第1話 初の終わり ハジメの始まり
暗闇の中フワフワと浮かんでいる感覚。体は全然動く気配がせず意識もボンヤリした状態。ただ心地の良い温もりに包まれている。
(オレたしか車に轢かれたんだっけ・・・。)
思い出そうとしても頭が働かない。
(轢かれた瞬間意識飛んだからよくわからんが、やっぱり重症なのかな。あーダメだなんか眠い・・。)
しばらくするとまた意識が戻り少しだけ考え事ができる。
(オレどれくらい入院するんだろ・・。1年くらい学校行けなかったりするのかな。そういやサイトーのやつ補習どうなったかな。あー、そんだけ休んだらオレ留年じゃないか?うわ、最悪だ・・。)
そんなことを考えているとまた激しい睡魔に襲われて再び眠る。
それからどれくらい経ったか、急に包んでいた温もりごと激しく体が揺さぶられる感覚に襲われた。どこかから声が聞こえる気がする。それも何人もの声。
(なにか聞こえるけどなにがおきてんだ。ん、なんか押し出される感じが・・・え、ちょっと誰だ引っ張ってるのはっ!?うおっ!!)
「さぁ!奥様!もうひと踏ん張りですよ!頭が見えてきました!!」
「がんばれ!もうひと踏ん張りだ!よし、なにかオレにできることはないかっ!!」
「なにもありません!というかそこ邪魔です!!奥様を励ましてくださいっ!!」
「む!そうだな!そういうことならば全力で励ますことにしよう!!」
「~~~~~~~~~!!」
温もりから引きずり出され急に明るい場所に出された。あまりの眩しさから目がくらんでいたが次第に視界が広がっていく。目の前には40くらいのおばさんがいた。首と腰あたりを支え持ち上げられると同時に歓喜の声を上げる。
「奥様!生まれました!男の子ですよ!!」
ここにきて初めて自分の状況を理解する。ありえないとしか言いようがないが自分が今生まれたばかりの赤ん坊だと気付いた。
(えええええええええええええええええええええっ!)
声に出そうと思っても出てくるのは鳴き声だけだった。赤ちゃん特融のあの泣き声。
「おお!元気な泣き声じゃないか!これは将来が楽しみだな!」
「旦那様は気が早すぎますよっ。さ、奥様お抱きになってください」
赤ちゃんを抱き満面の笑顔を向ける女性。優しさに満ち溢れている母親の顔を見て初はさらに驚愕する。その女性は横断歩道で立っていた金髪の美女だった。
(はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)
もちろんこの声も鳴き声でしかない。周りから見れば元気に泣く生まれたての赤ちゃんだ。
「ふふ、私があなたのお母さんよ。これからよろしくねハジメ。」
そういってハジメの頬を指先でそっと撫でる。だが本人はあまりの驚愕にそれどころではなかった。しばらく泣いていたが、また睡魔に襲われ眠りにつく。それを大人たちは笑顔で見つめていた。
まとめてプロローグにすればよかった気がしないでもない。生まれてくる赤ちゃんがどういう感覚なのかは想像です。