひさしぶりー!」
皆がそれぞれ挨拶を交わし、講堂へ入って行く。他の生徒達もそれぞれの仲間との久しぶりの再会で講堂内は賑わっていた。しばらくすると講堂内にアナウンスが響き渡る。
『まもなく卒業式が始まります。皆様着席してお待ちください』
参加者が席に着き、静かになると卒業式が始まる。学園長の挨拶から始まり、来賓の挨拶、卒業生代表からの答辞など内容は日本の卒業式と同じようなものだった。終わりが近付くにつれていたるところで泣いている生徒も出てくる。そして卒業生退場。来客席からの拍手に包まれる卒業生が順次講堂を出ていく。講堂を出て広場まで行ったところで解散するという段取りになっていた。
「く~~~、終わったなぁ」
ヒルナンが大きく伸びをして呟く。
「ああ、これでオレ達は卒業だ」
「なんか学園生活、あっという間だったね」
「ボーーーーーーース!」
大声でハジメを呼ぶ声がしたのでそちらを見ると、シヤン、リニス、ソプ、セッケがこちらに向かって走ってきていた。
「あれ? お前達来てたのか?」
「ボス達の卒業ッスからね、見てましたよ!」
「卒業おめでとう」
「「おめでとうございます」」
「皆ありがとう」
「あとボスに会う機会が今日しかないッスからね」
「ああ、そうだな」
シヨナが言っていたバトマス家の商船の出航日が卒業式の翌日という事で、ハジメは卒業式が終わったらすぐに村に帰る事になっていた。
「もうちょっとのんびりしてもいいだろうにな」
「まぁ、しかたないさ。次の出航は20日くらい先になるって言うし。それじゃパルも部屋で待ってるし、ちょっと部屋行って来る」
そう言うとハジメは自分の部屋に戻って行った。部屋の荷物はラウが来た時にほとんど持って行ってもらっていたので、鞄一つだけ置いてある。
「パル、お待たせ」
「キュィィイ!」
パルを肩に乗せ、鞄を持って部屋を出る。そしてヒルナン達が待っている場所に戻ってきた。すると、ヒルナン達の他にシャワル、ヨークソン、ヒルエも居た。
「あれ? シャワルにヨークソンさん、それにヒルエさんも」
「やぁ、卒業おめでとう」
「王子がどうしてもというのでな。公務の合間を縫って来たのだ」
「私は弟の卒業式だし、坊ちゃんも今日旅立つというので」
そして皆でゾロゾロと王都の正門まで歩いて行く。正門まで着くとハジメは数歩前に出て振り返る。
「皆、見送りありがとう」
「おう、また一緒に稽古しようぜ。その時は騎士ヒルナン様の実力を見せてやるよ」
「ハハハ、返り討ちにしてやるがな」
「絶っ対に負けねぇからな!」
そう言いながらも笑顔のヒルナンと握手を交わすハジメ。
「がんばってね、ハジメ」
「ああ、エルレアも立派な学者になれよ」
「うん」
「また会おうねハジメ君」
「オレの耳にも届く有名な商人になってくれよな。そしたらすぐ行くからさ」
「うん! 頑張るよ!」
「リニス、ラニアンをしっかり捕まえておけよ。いずれ大商人になる男だからな」
「ハ、ハジメ君! ・・・うん、わかった。ハジメ君もがんばってね!」
「ラミィ・・・って、泣いてるのか?」
「だ、だって・・・もう皆とお別れかと思ったら・・・」
「別にもう会えない訳じゃないんだから。また皆で集まろう、な?」
「・・・うん」
皆に挨拶をする中、シヤンが長細い包みを渡してきた。
「ボス! これ、宴の時に話してたやつです!」
「ん?」
ハジメが包みを開けると15cm程の小型のナイフが入っていた。シンプルな両刃のナイフだが、握りには丁寧に革が巻かれていて、鍔の部分には模様が掘り込まれている。柄頭には<ハジメ団>と刻まれていた。
「ハジメ団って・・・これ、シヤン達が作ったのか?」
「出来はまだまだなんスけどね」
「いやいや、凄いよ。ありがとう! 大事に使うからな」
シヤンが嬉しそうに後ろに下がると、今度はシャワルが来る。
「ハジメ、君には色々と助けてもらった。本当にありがとう」
「そんな大げさなもんじゃないさ。友達なら当然の事しただけだしな。だよな? ヒルナン」
シャワルの後ろのヒルナンに振ると「おうよ!」と返ってきてシャワルとハジメは笑顔になる。
「また戻ってきた時には城に会いに来てほしい。いつでも歓迎するよ」
「ああ、必ず行くよ」
そう言ってハジメとシャワルは握手を交わす。
「ヨークソンさん、ヒルエさん。末永くお幸せに」
「ふ、君も達者でな。戻ってきた時にはこちらにも顔を見せてくれ」
「はい、2人の子供に会いに行きますよ」
「ぼ、坊ちゃん!? 気が早過ぎですよ!」
ヒルエは真っ赤な顔をして狼狽している。その様子を見てニヤリと笑うハジメ。ヨークソンも「やれやれ」と言った苦笑を浮かべていた。
そしてハジメは皆に向かって最後の挨拶をする。
「それじゃ、皆行ってくるよ」
「おう、世界一の冒険者になって来いよ!」
「がんばってね」
「応援してるよ!」
「「「フレー! フレー! ボーーース!」」」
「また会おうね!」
「またね~!」
パルに乗ると皆に笑顔で手を振りハジメは村に向かい飛んで行った。
「・・・行っちゃったね」
「ああ、そうだなぁ」
「寂しくなるね」
「アイツの事だから世界中に名前が伝わるくらいすごい冒険者になるんじゃないか?」
「アハハ、それは言えてるね」
そんな事を言いながらヒルナン達は飛んで行くハジメをずっと見つめていた。
ヨークソンとヒルエ無事にゴールインしました。本当によかったです。
そしてすごくアッサリですが学園も無事卒業。次回でバスティア学園編も終わりの予定です。次回もよろしくお願いします。