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ジュエル!  作者: asobito
バスティア学園編
26/67

第21話 後日の会話と深まる謎

 次の日、連行した男達を取り調べたが、依頼主はローブを着た男と言うくらいで詳しく知っている者はいなかった。騎士団はシャワルを亡き者にする為にその警護をするヨークソンを狙ったものと考えたが、決定的な証拠がなく推測の域を出ることはなかった。ノマージとウェーナも依頼主に関しては同様だったので半日で帰された。ヨークソンの口添えで罪にはならなかったが、早々に国外へ出るように言い渡された。


「くぁ~、終わった終わった。長かったなぁ」


 城を出てノマージが大きく伸びをしながらぼやいた。


「何言ってるの、本当なら帰れなくなるところだったのよ。ヨークソンさんに感謝しなきゃ」

「そうだな。それじゃ言われた通り早めに出るか。とりあえず明日の朝には出発するか?」

「そうね。街で必要なもの用意しましょう」

「よし、まずは腹ごしらえだな」


 貴族区から広場に出ると2人に近づいてくる人物がいた。


「こんにちは」

「ん? おお、あの時の少年」

「あら、こんにちは。ハジメ君、それにパルだったかしら?」

「はい」

「キュィィ!」

「おお、あの時乗ってたのはコイツかぁ。核人だよな?」

「はい、珍しいですか?」

「核人は何度か見たことあるけど、こんな見たことない姿した奴は初めてだな」


 ノマージが興味ありげにパルを見つめていたが、ハジメは自分の用件を話すことにした。


「あの、実は2人にちょっと聞きたい事があって・・・。今いいですか?」

「ああ、いいけど。あ、そうだ。どこかいい店しらない? 丁度昼時だしそこで聞くよ」

「わかりました。それじゃ案内します」


 ハジメは〔黄天亭〕へ案内することにした。


「あら、坊ちゃんいらっしゃい。あ、貴方達は昨日の・・・」

「お、ヨークソンの彼女。ここで働いてたのかぁ」

「こんにちわ」

「あ、えっと・・・こんにちわ」


 ヒルエはどう対応していいものか困った様子だったのでハジメが席に案内してもらうように頼んだ。


「よっこいしょっと。今坊ちゃんって呼ばれてたけど?」


 案内された席に座りノマージが先程の会話で気になった点を聞いてきた。


「ヒルエさんは同じ村の出身なんですよ。オレの父が村長をしているので」

「ああ、なるほど」

「ハジメ君達はあの後大丈夫だったの? 学園で問題にならなかった?」

「え? まぁ、厳重注意ってところですかね。ハハハ・・・」


 ハジメは苦笑いしながら答える。ヒルエ救出に関わった事は内緒にしておきたかったハジメ達だったが、騎士団に付き添われて学園に戻った為にすべて知られてしまい教師から小一時間説教をされる羽目になったが。ヨークソンからのフォローもあり罰則を課せられる事はなかったのが救いだった。


「お互い何もなくてよかったなぁ。お、来た来た」


 テーブルに運ばれてくる料理を「待ってました」と迎えるノマージ。ハジメとウェーナの分も揃い食事を始める。


「おお! これはうまいな。ここの宿屋にすればよかったか。次来るときはここに泊まろう。な? ウェーナ」

「たしかにおいしいわね。でも当分この国来れないわよ?」

「あ、そうだった」

「当分来ないんですか?」


 2人の会話を聞いてハジメが聞く。


「今回は不問って事になったけど一時的とはいえあいつ等の仲間だったのは事実だったしな。しばらく入国禁止ってところか。明日にはここを出発する予定さ」

「そうなんですか」

「っと、何か聞きたい事があったんだっけ?」

「あ、はい」


 ハジメはノマージの横に立てかけられた武器を見つめる。ヒルエを救出するときにも遠目に見たが改めて見るとやはり前世で見たことある武器だった。


(これって三国志とかで出てきた奴だよな。名前なんて言ったっけ)


「あの、その武器って・・・」

「ん? コイツか?」

「はい、見たことない武器だなと思って」

「ああ、たしかに珍しいみたいだな。いろんな国を回ったけど同じものを見たことはないし」

「それってなんて名前なんですか?」

「これは偃月刀(えんげつとう)って名前だ。確か」


(それだ! ・・・でもそれってどういうことだ? 偶然って事はなさそうだけど)


「あの・・・確かって?」

「ああ、これはオレを育ててくれた爺さんの形見でな。たしか爺さんがそう呼んでたんだ。普段は大刀って言ってたけどな」

「形見ってことは御爺さんは・・・」

「ああ、8年前に死んじまったな。それまで爺さんに散々鍛えられたおかげでこうして冒険者としてやっていけてるってわけだ」

「注意力とかも鍛えられたらよかったのにね」

「うっさいよ」


 満面の笑みで言うウェーナを軽くあしらうノマージ。いつもこんな感じなのだろうなとハジメは2人を見て思った。


「あの、それじゃその服も?」

「これは爺さんの着てた服を真似て作ったやつだな。この刺繍とか仕立て屋で1から説明すんのが大変だったぜ。防具は爺さんのお古だけど」


(やっぱりその御爺さんってあっちの世界の人なのかな。しかも三国志とかそれくらいの時代の人・・・。それが数年前まで生きてたってどういうわけだ?)


「で、聞きたかった事ってそれだけ?」


 考え込むハジメを見つめてノマージが聞く。ハジメは我に返り慌てて次の質問をした。


「オレ学園卒業したら世界を見て回ろうと思ってるんです。それで冒険者の2人に世界の事を色々聞けたらと思って」

「へぇ、という事は冒険者になるつもり?」

「そうですね」

「それって親にも話した?」

「え?」


 思いがけない事を聞かれてハジメは固まってしまった。村にいるときから周りに「世界を見てまわりたい」とは言っていたので両親も理解しているとは思ったが、自分の口からちゃんと言った事がなかった。


「その様子だと言ってないみたいだな。冒険者になろうと思うならまず親に話すべきだな。大概は反対されるだろうけど。冒険者なんて親からしたら心配しかない職業だからな。何も話さず勝手に決めて勝手に家出てって死んじまったら親が可哀そうだろ? ちゃんと相談して自分の意志を伝えなきゃダメだぞ」


 ノマージに言われるまでハジメは気付かなかった。前世では小さい頃から両親がいなくて自分の事は自分で決めてきた。お世話になっている叔父家族に迷惑にならないような選択をできるだけするように。ハジメには自分の将来を両親に相談するという考えがなかった。


「はい、わかりました。まずは両親に話します」

「よし。あと世界の事は自分の眼で見る事を勧めるよ。それでこそ冒険者だからな」


 ノマージはニッコリと笑って見せた。ノマージの話を感心した様子で聞いていたウェーナ。


「ノマージのくせにいい事言うわね」

「くせにってなんだ。オレだってこれくらい事は言えるんだぞ。ま、そういう訳だ。冒険者目指して精進してくれ」

「はい、ありがとうございました」


 食事を済ませ街の広場まで戻ってきたハジメ達。


「それじゃオレ達はこれから買い出しあるから」

「わかりました。色々聞かせてくれてありがとうございました」

「いやいや、冒険者になったらどこかで会えるかもしれないし、その時はよろしく」

「がんばってねハジメ君」

「はい! ノマージさんとウェーナさんもお元気で」


 商業区へ歩いて行く2人を見送りハジメは広場のベンチに腰を下ろし一息つく。


「・・・なんか堪える事言われちゃったなぁ」

「キュイイイ?」


 心配そうに顔を覗き込むパルをハジメは笑顔で応え頭を撫でる。


「大丈夫、別に落ち込んではいないさ。ノマージさんが言った事は正しいしな。父上と母上にちゃんと話さないと。まずはそこからだ」


 心の中で気合いを入れ直し学園へ向かい力強く歩き出すハジメだった。





[ルビカスの屋敷]




「くそっ!!」


 ルビカスは手にしていたグラスを床に叩きつけた。


「シーケックはどこへ行ったのだ!? 姿をくらましおって!!」


 ドカッとイスに座り頭を抱える。城内で今回のヨークソン襲撃が未遂に終わった事を知り、すべてを任せていたシーケックは姿を見せなくなった。ルビカスの表情は焦りに満ちていた。


「騎士団は間違いなく私を疑っているだろう。屋敷に乗り込んでこない所を見ると証拠があるわけではない・・・。しかし、早急にどうにかしないと。シーケックが使えない以上私自らシャワルを始末するしか・・・」


 ルビカスの思考が焦りと殺意に満ちて行った。

ノマージを育てたお爺さんは何者なのか。シーケックはどこへ行ったのか。気になるところですね。そうでもなかったらごめんなさい。

それでは次回もよろしくお願いします。

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